第69話 課題
翌日の朝、俺達黒の騎士団は講堂に集められた。リアムとシャーランもいる。集めたのはカレン先生だ。
「皆、いるかしら?」
「はい。大丈夫です」
この時間帯に呼び出されるのだからただ事ではないな。
朝一番の講堂は静かだった。空気をひんやりとしていて独特な匂いが漂っている。趣きがあるのは確かだった。
「それじゃあ聞いて。今からあなた達に課題を出します」
「課題?」
「そう。これは学園長直々の任務を兼ねているわ」
そういえば、昨日先生と出会った時に課題を出すとか何とかとか言ってたな。
「その、課題というのは何なんですか?」
「全部で三つ。一つ目は屋上の天使像の警備、二つ目は絵画の間の点検、そして三つ目は一年前に見つかった部屋の捜査よ。この三つはどれから始めても構わないわ。ここにリストがあるから詳しくはこれを見て」
リストをアークが受け取る。意外と分厚いな。
「この仕事は決して楽なものは一つもないわ。必要となるのは、あなた達のチームワークよ」
なるほど、この任務はチームワークが鍵になるのか。
「以上で話は終わりよ。質問はある?……無いならいいわ。今夜から始めることをお勧めするわよ。気をつけて」
そして、カレン先生は歩み去っていった。講堂には俺達六人が取り残された。
「とりあえず、今日の夜に天使像の警備を行おう」
「そうね」
「異議なし!」
「……」
アークの提案に全員が賛同する。屋上には行ったことないな。一体どうなっているんだろう。
◇◇◇
「屋上の天使像の警備っていつまでやるんだ?」
朝のホームルームが終わり、俺はアークにたずねた。周りにいる皆は、席を立ち上がって友人のもとへ向かい楽しげに話している。俺とアークの席は前後で隣同士であった。
「えっと……リストによると夜明けまでだね」
「は?嘘だろ」
夜明けということは寝る時間がないじゃないか。そもそもなんでそこまで起きてなきゃいけないんだ?
「どうやら、天使像で不審者を見かけたらしいよ」
「……じゃあつまり、その不審者を見つけ出せばいいんだな」
「うん。リストにはそう書いてある」
不審者を見つけ出さないといけないのか。生徒か教師のどっちかだと思うけど。
「なあお前ら、さっきから何話してんだ?」
「「……」」
突然割り込んできた人物、肌は色白で金髪であり、青い目を持っている。人間の男だ。
「なぁなぁ、何話してたんだ?」
「黒の騎士団に課題を言い渡されて、その打ち合わせだよ」
アークが説明する。すると男は何かを思い出したような感じだった。
「そうか、二人は黒の騎士団だったな。いいよなーお前ら」
「あの……お前は一体……」
「あ、自己紹介し忘れてたな、俺の名前はヴィルギル・カイザー。二人のクラスメイトだ」
なんだ、このクラスの人だったのか。
「それにしても、黒の騎士団って名前格好良くないか?」
「格好良くねーよ」
「俺も入りたかったな……。そういえば、俺のルームメイトも黒の騎士団だった気が……」
「え、その人の名前は?」
「リアム・テルフォードっていう名前だったな」
こいつ、リアムのルームメイトだったのか。じゃあ、リアムの事について何か知っているかもしれないな。
「一つ聞くんだけど、リアムについて何か知ってる?」
アークがヴィルギルに聞いた。すると、ヴィルギルが首をかしげる。
もしかして、リアムはルームメイトとも話した事があまりないのか……。
「あまり知らねーな。あいつ無口だからさ。あんまり話した事がないんだ」
「そうなんだ……」
やっぱり、誰ともあまり話した事がないんだな。もともと、コミュニケーションが苦手そうだったし。でも、これからチームとして戦っていくためにはそのコミュニケーションをなんとかしないと。
「あ、そういえばあいつ写真とかよく見てるな」
「「写真?」」
俺とアークが口をそろえて言う。写真を見てるとは。そんな光景、見た事ないが。
「どんな写真なんだ?」
「えっと……こっそり見たんだけど虎獣人の親子が写ってたな。多分、リアムだと思うけど」
リアムには父親しかいないと言っていた。やっぱり一人でいるのが寂しいのだろうか?
「ちょっと待てよ。確か一回、リアムが写真を見ていた時、泣いていた気がするんだ。歯ぎしりをして……」
え、どういう意味だ。泣くのは分かるかもしれないが、なぜ歯ぎしりをしなければならないんだ。
「それって本当?」
「ああ、間違いなかったぜ」
時折、父親が写っている写真を見て、歯ぎしりしながら涙を浮かべる……。うーん、分からない。
チャイムが鳴った。授業開始の合図。皆がもとの席に戻っていく。ヴィルギルも俺達に「じゃあな」と言うと自分の席へと戻っていった。
今回、リアムの事が分かったような分からなくなったような……。今夜、本人に直接聞いてみよう。




