表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白銀のヴァールハイト  作者: A86
3章 ユーバーファル
61/173

第60話 結末

今回、話が少し駆け足です。

「ぐっ……はっ」


 俺はタガーの攻撃を刀で次々と防いでいく。今までの動きとは桁違いな速さだ。

 こいつ……腕を上げたのか。それとも、騎士団にいる時に本気を出さなかっただけなのか。


「防御だけになっているぞ。騎士団の時の威勢はどうした?」


 喋る余裕すらあるなんて……。こっちはそんなことをしてる暇もないのに。これじゃあ騎士団で戦ったときと同じだ。防御をし続けて疲れさせる。そして隙だらけになった瞬間、攻撃が始まるのだ。

 パターンは一緒。これをどう切り崩していくのかが問題だ。相手は一度戦ったから大体分かっている。タガーを防御し続けるのはもう飽きた。いっそのこと、心臓を狙ってみるのもいいかもしれない。

 俺はタガーを防がず、避けると刀を両手に持ち、心臓を狙う。相手は驚いて一気に後ろに下がった。


「まさか、心臓をいきなり狙ってくるとは……。少し驚いたな」


「どうやって俺を回り込んだ?」


「あれか?単に近道を使っただけだ。この街を熟知しているからな」


 なるほど、そういうことだったのか。

 カルロスはタガーを持ち、再び襲いかかってきた。今度は少し違う。走りながら俺を切り裂くつもりだ。俺は刀で受け止める。ここからは持久戦だ。どっちが押しきれるかの……。


「ぐ……ぎ、ぎ……」


“そのまま持ちこたえろ。そうすれば勝てる”


 また、刀の声が聞こえてきた。持ちこたえろと言われても……今にもやられそうなんだが。


「諦めろ、デューク・フライハイト。どの道お前を、殺してやる」


 ……まずい。このままじゃ、任務を遂行するどころか、こいつに殺される。タガーが急に重くなった。


「さあ、さあ、さあ!」


 押し潰される。やめろ……。


“今だ!タガーを支えるのをやめろ!”


「……!」


 俺は刀を引いて、横にずれる。カルロスは体勢を崩して、前に倒れる。俺はその瞬間を狙った。刀で体勢を崩したカルロスの脇腹を引き裂いたのだ。それも深々と。


「ぐぁぁっっ……」


 カルロスがうめき声を上げる。傷口から血が滴り落ちていく。刀に奴の血が付いている。

刀をカルロスに向けて、勝ったことを示した。


「この……まだだ――」


「そこまでです、カルロス君」


 この声、地下でのスピーカーで聞こえた声だ。確か名前は……。


「スドウ様……」


 そう、スドウという名前だ。奴は裏路地からゆっくりと出てくる。研究員が着る白衣を着てて、紫の仮面をつけている。髪は腰のあたりまで伸びていた。


「勝負は君の負けですよ。潔く認めるのが一番ですね」


「くっ……」


「お前……!」


 俺は今すぐにでもこいつを殴りたい気分だった。こいつのせいでこの街は……!どれだけの人が犠牲になったか!

 スドウは涼しげな顔をしている。俺の存在に気付きこちらを向く。


「許さない、という表情ですね」


「当たり前だ!お前のせいで……」


 スドウは笑みを崩さない。


「今回はあなた達の勝ちと言っていいでしょう。データも取れたし、この街はもう用済みです。……我々が手に入れたいものは、あなた達のおかげで手に入れました」


「何?」


「感謝しますよ。そしてもう一つ、これは上司にお伝えください。あまり我々を詮索しないことだ。さもなければ、容赦なくお前達を殺す」


「……」


「以上です。それではまた――」


「待て!お前達の目的は何だ!」


 突然、スドウの白衣からキューブを取り出した。そして、煙が一気に噴き出す。煙幕だ。

 煙は瞬く間に広がり、辺りを包み込む。煙が晴れたのは数十秒後だった。地面にはカルロスの血痕だけが残っていた。


「逃げたか……」


 スル……スル……

 この音は、ヴァイス・トイフェルの……。そうだ、爆発地点まで急がないと!イデアルグラースは後だ。









◇◇◇


 爆発地点にたどり着いたのは、それから数分後だ。すぐに説明書を読んで、爆弾をセットする。ヴァイス・トイフェルが襲ってきたのはそれから間もなく数分後だ。

 ドォォォォン!!

 俺は身を影に潜めて爆発させた。隠れているため、ヴァイス・トイフェルどこにいったのか分からない。

 少なくとも、爆発させたことで一本道になったのは変わりなかった。

 遠くで落石の音が聞こえた。ダニエル先生が出入り口を封鎖するのに成功したんだろう、きっと。

 イデアルグラース……彼らはそう言った。何をしようとしているのかはよく分からない。でも、一つだけ分かったことは彼らがヴァイス・トイフェルを使役し、世界を脅かしている。それだけだ。それだけで十分だった。今は……。

 ヴァイス・トイフェルの這う音はもう聞こえない。もう、動いていいだろう。出入り口へ向かおう。

 まだ、分かってないことが一つある。それは――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ