第6話 洞穴の出口?
「雪崩だ!」
リックが叫ぶ。地響きも起き、立ってもいられないくらいに揺れた。
「急いで外へ!早く!」
来た道を戻ろうにも歩けず、はって進む以外他は無かった。
すると、突然揺れが収まる。俺達はその瞬間を逃さなかった。
「今だ!」
俺達3人は洞窟の入り口を目指し、ただただ走った。……入り口がふさがれてなければいいが。
走って、走って、走り続ける。やがて月の光が見えた。助かる、急いで戻らないと。その気持ちだった。なのに、その希望は儚く消え失せた。
外へ出ようとした瞬間、落石が起こったのだ。俺とリックはすぐに後ろに下がったが、クレアは落石の中へと突っ込んでいく――。
「クレア―――――――!!!」
………………。何も、聞こえない。ところが、
「コホッ……私は平気よ。何とか外へ出られたわ」
外からクレアの声が聞こえてきた。リック安堵して胸をなでおろした後、こう言った。
「よかった。町におりて助けを呼んできてくれ。俺達は別の出口を探してみるから」
「うん!」
その後、俺とリックは遺跡でもう一つの出口を探した。正直言って見つからない気がする。この遺跡はもう学者に隅々と探索されずみだ。そして、見つかったのは、落石でふさがれた所だけだった。おとなしく救助を待っていた方がいい気がした。
「なあリック、わざわざ出口を探さなくても助けを待っていた方が良くないか?」
「……確かにそうだな。見つかると思ったんだけどなぁ」
俺達は遺跡に出入り口へと戻った。まだ土ぼこりがあって少々けむかった。月の光が少しだけ差すくらいだけの暗闇、そんな不安に陥りそうな状況で友人がいることに安心感を覚える。
「デューク、こんな質問するのは俺らしくないんだけど……はっきり言って俺が対白魔騎士団の話を聞くのは嫌か?」
「えっ……」
「いや、正直に答えていいんだ。嫌か、嫌じゃないか」
リックが今までこんな質問をしたことがなかった。それほど、クレアの小言が気になったんだろう。
「別に嫌いじゃないよ。でも、さすがに親の許可がないのは駄目じゃないかな」
「……過保護なんだよ。子供の頃は全然外へ出してくれなかったし、今でも毎日定期健診をしてくるしさ」
「大変だね、それは」
会話をしているおかげか、静寂で暗闇だった空間にかすかな笑いが漂い、明るい空間となった気がする。
「デューク」
「なに?」
「俺、中学を卒業したらクレアに告白しようと思っているんだ」
「卒業……二年後か?それにお前、騎士団へ入るんだろ。場合によっては遠距離になるんじゃ……」
「だからだよ。この先、彼女に会う機会が無くなるのなら、せめて自分の気持ちを伝えたいんだ」
「クレアの場合、かなり考え込みそうだな。何せ騎士団の方へ行くんだからな。ま、お前らのことはずっと応援している。あれこれ考えている暇があったら、その想いを伝えればいいんだ」
「まるで恋愛マスターみたいな言い方だな」
お互いに笑う。不安な気持ちは、もうなかった。
突然右耳に、冷たい冷気が当たった。
……風?いや、間違いない、風だ。どこか外への道が通じているのか?
「?どうしたデューク」
「今、風が……。もしかしたら外へ出られるかも」
「何!?」
「こっち!」
俺達は今にも崩れそうな道をゆっくりと歩いていった。外へ出られるという希望を持ちながら進んでいく。度々落ちそうながらも進んでいった。
やがて、風の通っている穴を見つけた。大きさこそは小さいが、子供1人は抜けれそうだった。しかも雪で覆われている部分もあったのだ。雪崩の影響もあったのか、そこまで取り壊すことができた。
「よっと、引っ張るぞ」
俺はリックを引っ張り出した。外は雪で覆われていて一面銀世界だった。あたりは深い霧でたちこめている。
「ついてるぞ俺達。向こうに町の光が見える。行こう」
俺達は再びゆっくりと歩き始めた。……なんだろう、寒い。
いや、雪が積もっているほどなんだから当たり前なんだけど……。
違う。寒いのは深くたちこめる霧のほうだ。……一瞬だけ、ほんとに一瞬、恐ろしい考えが浮かんでしまった。……そんなはずはない、この地域にはいないはずだ……。そう、そのはずなんだ……。
そして、それは運悪く当たることになる……。