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白銀のヴァールハイト  作者: A86
3章 ユーバーファル
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第56話 ダニエルの作戦

 何十体のヴァイス・トイフェルが一斉に動き出した。群れをなして、移動している。その方向はホテルの方だ。


「街の住民が……!」


「心配はいらない。住民は避難しているらしい。それより、時間がないが聞いてくれ!」


 すると、ダニエル先生が液体の入った試験管らしきものを合計六本取り出した。薄い緑色で見るからに危なそうだ。


「これは爆弾だ。それも、大爆発を起こすようなものだ。これを使って、ヴァイス・トイフェルの動きを止めよう」


「これで!?どうやってですか?」


 ミリーネがそう尋ねる。ダニエル先生は一枚の地図を取り出した。街の地図だろうか?


「これは、この街の地図だ。お前達六人はこの爆弾を使って、ヴァイス・トイフェルの進行を変えていく。その間に私が落石を起こして街の出入口を塞ぐのだ」


 なるほど、ヴァイス・トイフェルを閉じ込めるわけだ。そして、最期に一気に仕留める作戦という訳か。


「おそらく、奴らはホテルにいる人を一人残らずヴァイス・トイフェルに喰わせる気なんだろう。怪物を腹いっぱいにできるし、この事件の口封じもできる。ホテルに怪物がたどり着く前にくい止めるんだ!お前達が行くべき場所はこの地図に書いておいた。質問はないか?」


 シャーランが手を挙げた。この土壇場で一体何を……。


「もし、失敗したらどうするのですか?」


「失敗は許されない。もし、爆発させるべき地点に着けなかったら、他の人が移動して、爆発させるしかない。とにかく、時間をかせぐんだ。危険だが、それしかない」


 他に質問はあるか?、ダニエル先生が言った。今度は誰も手を挙げなかった。


「よし、そしたら一度解散だ。爆弾には気をつけろ、装置し終わったらすぐ離れるんだ。以上!」


その言葉とともに、俺以外の五人は一斉に散った。皆、自分達が向かうべき場所へと走っていく。俺はコンラッドさんを下ろして、地面に彼を仰向けにさせた。


「ごめんね。不甲斐なくて」


「いいですよ、別に。先生、コンラッドさんをお願いします」


「分かった、気をつけてな」


 俺は頷くと、皆のあとを追った。一秒も油断できない緊張感、ヴァイス・トイフェルは刻一刻とホテルへ向かっていく。そうなる前に奴らをくい止めろ。急げ、急げ、急げ!

 心臓の鼓動が、高鳴り始めた。









◇◇◇


「うっ……以外と…遠いな」


 ドォォォォン……

 爆発音が聞こえた。誰かが爆発させたんだ。

 俺は街の東側で爆発をさせる予定だ。ただ、爆発地点までたどり着くのに、時間がかかる。ものすごく遠いのだ。

 ヴァイス・トイフェルはどこにいるんだ?さっきの爆発からして、今西の方に行ったか。爆発地点はそれぞれ街の南、南西、西、北、東、南東の順になっていた。皆がどこの位置に爆発させるのかはよく見ていなかったが、クレアは西側で爆発させるのは地図で見たため分かっていた。

 それにしても遠いな。だからこそ最後から二番目にしたんだろうけど……。


ガチャ!


 ………ん、何の音だ?裏路地から聞こえてきたが……。

 俺は走るのをやめ、音が鳴った場所を見てみる。暗くてよく分からない。待て、誰か……いる。


ゴソッ……


 誰かが姿を現した。あれは……………………カルロス?何故ここに。


「……やあ、いるんだろうそこに」


 まずい!気付かれた。自分の呼吸が荒くなっていくのが分かる。気まずいときに出会ってしまった。


「さあ来い……デューク・フライハイト」

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