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白銀のヴァールハイト  作者: A86
3章 ユーバーファル
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第51話 序盤戦

「デューク……デュークってば!」


「うっ…」


 暗い、頭が痛くて誰が俺を呼んでいるのか分からない。懐中電灯をつけた。アークの顔がぬっと見える。


「アーク?」


「気がついたみたいだね」


「コンラッドさん……他の皆は?」


「いないよ。どうやら僕達、バラバラに分断されたらしい」


 何てことだ。こうもあっさり敵の罠にはまってしまうなんて……。ここはどこだろうか?他の皆はどうしているのだろうか?あぁ、考えれば考えるほど不安が出てくる。


「クレア……」


 思わずつぶやいた。クレアは、昔から暗い所が苦手だった。他の奴らがついているだろうが怖くて仕方がないかもしれない。

 俺達が救出をしなければ。懐中電灯の光で辺りの様子をを伺う。特に変わった所はない。……いや、あった。檻がある。それもとてつもなく大きい。何か聞こえる……。

 スル……スル……


 この音で確信をした。ヴァイス・トイフェル……ここにもいるのか。この造り、先生の言っていたイデアルグラースによって造られたのだろうか?


「何かいる……」


「ヴァイス・トイフェルだ」


「ヒィ……」


 コンラッドさんが怯えている。いざとなった時、二人で彼を守らなくてはならないのだ。それができるかどうか……。やるんだ、絶対に!


「デューク、聞いてくれ」


「なんだ?」


「もし、ヴァイス・トイフェルが来たら、僕が囮になる。隙を作るから君がとどめを刺すんだ」


「そしたら、お前が……」


「学校で習っただろ。ヴァイス・トイフェルを倒すには少なくとも二人以上いなければだめだ。一人が隙を作り、もう一人が倒す。古い手かもしれないけれど、今はそれしか出来ないんだ」


 アークが真剣な表情になる。俺にヴァイス・トイフェルを倒せるのか?この刀で……。この刀は俺に力を貸してくれるだろうか?カルロスと戦った時みたいに……。

 一歩踏み間違えば俺達はおしまいなのだ。それくらい分かっている。

 スル……スル……ガチ……


 ヴァイス・トイフェルが檻を叩くような音が聞こえてくる。その音が俺を締め付けてくる。ヴァイス・トイフェルを倒せる武器を持っているのは俺しかいない。そして、アークは俺を頼ろうと思っている。……そうだな、戦ってあがく方がただただ喰われるよりよっぽどましだ。ならば、答えはーー


「……分かった」


 今、俺達ができることを貫き通す。それがヴァイス・トイフェルを倒す方法だ。

 パッ……

 突然、部屋が明るくなった。部屋の周囲を見渡すことができる。部屋は当たり前だろうが壁に張り付いた檻と床にこびりついた血、人のはらわた以外何もない。ここで、アランは……もしくはその前に……。

 俺達は檻の方を見た。見ると、檻の扉が上に開き、ヴァイス・トイフェルがゆっくりと外に出てくる。

 スル……シュー……


 来たな、怪物。来い……。

 俺とアークはお互いに目配せをする。そして、前を向くと、ヴァイス・トイフェルの方へ走り始めた。









◇◇◇


 とある一室、そこにあるたくさんのモニター。映っているのはデューク達とヴァイス・トイフェルの姿だ。


「始まりましたね、戦いが」


 映像を見ていた男は後ろにいる二人にも声をかける。この部屋には三人しかいなかった。後ろにいた人物の一人がモニターを見ている男に話しかけた。


「しかしいいのですか。もし、ヴァイス・トイフェルに打ち勝ったらとうすれば……?」


「その時の対策も既に打っております。心配いりませんよ。まずは、彼らの戦いをじっくりと見てみましょう」


「つまんないノ。あたしの出番がないじゃナイ」


 もう一人の人物が声を出す。声はまだ幼い。


「そこも大丈夫です。二人にはちゃんと見せ場を作ります。それまでじっと待っててくださいね、カルロス・ディーン君とアリス・バラードさん」


 男はそう言うと再び画面の方に向き直った。そのモニターには、彼らの戦っている姿が映し出されていた……。

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