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白銀のヴァールハイト  作者: A86
3章 ユーバーファル
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第44話 盗み聞き

「はぁ〜疲れた〜」


 夜、ホテルのきらびやかな光に包まれ俺達の一日は終わった。リアムとシャーランは疲れをまったく見せていない。


「お疲れ様六人共。先に休んでてくれ」


 ダニエル先生が俺達に弁当を渡した。お茶は……今日採ってきた薬草のしかないらしい。それでもありがたく頂いた。


 早速お茶を飲んでみた。うっ……すごい苦い。緑茶が何十倍にも濃くされたような味だ。急いでご飯を口に頬張る。ふぅ、何とか落ち着いた。


「このお茶、苦い……」


 クレアも同じだったらしい。他の皆もそのような様子だった。

 弁当を食べ終わると俺は部屋へと戻ろうとした。ホテルを散策し、病人がどこにいるのかと見回す。病人が一体どういう状態なのか言葉だけでは分からない。その内にホテルで迷子になってしまった。ここはどこなんだろう。


「ああ大丈夫よアラン。すぐ治るから」


 ホテルの一室から聞こえてきた。ドアが少し開いていて隙間から中を覗き込む。すすり泣きの声が聞こえた。暗くて中がよく見えない。


「息子をどうする気なんです?いきなり街へ連れて行こうだなんて……」


「ですが、騎士団の提案ですので」


 チャールズさんの声がした。母親らしき人物の怒りの声が聞こえる。


「その騎士団が何を考えているのか分からないの!街は病人がいなくなることで有名だから!」


どうやら息子を街へ連れ出すよう騎士団に言われたらしい。母親が怒るのも仕方ないだろう。


「息子を実験材料とでも思ってるの!?絶対認めないわそんなこと!」


「失礼ですが奥様。我々は決して息子さんを実験材料と思っていません」


 ダニエル先生!?いつの間にいたんだ?いや、そんなことはいい。


「我々は知りたいだけなのです。この街の謎を。そのために息子さんが必要なのです。もしかしたら、息子さんがこの街の謎を解く鍵になるかもしれないのです。どうか、明日だけ、お願いします。息子さんの安全は絶対に保証します」


 ダニエル先生がおそらく頭を下げたと思われる。長い時間が過ぎたような気がした。


「息子に何かあったら承知しないわよ……」


「!ありがとうございます」


 どうやら息子を街へ連れ出すのを許可してくれたらしい。それはそれでいいのか……?

 俺は部屋から離れ、自分の部屋に向かった。あっ、今迷子になっているんだった。誰かに聞かないと。するとコンラッドさんが丁度通りかかった。


「おや、君は確か……」


「デューク・フライハイトです。迷子になっちゃって」


「君たちの部屋は三階に上がって左奥だよ」


「ありがとうございます」


 突如、街での失踪事件が気になった。コンラッドさんに聞いてみようか……。


「コンラッドさん、一つたずねたいことがあります」


「何だい?」


「街の失踪事件について聞きたいんです」


 コンラッドさんがたじろいだ。言うかどうか迷っているらしい。早く、聞かせてくれよ!


「以前、病人が病院にいた時に一人目が行方不明になった。その時は事故として捉われていたいたが、二人目、三人目、四人目といなくなるにつれて事件になっていったんだ。その四人に共通しているのは路地裏に消えていくこと、そして悲鳴とは思えない音が聞こえるだけだ」


「音?」


「うん、バキッとかね。……このこと誰にも言わないでね。バレると上層部がう…うるさいから……」


 嫌な予感がする。聞いているだけで不穏な気が……。明日大丈夫かな。アランと呼ばれた子の警備に回ればいいんだけど。

 けれども、俺はその気持ちを隠した。


「分かりました。誰にも言いません」


「うん、よろしく頼むよ」


 コンラッドさんは微笑むと階段を駆け下りて行ってしまった。俺も部屋に戻ろう。明日からまた忙しくなるだろうし……。失踪事件ではまだ気になることはあるけれど。俺はどうすればいいんだ……?

 俺は階段を上がり部屋へと向かった。

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