第42話 遠征
無理やり感が半端ないです……。
「旅行かぁ、久しぶりだな」
電車に乗り込み、指定された席に座る。これから三十分で田舎の方の街へと向かうのだ。そこは、ヴァイス・トイフェルによって雪原と化した地域だが、怪物はとうの昔にその土地から離れてしまったため多少の不便はあるものの今は人が土地を使っている。
そこで奇妙な事件が発生したため対白魔騎士団に助けを求めにきたという訳だ。
「遊びじゃないんだ。くれぐれも着いたらその行楽気分を隠すように」
……ダニエル先生は何故か俺の隣の席に座っている。これってなんかの嫌がらせか?どうしてこんなことになっているんだろう?ちなみに俺の反対側は通路である。つまり、おれと先生の二席で一つなのだ。
他の皆はどこなんだろう……。
電車が動き始めた。速い。後ろに引き寄せられそうだ。
そういえば、騎士団内にヴァイス・トイフェルが現れた時、ダニエル先生が犯人ではないかと考えたことがあった。俺はチラッと先生を見る。すると、丁度目があってしまった。
「なんだ?」
「いえ、特に……。以前先生のことを怪しんだことがあったので…」
「怪しむというのはカルロスの件か?」
「はい」
カルロスはどこにいったのか……それは、まだ分かっていない。未だ捜索している。
「確か以前……少し似たような事例があったな」
「事例ってなんですか?」
「いや、私が学生だった頃、黒の騎士団に入っていた一人の生徒が行方不明になったんだ。そいつはどうやっていなくなったのか分かってない。それ以来、それは未解決事件となっているんだ」
そんな事があったのか。その生徒は一体どこへ行ったのだろう、生きているのかな……。そう思った。
「その人は人間だったのですか、それとも獣人だったのですか?」
「さぁ……よく覚えていないな。あまり親しくなかったし、私が知ったのは失踪してかなり先だったからな」
しばらくして、自由に動いてもいいよう許しが出た。俺はクレアとアークがいる場所へ向かった。二人が座っていた席は四人まで座れるので、俺はそこに座ることができた。
「どこ行ってたの?」
「俺……先生の隣だった……」
「隣!どうして!?」
「きっと、一学期のことがあったからだと思う……」
電車が街に着くまで俺達は話し合い続けた。街で何が起きているのか、など。俺は到着するぎりぎりまで俺は先生の席に戻らなかった。
電車は動き続け、ある駅にたどり着いた。そこで一同は電車を降りて小さな街へと向かった……。
◇◇◇
街は静まり返っていた。住人は誰も住んでいないような感じだ。それを気にせず他の皆は先に進んでいく。丘を登り、大きなホテルが見えてきた。
「皆様お待ちしておりました。さぁさ、どうぞ」
二人の男性が俺達を迎えてくれた。少し小太りをしているが、人が良さそうな顔をしていて、白髪混じりの髪に眼鏡をかけている。首にはロケットを掛けていた。
もう一人は背が高く、痩せ型で若干オドオドしている様子だった。
「初めまして、私はチャールズ・ヘイム。で、こちらはーー」
「あ、あのっコンラッド・スラムです。よろしくお願いします」
チャールズさんがオドオドしている男性を紹介した。何かに怯えているような感じだ。
早速大きなホテルの中に入る。中はかなりゴージャスだ。こんなに豪華なホテルは見た事がない。ただ、その中ではひどく重苦しい雰囲気が漂っていた。給仕がせわしなく動いている。
「今、ここでは病院として扱っております。ある伝染病に感染した人の、ね」
チャールズさんとコンラッドさんは小さな部屋に俺達を通した。席に座るとまるでこれから会議でも行うかのように話し始めた……。




