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白銀のヴァールハイト  作者: A86
3章 ユーバーファル
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第41話 夏期講習(デューク→クレア視点)

余談

・ユーバーファルはドイツ語。意味は……

「デューク、眠いの?」


「ああ、昨日はあんまり眠れなかったんだ」


 今は夏休み、本来ならば普通の生徒は親の元へと帰っていく。しかし、黒の騎士団に選ばれた俺達は夏期講習をしてから親元へ戻るので他の生徒より一週間以上遅れて帰るのだ。

 今日は夏期講習の五日目、まだあと三日も残っている。正直言ってすごくだるい。早く終わらないかな……。


「授業も早く終わらないかな。そろそろ飽きてきたし」


「まぁあと三日なんだし……頑張ろうよ」


 アークが励ましてくれるが俺の気持ちは全然晴れなかった。どこか遊びに行きたいな……。騎士団では無断な外出は許されていない。正式に許されるのは二年生からだ。


「ねぇねぇ二人共、話があるんだけどさーー」


(ミリーネは相変わらず元気だな……)

 この暑さでよくバテないな。俺は毛皮が災いとなって何度か死にかけている。その度にアークかクレアが水をかけてくれるのだ。

(今も少しまずいかも。頭が痛くなってきた)


「デューク聞いてる?」


「………悪い、聞いてなかった…」


「もう!あのね、黒の騎士団にあたし達は見事入れたじゃん。でね、あたしとデュークとクレアとアークはいいとして、リアムとシャーランには声もかけたこともないでしょ。だから今ここで二人がいる間に話しかけようって言ってたんだよ」


 リアムとシャーランに話しかける?確かにこれからチームとなる上ではとても重要かもしれない。


「分かった。やってみよう」


「よし!じゃあ、あたしとクレアはシャーランに話しかけるから二人はリアムに話しかけて。……くれぐれもゆっくりとね」


 お前もだよ、と俺は心の中でつっこんだ。

 リアムは後ろから二番目の席に座っていた。どこにでもいそうな虎獣人だが、目は……死んでいる。アークが目配せで俺が先に声をかけるよう促した。


「こんにちは、リアム」


「……こんにちは」


 リアムは小さな声でしゃべった。話すのが苦手なのかな。まず、自己紹介したほうがいいかな。


「俺の名前はデューク・フライハイト、こっちはアーク・クラムディンだ。これからよろしくな」


「……俺は、リアム・テルフォード……よろしく」


 ぎこちない挨拶、目の焦点が俺達の方を向いていない。やっぱり、話しかけられるのが苦手なのかもな。


「なんか、邪魔している感じだね。ごめん」


 アークがそう言うと、俺達は引き下がった。自己紹介だけだったなぁ。クレア達は、どうなっているんだろう?









◇◇◇


 私達は今、シャーランの席へと向かっていた。女子から歓声が上がっていたシャーランは一体どんな人なんだろう。なんか、少し緊張してきた。


「やっほー、あたしミリーネ・アスタフェイ」


「クレア・リースです。初めまして」


「…初めまして、私はシャーラン・イヴェール。よろしく」


「こっちこそよろしく〜、シャーラン」


 ミリーネが手を差しのべて握手をしようとした。すると、シャーランは身を引いて私達と距離を置いた。


「ごめんなさい。握手はできないの」


「そうなんだ、分かった。それじゃあシャーランって何の食べ物が好き?私は――」


 ミリーネは様々な話題を出して、話していた。シャーランはミリーネの質問に冷淡ながらも答えていく。私は何もせず、ただその様子を見ていた。

 その後もミリーネが触れようとした時、決まってシャーランは触れないように避けた。まるで、触れるのを嫌がっているかのように……。


「じゃあねー、シャーラン」


 私達はシャーランと別れ、席に戻った。気付けば十五分くらい経っていた。


「いやーいろいろなことが分かったね〜」


「うん……シャーラン、握手をさせてくれなかったね」


「仕方ないよ。苦手なんだよきっと」


 それだけだろうか?他にも何か理由がある気がする。でも、だからと言って聞くのもなんか悪いし……。ミリーネの言う通り、ただ苦手なのかもしれないきっと。


 デュークとアークはすでに席に座っていた。リアムと何を話していたんだろう。


「ここにいたか、諸君」


 前を見ると、ダニエル先生がいた。半ば焦っている気がする。きっと、走ってきたんだ。少し落ち着くと、話し始めた。


「明日は実戦の授業がある。そこで、お前達六人は我々の遠征に同行してもらいたい」



……………………………遠……征……?

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