第40話 夢の中でこんにちは
ここから少しずつ残酷でダークな物語になっていく予定です。それではどうぞ。
気づいたら人が倒れていた。それは一人ではない。数え切れないほどたくさん……倒れている。けれど決して死んでいる訳ではない。どちらかと言えば眠っている……感じなのだ。
一度瞬きをすると違った景色が見えてくる。そう、俺はいつの間にか暗闇の中にいた。仰向けの状態で起き上がることができない。なぜ、起き上がれないのだろう?
スル……スル……
(!!!!!!)
今の音……!どこからだ?俺は首を左右に振るが見つからない。……おかしい、こんなはずは――。
シュー…シュー………
右から聞こえた。俺は首を右に向ける。だがそこにはいなかった。一体どこに。
手が水びたしに触れた。手を挙げ、手の平を見る。俺の手は赤く染まっていた。何故赤く見えたかって?俺は夜でも目がいい。俺は獣だからだ。そう、獣、獣、獣、獣、獣、獣、獣、獣、獣、獣、獣、獣、獣、獣――。
血の匂いがした。そうか、この赤い液体は血なんだ。どうせヴァイス・トイフェルに喰われた人間なんだろう。隣を見てみるとそこには無かったはらわたがあった。それ以外にも人の手や臓器が散らかっている。
「デューク……」
誰だ。俺のことを呼んだのは。この場所に人がいるとは思えない。ただの人ではないはずだ。血の匂いが充満してきた。……美味そうだ。
「デューク」
今度ははっきり聞こえた。ささやいているような感じ。だから、誰なんだ。姿を見せろ。
すると、今度は笑い声が聞こえた。クスクス、キャハハ。声質からして男性の声だろう。
シュー…………
目の前にヴァイス・トイフェルが現れた。しかも、四体もいる。不思議と恐怖は、感じない。食えよ、ほら。俺を食え!
一匹のヴァイス・トイフェルが俺の右腕にかぶりついた。そして、左手、右足、左足と四肢を引きちぎられた。
バキッ…ボリボリ……
骨が折れる音が聞こえる。俺の周りが血で染まっていく。フフフフ、ハハハハ……。笑いたくなる。もっと血を見たい。いっそのこと殺してみてくれ!
その時だった。一人の少年が目に映った。クリーム色の髪に肌は白く、茶色の瞳を持った男の子。そいつは現実の世界ではもう二度と会うことができない。
(リック……?)
リックは残酷な笑みを浮かべるとこう言った。
「どうだいデューク、嬉しいか?当然だよな。お前が死ねば俺の元へ行けるんだから。喜べよ!アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
ヴァイス・トイフェルが俺の頭にかぶりつく。体から切断した。俺は……死んだ。
◇◇◇
「うわっ……」
俺は目が覚めた。呼吸が酷く荒れている。しばらくの間頭を抱えていると俺は寮の部屋にいることがだんだん分かってきた。
小さくうめいてぼうっと上半身を起こす。なんて夢だ。リックが俺を殺しに来るなんて。まるで半分現実のような夢のようなそうじゃないような………。
暗闇の部屋、今日は新月。月の光はない。だからこそ暗く感じるんだろう。俺はベッドに横たわった。頭が痛い。
今日は眠れそうになかった。目も冴えてしまった。現実のような夢のせいで……。本当に嫌な夢だった。俺もかなり狂ってたし。
「くそっ、どうなってるんだ」
それから俺は、夜が明けるまで起きている羽目になった。




