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白銀のヴァールハイト  作者: A86
2章 対白魔騎士団
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第37話 実技テスト(開始)

 その後、俺は医務室を出ると真っ先に皆の元へと向かった。走り、走り、走り続ける。今はただ皆に会いたかった。ヴァイス・トイフェルから無事に帰ってこれた彼らに。

 三人は中庭にいた。俺の姿をクレアが見つけると大きく手を振ってくれた。あぁ、なんか懐かしい。


「遅い!ずっと待ってたんだよ〜」


「そろそろ来るんじゃないかって話していたところだったんだ」


 ミリーネの快活な声、アークの落ち着いた雰囲気、それを見つめるクレア、三人は変わっていない。もちろん俺も変わっていない。


「その前に、皆がヴァイス・トイフェルと戦うことになって……。無事で良かった」


「ほんとだよ。あたしなんてあともう少しでヴァイス・トイフェルに殺されるところだったんだからね。でも、クレアが助けてくれたから本当によかった」


「え……そうだったのか」


 知らなかったそんなこと。巻き込んだ感じでとても悪く思った。本人達はなんとも思っていないのだろうが……。


「なんか、悪いことしちゃったな」


「別に謝る必要はないよ。確かにヴァイス・トイフェルに囲まれたときは怖かったけど、あれでヴァイス・トイフェルがどういう存在なのか分かったんだし、なにより僕達は怪物を倒したんだ。これは、皆に自慢してもいいことだよ」


 クレアとミリーネが頷く。やっぱり、俺のことを悪く思っている奴はいなかった。でも、もしあの時カルロス先生を追いかけたとして、三人がヴァイス・トイフェルに殺されたとしたら、俺はどうしていたんだろう。考えただけでもゾッとする。皆生きていたからいいけれど、今後こういうことがないようにしなくちゃな。仲間にあまり危険な目にあわせたくない。

 指揮は俺にはあまり向いていないのかもな。それこそアークがキングの称号を目指しているのだから彼に時折ゆだねるのもいいかもしれない。だって本職なんだし……。他にもクレアの冷静さや、ミリーネの行動力も今後必要になってくるはず。だが、頼るだけでなく自分も人に頼られるくらい強くならなくちゃ。

 一歩一歩、進んでいこう。焦らずに歩いていけばいいんだ……。


「それよりさー、実技テスト明後日だよねー。全然勉強してないよ」


「してたじゃん、本物の怪物と戦って練習したんでしょ?」


「あっ……」


 そして、俺達は一気に笑い出した。懐かしいな、友人とささいなことで話したり、笑いあったりするの……。リックが……ここにいればもっといいのに……。


「久しぶりな気がする。デュークと楽しい会話をすることが……」


「クレア……」


「ねぇデューク、今回は皆無事だったから良かったけど今後は勝手に皆を置いて、どこかに行ったりしないでね。…約束よ」


「もちろん、もうしないよ。約束する」


 七月の中旬にさしかかり、そろそろ暑くなってきた。それでもまだ、蝉の声は聞こえない。それでもいつかは聞こえるはずだ。

 クレアも、リックのことを考えていたのだろうか?いや、それはよしておこう。俺達は校内に入り、明後日の実技テストに備えて準備することにした。







◇◇◇


『それでは、あらかじめに決めたペアで固まってください』


 実技テスト当日、いよいよこの日がやってきた。健康はバッチリ、特に教科書で見落としもない。それよりも一つ困ったことが……。


「一緒に頑張ろうね、デューク♪」


「……何でお前が俺のペアなんだよ」


 俺のペアはミリーネだった。ペアは自由に決めていいということだったためか、彼女が勝手に俺の名前を書いて提出したらしい。


「いいじゃん別にー、今の所一番親しいのはデュークなんだし、同じ敵を倒したんだからさー」


 まぁいいか。知っている奴と組めればそれはそれで気が楽になるし。

 俺達の出番は十四番目だった。かなり早い方である。


 テストの内容をもう一度おさらいしておこう。実技テストはヴァイス・トイフェルの形をした人形が闘技場に放たれる。同じく闘技場にいる生徒二人は動くヴァイス・トイフェルの人形と戦って制限時間内に武器を頭部に突き刺せれば勝ちになる。

 一見簡単そうに見えるが、実はこれが意外と難しい。まず人形は動き回るので頭部にたどり着けない。たとえ頭部にたどり着いたとしても、そこまでの素早さや体力も得点に入れられるので、ただたどり着くだけじゃ意味がないのである。

 よってこのテストで点をあまり貰えない方が珍しくないのである。


 俺が持っている武器は刀。でも、破邪の利剣ではない。一般的なものである。ミリーネはヴァイス・トイフェルと戦った時に使った槍を構えていた。するとミリーネが真剣な顔で俺に言った。


「テストの時、あたしの言う通りに動いて。ヴァイス・トイフェルの倒し方を知っているから」


「……分かった。頼りにしてるよ」


 そう言うと、ミリーネは槍を持ってどこかへ行った。彼女はふざけているようで案外考えているのかな、そう思った。



「それでは十四番の方、お願いします」


「来たね……」


「うん……来た」


 俺達は立ち上がり、闘技場の方へと急ぐ。階段を上がり、表舞台へと出た。観客席にはたくさんの生徒がいる。………クレアとアークを見つけた。二人共心配そうに見つめている。俺達は大丈夫だ。絶対に。

 向こうの檻の鍵開き、何かが出てくる。ヴァイス・トイフェルの人形だ。


「わぁ、本物みたいだ」


 ミリーネが驚いたように言った。確かにその通りだ。細かい模様まで上手く再現されている。これなら倒し甲斐がありそうだ。

 ――途端に寒気がした。ヴァイス・トイフェルに怖がっていてどうする。落ち着け、落ち着くんだ。


「それでは構えて、スリー、ツー、ワン、GO!」


 今、開始の合図が鳴った。ヴァイス・トイフェルの人形は一気に俺達へと迫ってきた……。

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