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白銀のヴァールハイト  作者: A86
2章 対白魔騎士団
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第28話 侵入

まずい……スケジュールではもっと話が進んでいるのに。

大分遅れています、今。

 古いそして、暗い。それが、最初の第一印象だった。でも、中は綺麗に片付いている。長年使われてなさそうな机の上も埃がのっていない。壁には、絵が何枚も飾られてあった。そして、壁掛け時計が九時三分で止まっていた。まるで、この部屋の主人を待っているかのように……。


「誰の部屋だったのかしら、ここ」


「さあな。それより怪しい所がないか探そう」


 俺達は早速、この部屋を探索した。

 正直言って、この部屋にヴァイス・トイフェルに関連するものはないだろうと入った時に思った。この部屋はもっと他の理由で禁止させられている気がしたのだ。そうじゃなければ、こんなに綺麗なまま保っているのは不自然にも思えてくる。


「ねぇ〜本当に見つかるの?」


 ミリーネがさっそく根を上げた。まだ調べ始めて五分もたっていない頃に、である。でも、その通りかもしれない。やっぱり別の場所を探そ――


「ん……」


 思わず声が出た。この部屋にある絵、暗くてよく見えないが一枚だけ……絵が斜めに少しずれているのがある。その隙間に小さな穴も。まるで、絵で穴を隠しているかのようだった。

ほぼ反射的に絵をずらしてみた。やはり小さな穴が隠されていた。それに、何かがある……。


「鍵……」


 そう、とても小さな小さな鍵だ。もしかして、これは――。


「どうしたんだデューク?」


「……いや、なんでもない。それよりすぐここを出よう。もう調べる所はないと思うし」


「?分かった。皆に伝えるよ」


 俺達は音が出ないようにこっそりと部屋を出た。あの部屋で分かったことは昔、この部屋に誰か持ち主がいたことと、鍵のことの二つだけだ。

 この鍵は一体何の鍵なんだろう。でも、二つ確信はできていないが、試す価値がある場所がある。


「何も分からなかったね。行って損しちゃった」


 ――その時、まばゆい光が俺達を照らした。懐中電灯の光である。目が眩んだが、慣れてくると懐中電灯の所有者が分かった。ダニエル先生だった……。


「こんな時間になにをしている?」


「えっと……」


「まったく……」


 俺達は結局、見つかってしまった。









◇◇◇


 カレン先生の部屋に連れて行かれた俺達は、そこでこっ酷く怒られていた。


「あなた達は規則を破った、その事実は変わらないわ。罰則は受けてもらう覚悟はあるのでしょうね?」


 カレン先生の容赦ない口調が俺達に迫る。


「はい、あります」


「あと一週間でテストがあるのだから今後こういうことがないように。あと、これが罰則の日時だから。ダニエル先生、生徒を寮へお願いします」


 その後、俺達はダニエル先生の導きで寮へと向かっていた。皆の顔はとても暗かった。もちろん、俺も同じだけれども……。罰則を受けるだなんて思ってもいなかったんだろう。


「先生、罰則を受ければやっぱり黒の騎士団に入るのは難しくなるんでしょうか?」


 クレアがダニエル先生にたずねた。その様子だとクレアも黒の騎士団を狙っているようだ。


「いやそんなことはない。私は黒の騎士団に入っているが罰則は五回以上も受けていたぞ。もう二度とやらないという気持ちがあれば大丈夫だ」


「そ、そうですか……」


 幾分か歩いて、もうここからは大丈夫だろうと先生に言われて俺達は先生と別れた。別れた途端ミリーネが大きなため息をつく。


「あーあ、ばれちゃったなぁ。まあでも、黒の騎士団に入れる可能性は低くなったわけじゃないから良かった良かった」


「えっ、お前黒の騎士団を目指しているのか?」


「ポーンを狙っているの。それに……」


「それに?」


「ううんなんでもない。それじゃあ二人共おやすみ〜」


「おやすみなさい」


 クレアとミリーネは女子寮へと戻っていった。ミリーネは何か言おうとしていたけど教えてくれなかった……。


 俺とアークも寮に戻った。アークは先に眠ってしまったが、俺は一つ目に試したいことがあった。

 俺は謂れ因縁の書を取り出し、部屋で見つけた鍵を合わせてみた。……合わない。やっぱりこの鍵じゃないのか。じゃあ、この鍵は……。


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