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白銀のヴァールハイト  作者: A86
2章 対白魔騎士団
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第25話 期末テスト

 約三ヶ月たった。テストもあと一週間ほどに迫っていた。勉強のスピードもそれなりに速くなり、ついていくのが少し大変になってくる。それでも、予習と復習をずっと行っていたおかげで置いていかれることなどは一切なかった。そして現在――


「もう、三ヶ月もだったのか……」


「お前はどうだ。勉強進んでいるのか?」


「もちろん、僕はキングの称号を狙っているからね」


 季節は短い夏、もう七月に入ったというのに気温は二十五度も超えていない。蝉の声は当分先だ。

 登校の時間、俺とアークはテスト勉強について話している。アークは黒の騎士団でのキングの称号を狙っていた。その方が親を見返せるからだ、と。俺も……本格的に黒の騎士団のナイトの称号を狙わないと。

 騎士団内では、ヴァイス・トイフェルの浸入の経緯を追った結果、一つの結論に至った。それは、誰かがヴァイス・トイフェルを招き入れた……つまり、この騎士団のどこかに裏切り者が存在しているということだ。

 その事が一週間前に『裏切り者』という単語は使わなかったが、この騎士団の中にいる危険人物に注意するよう警告された。他の生徒は半分が笑い、半分が怯えていた気がする。俺も最初はよく分からなかったが、アークが図書室での襲撃を指しているんじゃないかと言われたときにやっと気づいた。騎士団に裏切り者がいる。それだけで落ち着かない日々が続いていた。


「ねぇ、デューク。昨日、先生達の会話をたまたま聞いたんだけど……」


「……それで、何か分かったのか?」


「うん、その会話の中に『ヴァイス・トイフェルより邪悪な存在』って言葉があったんだ」


「ヴァイス・トイフェルより邪悪な存在?」


「そう、その言葉がずっと頭を離れられなくて……一体どんなものなんだって考えているんだよ。デュークハ何か思いつく?」


「うーん、特に無いなぁ」


 邪悪な存在……聞いたこともないが、ヴァイス・トイフェルよりじゃないだろう、流石に。だけど、確かにそれは気になる。それが、先生の言葉から発せられたのならなおさらだと思った。


「それは置いといて今はテストのことを考えようぜ。あと一週間程しかないんだし……」


 テストは二つに分かれていた。まず最初に普通の定期考査も含めて筆記テストが四日も行われる。それから三日たった後に実技のテストが行われる予定だ。実技ではヴァイス・トイフェルに見立てた人形を相手にこれまで学んできたことを発揮させる内容になっている。

 しかし、六つの称号では重視をするテストは違う。例えば、キングとビショップは、実技テストは行わず筆記テストだけだ。その代わり、ナイトを含め四つの称号は筆記より実技を優先している。つまり俺は筆記で良い成績を取りながら、実技で一位を取らなければ黒の騎士団に入れないのだ。それは、かなり狭い門である。なぜなら、文武両道でいなければならないのだから。

 そうこうしている内に校内に入っていた。講堂を横切れば俺達の教室に着く。

 


ところが、講堂で何やら人だかりができていた。なにやらざわめいているし、それに……妙に寒い。


「あっ、クレア何があったの?」


「そ、それが……」


 クレアが怯えながら講堂を見る。俺達も講堂を覗いてみた。すると――


「……何だよ、これ」


 見ると講堂が凍りついていた。全体的ではない。席も破壊されている。まるで何かが通ったような跡だ。一体なぜこんなことに?


「そこを退いてもらおう」


 いつの間にか学園長が立っていた。学園長は講堂の様子を見て、凍りついた部分を触る。すると何か気づいたような顔をした。


「デューク。これって……」


「落ち着くがいい。ここにいる生徒は何事もない顔で、自分達の教室へと向かうのだ。ここは我々が封鎖をしておく。決して深入りをする事がないように」


 俺達三人以外の生徒は誰一人暗い顔をしていなかった。もちろん、怖がっている奴はいる。でも……俺達とは違う。「あれは何なんだろう?」、「ヴァイス・トイフェルじゃね?」と話している奴もいる。俺の脳内では今の騒動で一つの結論にたどり着いた。































































 ……騎士団のどこかにヴァイス・トイフェルがまだ……潜んでいる。

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