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白銀のヴァールハイト  作者: A86
2章 対白魔騎士団
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第19話 授業②

 翌日、今日はナイトの講義がある。実際の訓練は来週から始まることになっていた。


「黒の騎士団?」


「そう、三ヶ月後に試験があるでしょ。その試験は、生徒を単に減らすだけじゃないんだ。それぞれ六つの称号で成績優秀だった人に黒の騎士団というまた違った称号をもらえるんだ。そうすれば、並の生徒ができない体験を味わえるんだよ。もちろん、今後の成績で順位が変わることもあるからその称号はあくまでも仮だけどね。最終的には三年の十二月に決まるんだ」


 黒の騎士団かぁ……、まずはそこから目指すのが先決だな。……なれるかどうかは別として。


 ナイトの講義は俺にとってとても重要な科目だ。ナイトは前回言ったように近接な武器を使う。そのためヴァイス・トイフェルの戦いではリスクを負うが、一番効果を発揮する。

 後に分かったことだが、ヴァイス・トイフェルは熱が毒であり、数分いや数秒触れているとすぐ死んでしまう。そのため、対白魔騎士団では主に摩擦熱が発生しやすい武器を使うようにしている。

 だから、ナイトの称号は他の称号より少し重要視されている。

 教師は初日に俺達を対白魔騎士団へと連れて行ってくれたダニエル先生だった。


「おはよう諸君、知っている人もいるかもしれないが私の名前はダニエル・マッカンだ。今日から三ヶ月間の間は受講を受けてもらう。称号が与えられた後は、ナイトを持つ奴だけくればいいからな。では、授業を始めよう。教科書三ページを開くんだ」


 自分にとって重要な授業であっても、やっぱり授業を受けていると、少し疲れる。それでも、一切寝ることなく授業を受けた(まぁ、当たり前なんだけど……)。


「はいはいはーい先生、一つ質問がありまーす」


「お前の名前は、あとは『はい』は一回な」


「ミリーネ・アスタフェイです。先生、ナイトってどうして近接の武器しか持っちゃいけないんですか?普通に重火器つかえばいいじゃないですか」


「重火器はヴァイス・トイフェルにはあまり効かない。それに、ルークは狙撃でヴァイス・トイフェルの動きを止め、ナイトがとどめを刺す、そういう仕組みになっているんだ。予習しとけば分かることだぞミリーネ」


「はーい先生」


 妙にテンションが高いな。精神的に少し幼さを感じる。どうやら人間の女の子のようだ。青い目に髪は腰まで伸びている長い金髪である。はっきり言って、派手だ。


 その後、授業は何事も無く淡々と進んでいった。









◇◇◇


「やっっっと終わった……」


「確かにさっきの授業の淡々と進み過ぎて少し堪えたよね」


 俺達は教室に戻ろうとしている途中だった。


「デュークはやっぱり黒の騎士団を目指しているの?」


「もちろん。さっきの授業でも話していたけど、黒の騎士団でしか体験できないことも知りたいし、目標があるから余計頑張れるからな。それに、黒のナイトっていう響きもかっこいいしーー」


………………………………………………え。


 偶然は突然現れる。それは、意識してないときこそ特にだ。

 前から歩いてくる少女、そいつは見たことがあった。名前しかまだ知っていなかったが、これで確信した。



 ……目の前からやってくるのは、クレアだった。


 昔と違っているのは、眼鏡を掛けているのと髪を三つ編みしているところだけだ。それ以外雰囲気を含めて、さほど変わっていない。十二年間、一緒にいたから間違いないだろう。

 クレアは下を向いていたからか、俺達のことは気付かずに素通りしていった。いや、素通りせざるを得なかったかもしれない。


「デューク?」


 あの病院での……あの言葉が頭に響く。


『あなたが死ねばよかったのに!』


 無理だ。どう対面すればいいのか分からない……。いっその事、無視をし続けたい。全てなかったことにしたい。でも、それは許されない気がした。それじゃあこの三年間はなんだったんだ?謂れ因縁の書の謎を解くのと同時にクレアに謝ろうと決意した自分は何だったんだ?それで言い訳がない。

 結局、俺は怖いんだな。臆病なんだ。関係がさらに悪化するかもしれないことを恐れているんだ。弱いな、本当に……。


「大丈夫、デューク?」


 アークの言葉で現実に戻される。あれっ、今なにしようとしてたんだっけ?


「気分が悪そうだし、医務室にいったほうがーー」


「いや、大丈夫。もう平気だから」


 何事もないように振る舞うけれど、心の中は決して晴々としていない。それは、放課後になっても晴れることはなかった……。


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