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白銀のヴァールハイト  作者: A86
2章 対白魔騎士団
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第13話 刀

「もうこの席しか空いてないな」


 俺は、誰も座っていない席を選んだ。今乗っている電車は対白魔騎士団専用であり、磁気で動いている。そのため他の電車より速いし、この電車にはこれから目指す対白魔騎士団の生徒しか乗っていない。もちろん俺と同じ、今年から入る生徒もいる。

 荷物はすでに貨物列車に積まれているが、一つだけ……預けられなかった物があった。


「さすがにこれだけはまずいよな……」


 今までずっと肩にかけていたものを外す。それは……刀だ。袋から取り出し、鞘を手に取ってみる。全体的に黒くて、二匹の龍の紋様が刻み込まれていた。

 外に誰もいないことを確認して、刀を抜いてみる。鞘とは違って白金でできているようだった。


「何で、これが俺の所に来たんだ……?」









◇◇◇


 今から3ヶ月前、俺は受験勉強で頑張っていた。

 対白魔騎士団も一応学校である。偏差値は61と高く、そう簡単に入れさせてもらえない。もっとも、入った後が一番大変なんだけど……。

 

 俺が部屋で勉強していたときに配達員がやってきた。両親が不在の間だったために俺が荷物を受け取るはめになった。

 細長い木箱で紐で縛られている、そんな感じだ。ものすごく重かったし、リビングに運ぶのがとても大変だったことも覚えている。木箱が重すぎるんじゃないか?とも思った。

 紐をほどき、木箱のふたを開ける。すると、中には黒くてまた細長い袋があった。……手紙付きで。

 送り主は分からなかった。手紙にも、木箱にも書いてなかったのだ。宛先は間違いなく家だった。だが、手紙の宛名にはこう書いてあった。


『デューク・フライハイトへ』


 背筋が凍った。これは両親宛じゃない。自分にだ!と思った。衝動的に手紙の封を開け、中身を取り出す。


『昔ながらの友人へ

 君に預かっていたものを返すときが来た。と言っても君は覚えていないだろうがね。

 正しいことに使うように、決して間違ったことに使ってはいけない。こいつは人を選ぶ。今の持ち主は君だが、もし下手をすれば持ち主が移り変わってしまうかもしれないからね。

 ……検討を祈る。

                                       裏切りの亡者より』


 手紙にはこう書いてあった。裏切りの亡者?……誰?というかこれ、俺のだったの!?次々と疑問と驚きが湧き出てくる。

 木箱から袋を掴み、中身を出してみる。一見してみてみると……刀?のようだった。でも、本物かどうか分からない。試しの鞘を抜いてみた。予想もしていたけど、やはり本物だった。かなり綺麗だし、切れ味も良さそうだ。それでも、やっぱり分からない。どうして刀が俺に……?


 両親が二人とも帰ってきて、俺は刀や手紙のことを全て話した。

 

「一体誰が……」


「分からないから聞いているんだよ。二人共何か心当たりない?」

 

 二人はしばらくの間、考え込んでいた。突然、父さんが誰かを思いついた感じだった。


「誰か思いついた?」


「いや、まさかな……。すまない、何でもない」


 結局、送り主が分からないまま俺は刀をもらうことになった。そういえば父さんは一体誰を思いついたんだろう?後で聞いたら、


「いや、何でもないよ」


 と他にも言いくるめられて聞き出すことが出来なかった。あの知ったかぶりな反応に少し腹が立ってしまった。









◇◇◇


 この刀は一体なんなんだろう。俺は刀身を鞘にしまった。明らかに普通の物とは思えないのだ。手紙の内容からして……、何か特別な力でもあるのだろうか?

 取り敢えずそれは後にしておこう。俺は窓の景色を眺めた。磁気の力が景色を瞬く間に変えていく。

 疑問はたくさんあった。でも、今は……何も考えず、これからのことを考えよう。対白魔騎士団の試験に合格したとはいえ、まだ気を抜けられないのだから……。

 少し寝よう……そう思った時、


「ねぇ、君……」


 突如、誰かに声をかけられた。



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