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白銀のヴァールハイト  作者: A86
4章 棺の中の獣と華麗な少女
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第98話 一瞬の隙

「大丈夫か?」


「っ……!大丈夫なわけ、ないじゃん!」


 ミリーネは槍で相手の剣をおさえながら言った。俺は真横から刀を突き刺す。相手は機械か何かでできているなら、躊躇う必要はない。相手は俺の攻撃に気づき、防ごうとする。ミリーネはその隙を狙って、槍を心臓に突き刺した。バチバチッと音がして、倒れた。


「や……やった!」


 俺は、アークとクレアの方を見た。どうやら向こうも終わったらしい。あとは、ミロワールだけだ。

シャーランはまだミロワールと戦っていた。弓矢はやめて二振りの剣に変わっており、近接戦を行っていた。一方ミロワールは、持っている杖だけで戦い、余裕の表情だった。


「腕は上げてるようね、シャーラン。でも、わたくしには勝てませんわ」


「……」


 シャーランは何も喋らない。あれ?この構図どこかで見たような……。昔……夢とかで……。夢……。そうだ!四年前、リックが死んだ直後に見た夢に出てきた白髪の少女にそっくりじゃないか!どうりでどこかで見たと思ったんだ。シャーランも、夢に出てきたマリアという女性と似ているし。

 少しずつ、鮮明に思い出してくる。夢で白髪の少女と、今そこにいるミロワールの姿が合致した。同じだ……。二人は同一人物としか思えない。夢だけの産物じゃなかったのか?あの夢は何なんだ。まさか……あの夢は本当に起きた出来事?遠いどこかで起きた出来事を俺が夢として見たのか?そう思えてきた。


「シャーラン!」


 隣でクレアが叫ぶ。その声でミロワールはこっちを向いた。


「もう倒したの?案外強いのね。でも……」


 突然、俺の周りが暗くなった。影のようだが……。


「デューク後ろ!」


 俺は振り返った。するとそこには、ローブを羽織った巨大な人物が斧を俺に向かって振り下ろそうとしていた。俺は間一髪で横に避ける。ドンッという音が聞こえ、俺がいた場所は斧によって床が少しえぐれていた。


「もっとわたくしを楽しませてちょうだい。そろそろ、この子とも飽きてきたしね」


 そう言って、ミロワールは足を一気に振り上げて、シャーランの片方の剣を弾き飛ばした。それと同時に杖で思いっきりシャーランのみぞおちを突く。


「うっ……」


 その瞬間にミロワールはシャーランの顎を蹴り上げた。シャーランはなす術もなく後ろに倒れる。


「次のわたくしの相手は、あなた達よ」


 ミロワールはアークとミリーネに向かっていく。俺とクレアで、この巨大なローブの人を倒さなければならなくなった。

 また斧を振り上げてくる。そして、振り下ろしてきた。俺は刀で軌道を少しずらそうと斧の攻撃を受け止めた。と思いきや、あまりの衝撃で斧の攻撃を受け止めることが出来ず、というより刀が保たずに、折れてしまったのだ。まずい。まずいまずいまずい!刀が折れた……。幸い破邪の利剣じゃなかったからいいけれど、どうする。戦う手段がない。

 俺は後ろを見た。クレアが拳銃をローブの人に構えている。


「デューク!頭を下げて!」


 俺は言われる通りにした。クレアは数発、発砲する。けれど効かない。機械でできているからなのか、弾き飛ばしてしまうのだ。拳銃は使えない。残っているのは彼女が持ってる爆弾……。でも、この狭いところで爆発させるとなると、俺達にも巻き込まれかねない。


 そう考えている内にまた来た!俺は後ろに下がり、距離をとる。相手は動きは少し鈍い。攻撃を避けている間に考えるんだ。この状況をどうやって打破するか。


 その時、ローブの人が大ジャンプをした。俺を飛び越え、後ろにいるクレアを狙っている。今にも振り下ろそうとしていた。俺は何も考えずに、真っ先にクレアの方へ向かった。


「やめろー!」


 俺はクレアを突き飛ばし、そのまま……。背中に激痛が走った。息ができなくなる。俺は倒れ、身動きできなくなった。背中が痛い。斧で一気に斬られたんだ。血が流れているのが分かる。クレアの俺の元へ駆け寄ってきた。


「デューク!デューク!!」


 クレアは俺の顔を見ながら呼びかける。痛くて喋れない。ぐっ……うっ……。


「どうやら、わたくしの勝ちのようね」


 ミロワールがそう言った。ここからだと彼女が視界に入っている。アークとミリーネも倒れていた。生きているけれど、怪我をしているようだ。


「最後は眼鏡のあなただけよ」


 ローブの人が斧をまた振り上げているのが分かる。クレアの目は恐怖で埋め尽くされていた。やめろ、やめろやめろ!本当に死を感じた。この展望台で、俺は大量出血で死ぬのかもしれない。そう感じた。

 クレアの悲鳴が聞こえる。斧が、振り落とされる音が、する。


 ……。死んだのだろうか?俺は。そう思っていた時――

 巨大な爆発音と、呻く女性の声が聞こえた。女性の声と言ってもクレアの声ではなかった。これは、ミロワールの声だ。何だ?何が起きている?ガシャンと何かが倒れる音が近くでした。


「うぅ……一体何が?」


 ミロワールはそう言っている。斧の攻撃がやってこない。倒されたのか?クレアがやったのか?でもどうやって?


「緊急だわ。一時撤退よ」


 訳も分からないまま、ミロワールは煙幕を出した。煙が晴れると、彼女はいなくなっていた。本当に何が起きたんだ?なぜ彼女は撤退した?なぜローブの人が襲ってこない。うっ……頭も回らなくなってきた……。このままだと……気を失う。


「デューク!今治療するから!待って!」


 クレアが包帯や薬を取り出しているのが見える。視界が白くなってきた。そのまま俺は、状況を掴めないまま、気絶した。

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