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【EX】 THE World is Fabrication 1

少々長めのゴリ兄達の話その1。

この5話、6話を見なくても物語に支障はそこまでないかと思われます。


"この世界は偽りによって成り立ち、真は世界に存在しない”


この言葉を聞いた人間の大半は顔をしかめて俺に問うだろう―――


”お前は頭がイっているのではないか”と。


しかしこれは紛れもない事実で、この世界は虚でできている。


なぜなら――――




「兄貴! リーダー達は? 」


手前にいた俺達の中では、比較的に若く

そして脱色した髪に耳にピアス、鼻にリングを着けた男が俺に話しかけてくる。


「なんだジャック話しかけるときはもう少し敬意を払えと言っているだろう」


ジャック・ミストリエ、俺達『レジステアンズ』の『フロストハイぺリオン』方面の中では

ノアの次に若い男だ。今回はアジトの警備、もとい落選組としてアジトに居た為

難を逃れていたようだ。ついでに言うと見た目が正直チャラチャラしていて俺は、あまり好きではない。

俺達は決してチンピラではない―――

例え見た目がそれっぽい奴がいるにしてもだ。

つまり目の前にいる俗にいうチンピラファッションの男

彼もまた、それなりの良心と使命を果たすため此処にいる事にはもちろん変わりはない。


「リオン達は俺たちを逃がす為に囮になった、すでに奴らにつかまっていると考えた方がいいだろう」


リオン・スプリングス―――

レジステアンズFH方面の部隊長で、レジステアンズ数少ない頭が切れる人物だった。

レジステアンズというむさくるしい男の巣窟にいたノアを、ちょくちょく気遣っていて

『クリスタル・ストレージ』の最低限の使い方を教えたり身の回りの世話もよくしていた。

その際に歌や楽器の演奏,作詞作曲を教えたりもしていたようだ。

そのおかげでノアも今や立派な部隊の一員となっているわけだが。

しかしフロストハイぺリオン首都ではほかの都市と違い警備の量も質も違っていたため

ノアの搖動も十分に働かず作戦は失敗し、仲間を逃がすため自らが真っ先に捕まった男でもある。

つまり今、俺達が果たすべき最優先の課題は彼の救出にあるわけだ。


「兄貴! リーダーを助ける策はあるんすか?! 」


目の前の馬鹿面が俺に不安そうな顔をして聞いてくる。


「ある程度は考えてあるが、成功させるのはかなり難しい事だろう」


「他の皆に話は?」


「連絡が取れた者には伝えている、お前のようにアジト待機の人間には今からだ。

 今から話そう。」


俺は口を大きく開けまるで業務用掃除機のような吸引力、いやそこまではいかないが

大きく肺に空気を取り込む、そして――――


「全員集合――――――――――!!!!」



アジトが一瞬震えたような気がするがそれほど俺の声は大きいものだったはずだ、

皆が集まってきた。そして集まってきたのを確認し言葉を続ける――


「ほとんどの者は知っていると思うが、今回の作戦は失敗した! 」


周りがざわつく勿論知っている者のが多いはずだが、大半は捕まり

此処に残っているのはアジトで待機していたものが大半だ、

街から逃れてきたものがやはり少ない様で、俺の一言で相当ざわついている。


「聞け!! 」

「俺達が今やるべきことを思い出せ!! ここで反省会をしている余裕などない!!

 明日捕まった仲間がこの付近を通り――そして処刑される。

 だが!! それを黙って見守るような俺達か?! 否! 違う!!

 俺達は家族を見捨てたりはしない!!

 その事を胸に刻み明日、救出作戦を実施する!

 その為には作戦が必要だ。しかし! 俺はリオンではない!

 俺だけでは作戦を立てるのは不可能だ!

 だが、お前達がいればそれは可能となる!

 そのために俺に手を貸してくれ! 」


話を終えると辺りが静寂に包まれていることに気付いた―――

そして少し間をあけて


「―兄貴! 当たり前だろ!」「失敗なんてなんだよ! 1回くらいあるさ!」

「今までは運が良かっただけだ!」「リーダーに目にもの見せてやろうぜ!」


まるでトロンボーンやバスなどの音の低い楽器で

オーケストラを奏でたかのような錯覚を起こさせる様な野郎どもの声が響く

これなら安心だ。


「――――では明日皆で戻るため、作戦を考えよう」


俺はストレージ内にある、MAPアイコンをクリックする。


目の前の少し大きめな正方形型の机の上に青白い3Dホログラムが投影される。


2D面で見る地図も、もちろん使えなくはない―――しいて言うなら方向音痴な奴が道を調べるには

丁度いいだろう。だが俺達は道が解らなくて地図を開いたわけではない。

俯瞰図では周辺い広がる細かな地形を読み取るのは難しいのだ。

その反面3Dで映されるこのホログラムは、細かな地形を読み取りやすく崖下の窪みも分かりやすく便利だ。

それに2Dの地図に表記されている地図表記などを読み取れない人間に説明するのも楽なのが素晴らしい。




周辺の地形はほとんどが乾燥していて草木が生えておらずメサやビュートなどの地形が目立つ

目の前に映ったホログラムを確認する。


「相手はこのシティから10km離れているこの施設、通称『処刑場』に

 明日俺たちの家族を連れていくつもりだ。

 俺たちは彼らの移動中に奇襲を掛ける、

 場所はこの丁度 両端を大きな崖が囲んでいるこの場所だ」


俺が予め確認しておいた位置を伝える。


「敵はここを注意して進むのでは?」


目の前の男―――ゲリー・ドレミアンが言う。


「もちろんそうなるはずだ、その為に

 敵の注意をそらすトラップをいくつか張るつもりだ」


「それでは敵の警戒心を高めてしまう可能性が」


その隣の男――ジョン・ブラウスが俺に問う。


「もちろんトラップを発動させるタイミングによってはそうなる。

 だがうまく使えば相手が警戒を仕切る前に仕留めることも可能かもしれない」


「―――だがゴンザレス、そんな事をすれば我々の家族の命も危うくなるぞ」


俺の名前を言う老年の男――ゼン・グリードが先ほどまで遠くで黙っていただけだと思えば

突然発言した。


「それは…‥」


「トラップを仕掛けるとしても

 戦闘に入る前に使うものではなく

 戦闘中に発動させれるタイプなのどが

 いいと思うぞ」


さすがに“ここ”にきて既に30年以上いるだけあって説得力があった。


「ではそうしましょう」


俺はその提案を快く受けた。



「ですが、幾ら戦闘中に使うものだとしても直前に設置するのでは時間が足りない

 今から設置しに行きましょう」


「ふむ―――それもよかろう、ではゴンザレス君と私とあと二人ほどで行こうか」


ゼンと俺が行くのは確定しているようだ。


「ウェインとメイス着いてこい」


俺は現在残ってる中でも体力がそれなりに自信があるであろう2人を呼ぶ


「了解です兄貴」


「了解だ」


2人が答える。


「では設置しに行こう」


  ×   ×    ×


俺は後ろにゼンを載せ小型のモーターバイクを走らせ

第一設置ポイントに向かう。

普段バイクなど使わないが、偵察や緊急の時にはそれなりに重宝する便利な乗り物だ。


「爺さん力尽きて落ちたりしないでくれよ」


すでに10分間以上ゼンは後ろに乗っている、

だがその間会話の【か】の字もなかったので

少々心配になって話しかける。


「なんだわしがそんなに、か弱い老人に見えるのかおぬしは」

「そういうわけではないが」


ゼンの体は正直その年齢とは裏腹に鍛え抜かれたままの肉体を維持したままである。

ここまで筋力を維持し続けるのも中々常人ができることでなく

彼の存在感と圧倒的貫録を裏ずけている。


「しかし、今回のような失敗は久しぶりじゃのう」

「前にもあったのか?」

「ああ、お主等がちょうど来る前までの出来事じゃ」

「その時はどうなったんだ?」


「見捨てたさ」

「なっ!見捨てたのか!」


「そうだ、態々犠牲者を増やすのは得策でないと、当時のリーダーが判断を下したのじゃ。

 今回もそうするのかと思ったがお主は、仲間が大切なのじゃな」

「仲間じゃない家族だ! それに犠牲者は増やすつもりはない」


もちろん一人も――はさすがに不可能だとは思っている。

だがその犠牲にいあう分だけの成功はしてみせるつもりだ。


「熱いのう…しかしそういうのも嫌いではない、

 もし犠牲者のが上回ることがあってもそれは

 お主等が選んだことじゃ誰も攻めはせん」


たしかに今回はいつも作戦を考えるリオンがいない

それが今回の救出作戦がどれほどキツイものかを物語っているのは至極当然だ。

だが、それでも俺は助け出したい。


「そうか…にしてもこういう夜は冷えるな」

「じゃが夜は気持ちがいい、逆に日向はわしらにはきつ過ぎるよ」

「確かに“ここ”にきて15年経ったのに未だに昼のあの眩しさには慣れないな」

「わしは彼これ30年以上ここにおるが、やはり慣れぬ」


「爺さん30年もいたのか」


俺は今まであの中でもそれなりの古参メンバーのつもりだったが、

それを遥かに超える時間“ここ”にいる人間がいるとは予想もしなかった。


「そうじゃよ、わしから見ればお主等はジャックやノアと対して変わらない

 子供のような物じゃ」


「そういえば俺たちは、その前回の失敗とやらの補填で“ここ”に呼ばれたのは

 解るんだがなぜ10年前、ノアみたいな子供達が来ることになったんだ?」


「そうじゃな、当時“あちら”側から伝えられたのは

 行き場のなくなった子供達を“あちら”側で面倒見きれなくなったから

 とかそんなところだったはずじゃ」


ここで子供達と表現しているのは、当時は数人の子供がいたからである。


そう10年前―――まだ俺がただの雑用係でしかなかった頃の話だ。

当時のリーダーがある日突然、数人の子供を連れて基地に帰ってきたのだ。

子供は男3人、女2人の計5人で彼らの目に光がなかったのをよく覚えている。

連れてきた初日彼らは誰一人として口を開こうとしなかった。

そんな彼らにリーダーはずっとやさしい言葉で話しかけていた。

次の日、彼らの中でも一番年上だった少年が話口を開き

その日を境に子供達は、徐々に俺達に心を開き始め喋るようになっていった。

彼らが来て1か月が経った頃、5人のうち4人は

俺達の手伝いなども進んでやるようになっていた。

だけれど一番年下の少女―――ノアだけは子供達には口を開いていたが

俺達には一切口も開かずただ一人でジッとしているだけだった。

そんなこんなでノアの事など俺達の大半は忘れかけていた。


皮肉な事にそれが、あの日ノアと他の子供達の運命を分けてしまった。


ある日、俺達は子供達を外の偵察に同行させた

偵察といっても、当時の基地周辺の森の中を

モーターバイクで軽く見回る程度のものだったのだ。

その為大きなエンジン音を気にせず

レースゲームをするかのような無茶な運転をしていた。

しかし俺達は基地をここにおいてまだ日が浅かった為知らなかった。

その時期は大型の原生動物の繁殖時期だったのだ。

突如目の前を先導していた仲間のバイクが何かの手によって

横に大きく吹き飛んだ。

そして木に強く当たり、車体の破片とエンジンの爆発による火の玉がでて、

乗っていた男が吹き飛んだ。

何事かと思い俺たちはバイクを止め素早く物陰に飛び込み息をひそめた。

そして木の陰からそっと襲ってきた何かの方を見た――


その時、俺は言葉を失った―――モンスターだ。

一目見た瞬間俺は死を薄々覚悟した。

なんせ動物園や動物図鑑に載っているようなものではなく、

全く未知の造形をした謎の生き物だ。

縦に10M近くあり横は3Mほどの大きさに

以上に長く太い腕、その先にはまるでロングソードのような爪が両手に3本ずつ、

そして顔には巨大な複眼が3つが木漏れ日に当たり不気味に光っているのだから…


「ひっ」


後ろのバイクに乗っていた子供が小さく悲鳴を上げた。


それが聞こえたのか、そのモンスターの顔が子供の隠れている方に向く。

そしてゆっくりと其処に向かって長い手を伸ばした始めたのだ。


―――その刹那その場の静寂を破るような激しい炸裂音が俺達の

鼓膜を震わせた。


「こっちだ化け物!! 」


隊列の一番後ろにいた男が、携行していたグレネードランチャーを放った。

それは化け物の顔に直撃した。

――けれどもそれは見た目だけでなく、すべてが化け物だった…

直撃したはずの頭は確かに表面の体毛燃え尽きていたが

本体には全くのダメージが見られない。


「はっ?!――」


男がそのことを完全に把握しきるその前に

彼の体は宙に吹き飛びそして―――化け物の長い爪でたたき斬られる。

そして男は中途半端に切り裂かれず残った肉塊となり地面に落ちていった。


それを見ていた一人の少女が発狂した―――

そして化け物はすぐさまそちらに向き直した。

そして少女と、一緒にいた男と供に、先ほどの男と同じように宙に飛ばし――そして絶命させた。


「駄目だっ!! 逃げろ!! 」


今度は別の場所で子供でなく大人が発狂した、そしてバイクに乗り込もうと走る。

無論この男はモンスターの餌食となった。


残ったのは俺と俺のバイクに乗っていた子供たちの中で最年長の少年、

そして隣にいる少年と大人、それと先ほどバイクに乗ろうとした奴と

一緒にいた少年だけだ。

俺達はじっとあの化け物が去るまで息をひそめ続けた。


何十分経っただろうか、あの化け物の息が聞こえなくなった――

周囲を確認し、俺たちはバイクではなく徒歩で移動することにした。

バイクを使えば確かに短い距離で、ものの10分もしないでつくはずの

基地だったが、追ってくる化け物に注意をしながら歩いていたため

数時間たっても全くその影は見えなかった。


「喉が渇いた…」


俺の後ろを歩いていた少年が呟く、

無論こんな事になるとは思っていなかった俺達は

飲み物は最低限しか持っておらず

食料も小腹がすいた時に食べようと思い持ってきた、

一口サイズの携帯食を数個しか持っておらず

それは既に尽きていた。


「もう少しだ頑張れ」


俺はそう呟き再度歩を進めた。


俺達とは違って元々体力がなかった少年たちの

体力が次第になくなっていきペースはさらに落ちた。


「くそっ、なんだってこんなことに」


後ろの男がぼやく


「情けない口を叩くな俺達がしっかりして無ければ帰れんぞ」

俺は男の背中に喝をいれ、さらに歩いていく。


そしてさらに数十分後――基地の入り口が見えてきた。


「見えてきたぞ! 」


後ろの男が大声を発し手を上げて走っていく。


だが此処にきて―――奴が現れた。

大きな複眼が夜の闇の中から赤く光ってこちらを睨む


「奴だ!! 基地まで一気に走れえ!! 」


俺は声を上げ両手に一人ずつ子供を掴み走った。


「糞ったれ! これでも食らえ! 」


目の前を走る男がショットガンを放つ

やはり奴には効果がなかった。


「ウグへッ――」


化け物の両腕の爪が男を串刺す。

そして化け物の両手が左右に一気に開かれる。

それと同時に男の胴体は真っ二つに裂け

斬れた場所から鮮血が飛び散り、男は破れたビニル袋の様に落ち

そして中の臓物はゼリーが落ちる音が少し低くなったような音を地面に響かせた。


「糞ったれ!! 俺達をそんなに殺したいのか化け物が! 」


俺は子供達を基地の裏口の方向に軽く押し投げる。

そして腕のケースに入ったクリスタルストレージから

レーザーライフルを取り出し、化け物に打ち込んだ。


銃身から飛び出た緑色の細長い光線は見事に怪物の頭に直撃した―――やはり奴は無傷。


「駄目か!」


…しかしよく見ると動きが止まっている。

先ほどまでとは違い怪物の動きが静止していたのだ。

今のうちに俺も逃げよう――そう思った瞬間だった。


勢いよく俺の腹を何かが突き抜ける――腹部から妙な温かさが染み出てくる。

その直後、冷たい空気が流れ込むような感覚が全身に伝わってきた。

そして俺はそのまま後ろに吹き飛び何か固いものに当たり意識を失った。


数日後俺は、基地の中の医療タンクの中で目を覚ました。

奇跡的に一命を取り留めたのだ。

だがあの時逃がした子供達は何処にもいなかったらしい、

多分だが化け物によって殺されたのだろう――

つまり俺があの偵察と呼ぶには余りに御座なりな任務からの

唯一の生還者なのだ。

一緒にいた仲間と子供達は全員死んだのだ。


そして現在俺はまだ生きていて。

あの日俺達が連れて行くのを忘れた少女―――ノアもまた生きている。


閑話休題



「それでもこんな危険なところに来る必要があったのでしょうか」

俺は再びゼンに問いかける。

「お主は過去のあの出来事について悔やんでいるようじゃが、

 起きてしまったことは仕方がなかろう」

「ですが――」

「あの後ノアに何度もあの森で殺してと僻まれたのが、まだ心にある様じゃな」

「はい…」

「たしかに非戦闘員で死ぬ為に来たわけじゃなく、生きる為に来た彼らだとしても

 同じ人じゃ――遅かれ早かれ人は死ぬ、例え死に方が大きく違うとしてもな。

 それに今ではノアだって生きることに前向きになってきたではないか、

 今から人を助けようというお主が今更、躊躇するなどみっともないぞ」

「すみません」

「謝るな謝る前に、前を見ろ」


ゼンの言葉が俺の心に響き渡る――そうだ前を見なくては

今はただ家族を助けるために。


「そろそろ設置ポイントじゃぞ」


目の前に目標地点が見える。

ここから設置ポイントまでは歩いていくしかない。バイクを脇に止め降りることにした。

目の前に巨大な石壁がそびえ立っている。

丁度ここは巨大なメサとビュートによって間に谷ができているのだ。

そして明日奴らはこの谷のど真ん中を通る。

そこに地雷を設置し足止めを図ろうってわけだ。

まず谷底の端にフリスビーを10枚ほど重ねたような、M31対車両地雷を埋める。

通常なら通り道に置くべきものだけれども、仲間の乗った車両に致命傷を与えるわけにはいかないので

セットでリモコン式のプラスチック爆弾とセットで置く。


「よし、あとはウェインとメイスが到着次第はじめましょう」


そういっていると後ろから微かにエンジン音が聞こえてきた。

後ろを振り向くとウェインとメイスの乗ったバイクが

俺の乗ったバイクの隣に滑り込むように停車し二人が降りてきた。


「兄貴到着しました」


「我々は何をすれば?」


なんとも頼もしい家族であり戦友となる男達だろう。

上に従順なのはいいが、少しは自分で考えてくれると助かるんだがな―――

それういえば最近導入した最新型のMVべグスタS4というバイクは非常にエンジン音が

小さくて助かる。

吸排気機構の弁をバルブというのだが

このバルブの開閉をしているのがカム機構で

カム山がバルブを押し下げるときに金属同士の接触がエンジン特有の音を出しているらしい。

その原因となっているところを改良したり、

エンジンを覆う素材を特別な仕様にして音を小さくしたのがS型エンジンという奴だ。

これのおかげで先ほども接近されるまで気づくことが出来な程音が小さくなっている。

そんなバイクへの関心はさておき目の前で突っ立ている男達に命令を下してやろう。


「まずこの谷の車両が通るであろう場所より少しずらした位置に地雷を撒け

 そしたらセットでC4を設置しておけ、設置ポイントは――」


ストレージのMAPアプリのマーカー機能を使い予めゼンに設定してもらったポイントを表示する。


「この赤いマーカーの場所に仕掛けろ、マーカー情報をそちらの端末にも送っておく」


ストレージのクラウド機能を使いウェインとメイスのMAPにも表示できるようにリンクをオンにする・


「了解です兄貴」


二人がそれを確認するとそのまま奥の方へ進んでいった。


「では我々も明日のために簡易的にここに銃座などを設置しましょう」


そうゼンに言い、ピックとロープを取り出す

この崖を掘りそこに銃座を置くのだ。

クライミングなどの経験はないが上ることに躊躇はなかった。

“俺は登ることができる”からだ。

ロープをくくりつけたピックを手ごろな高さにめり込ませる、

そして落ちないことを確認し登り始めた―――余裕だ。


「爺さん。ここら辺でいいか?」


10mほど登ったところで確認をとる。


「問題ないが、もう少し上にも作るといい」


「わかった」


ストレージ内のドリルアイコンをクリックする。

すると画面にXYZの座標データを入力する画面が現れる。

ここに削りたい数値を入れれば簡単にその空間を削り取ることができるのだ。


まず横長に削り取るそして奥に大きく空間を掘る、これで絶好の銃撃ポイントが完成する。

同様にそのさらに上30M付近にも似たようなものを作る。

作り終わったところで下に降り今度は横方向に移動し削りだしを始める。

それに続きゼンが軽々と壁を登り先ほど作った洞穴に

ガンシップアップグレードモジュールとして

使われるべき銃座をせり出すように設置する。

これで弾を高いところでありながらも下にしっかりと弾を放つことができるだろう。

ちなみにこの銃座はガンシップ用と行っても組み込んで使うものではなく

外に取り付ける単独モジュールの為、銃座の周囲に装甲がある。

その為このような簡易的な要塞設備を作るのには持って来いなのだ。


「ゴンザレス! 反対側にも作るのか?」


「ああ」

と簡単に返事をする。

そしてさっと今いる場所からこの谷の様子をみやる、

長さ約200Mほどのこの谷は縦の長さは50Mほどで

谷の幅は約30Mほどだ、それなりの大きさで

罠を張るには持って来いの場所だ。

そんなところを通るやつらはバカなのだろうか、

しかしここを選んで通るというのは何か考えがあるのかもしれない。

用心のためもう少し念入りに準備をしておこう、

そう思い俺はさらに穴を掘り進めてゆく―――


数時間の作業ののち下から


「兄貴! 地雷の設置完了しました」


とウェインの声が聞こえる。


「よし今度は落とし穴を作っておけ

 車両がここを突破できないようにしろ」


「わかりました」


ウェインは張った声でそう返事をし、相方のメイスとともに落とし穴の設置を始める。

そういえば落とし穴の作り方にはいくつか種類があるのだ。

まずそのまま素掘りして上に簡単な屋根を作りその上に周りと同じような環境を作る方法。

これは比較的に作りやすく簡単だ、しかし見つかるリスクも大きくなってしまうのが欠点ではあるのだが。

それに対してももう一つは、下に別の場所から堀進んで落とし穴として使うべきところに巨大な空間を開ける

というものがある。そうすると地上から見たとき全く不自然感がなく騙されやすい。

ただこれは地上用自発型探信機を使われると結局ばれてしまう。しかしそんなのを使うのは

予め戦闘を予想している場合のみであって奇襲ではかなりの効果が期待できるだろう。

今回はそういう理由から後者を使う。


―――そんなこんなで数時間かけて念入りに準備をし俺達の簡易的な要塞は出来上がった。


「ここまでなるか」


「これじゃ入る前にばれても言い訳できねーっすね」


ウェインのその言葉のとおり遠目から見ても岸壁に設置された大量銃座は異様さを放っていた。


「作りすぎたのう はははは」

ゼンが苦笑しながら言った。


「しかし外すのもな―――」


「なーに、渓谷入口と出口付近にホログラムをかけておけばごまかせるじゃろうて」

ゼンがストレージを開きながら俺達の前に歩み出る。


「そんな訳で最後の仕上げをするかのう」


そしてその数十分後完全には、入ったものを逃がさないであろう蟻地獄がばりの罠が完成した。


「よしウェイン、メイスと爺さんはここで待っていてくれ、他の奴らを呼んでくる」


「了解です兄貴」

「了解しました」

「おう」


返事を聞き終わる前に俺は反転しバイクの方に向かう。

バイクに近づくとキーを差し込み捻る。

静かにエンジン音が聞こえ車体が微かに振動し俺の体も微かに振動する、

まるでバイクになったような気分になる。

そして俺はアクセルを捻り、谷からアジトに向かって出発した。

それにしても夜の風は気持ちがいい、昼と違って温かさはないが…

むしろその冷たさがが俺の肌には馴染む、そしてこのどこまでも広がる

はげた大地、その中を俺は一人バイクで走っている。

こういう時は何も考えずただ体が感じ取っている雰囲気を楽しむのが

一番だなと思ってしまう―――所詮この世界など0と1で構成された

幻想でしかないというのに。


続きは明日

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