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Q2「ここは何処なのか」

シリアス(?)パートはここまでです。あとはコメディー要素多めで書いていきます。

「お、おい江舞....!こ、ここって....!」

「まるで.......SF映画みたい....ですね」




意識を失った俺たちは、とある場所にて覚醒を果たした。だがそこで目にしたものは、とても現実とは思えない風景だったのである。


まず、俺たちは大きな教会のような建造物の前に倒れていたのだ。西洋風の、城のような教会だ。周囲を見渡すと...教会の向こう側は森林。そして後方は崖になっていて、この場所がかなり標高が高い場所だと伺えた。

 この時点で信じられないのだが...問題は次だ。なんと、立ち上がってその崖の向こう側を見てみたところ...下に広がっていたものは、太陽に照らされた、夥しい数の古代遺跡のような建物と...それらを監視するように飛び回る....巨大な”飛龍”だったのだ。




「あれ...何なんだよ!?龍?...信じられねぇ、夢じゃないのか!?」

「夢なわけないじゃないですか!こんなにも意識が冴えてるのに....!ここは一体どこなんですか!?」




混乱を極める俺達。まさか、小説や漫画でよくある”異世界”というやつか?

....だとしたら、俺たちは何がきっかけでこんな場所へ....?いや、どう考えても答えはひとつしかなかった。




「あのメール....。あれのせいで、俺たちはこんな異世界に飛ばされたんじゃないのか?」

「....私が開いたURLの事ですか?」

「おそらくな。現に、あれを開いた瞬間に体が消えかかっていったんだから」

「そんな事って.....」

「動揺すんのも分かるが、どのみち俺らはもうおかしな世界に足を踏み入れちまってる。とにかく、まずはこの世界がどういう場所で、そこから帰る術を探そう」




何故か、俺の頭は徐々に冷静さを取り戻していた。まぁ、元の世界ですら何年も外出してなかったし、正直この世界とどう違うのかすらあまり覚えていない。....大丈夫か俺。それはもはや病気だぞ。




◇◆◇


 


 その後、俺は妹を引き連れながら、教会の向こう側の森林に入っていった。とりあえずこの崖の下に降りてみようと考えたのだ。


 だが、思った以上に道のりは険しく....。隙間なく茂った樹木や、時折鳴き出す奇妙な獣の声が、俺たちの進行を困難なものにする。




「途中で食い殺されたりとか....ないよな?」

「縁起でもない!やめてください!」



きっと他にも、あの龍のような、現実では考えられない生物たちが蔓延っているのだろう。

そうなると....俺たちを不用意に襲ってくる奴もいるかも知れない。細心の注意を払わなければ...



「....それにしても...何でメール開いただけでこんな場所に来れたんだろう...?」

「分かりません....。きっと、私たちの常識の概念を明らかに逸脱した技術なのでしょう」

「.......解説中悪いんだけどさ、江舞」

「はい?」

「.........えげつないほど左腕に胸が当たってるんだけど」

「食い殺されろ淫獣が!!!!」

「いや、別に変な意味で言ったんじゃなくてさ、そんなにベタベタされてたら、いざ何かに襲われた時にいろいろ機動性が悪いだろ?」

「....私を置いて逃げるつもり....ですか?」

「そんなことはない。お前が死んだら誰が俺の世話を焼くんだ!...一応、命に代えて守ってやる」

「一応.....ですか」




不満そうな声を上げながらも、何故か江舞は嬉しそうに見えた。...敬語は使うし、兄に対して説教するなど、いろいろ喧しい奴だが....兄として、家族として、こいつだけは守らないとな。


 しばらく歩いていると.....進むにつれて、徐々に樹木の数が減っていることに気付く。だが、どうにも崖から降りているようには思えない。...教会の向こう側を一直線に進んでいるだけのようである。




「森を抜けたら...どこに出るんだろうな?」

「安全な場所ならいいですけど....」




獣の声は聞こえるが、襲ってくる様子はない。

森は本格的に晴れてきて、....遂に、前方に広がる風景が垣間見えてきた。

どれだけ歩いただろうか...恐らく一時間程は歩いただろう。




「いよいよ抜けるぞ...!」

「もう足が限界ですよぉ.....」



弱音を吐く妹を引き連れ、俺は小走りで森を駆ける。

遮られていた日光も、眩いくらいに照りつける。そのせいで視界が曇り、眼前の景色が見えない。

もうすでに森は抜けた筈。...一体、何が待ち受けているのだろう。きっと、更に幻想的で、俺たちの想像を遥かに上回るものなんだろうね!!!





◇◆◇





......一言で言おう。....”小屋”だ。

森を抜けた俺らを待ち構えていたのは、明らかに”三日で作ったんじゃねぇか”と突っ込みたくなるような...人が数人住めるほどの木の小屋である。




「なんだこれ.....違う意味で想像を絶したぞ....江舞」

「私も....あまりに現実的な建物すぎて、逆にこれもファンタジーな小屋に見えてきました」

「.......どうする?このファンタジーハウス。覗いてみるか?」

「え、えぇ...。もしかしたら、他にも人がいるかもしれませんしね」




どう見ても、この小屋の先にも崖しか見えない。崖に挟まれた森林を、我々は淡い期待を掲げながら進んでいたのだ。....バカバカしい!俺たちの無駄な一時間と足に溜まった乳酸を消し去ってくれ!!!

 だが選択肢はひとつしかない。この小屋に誰かがいたなら...この世界について何か聞き出せるかも知れない。俺は、江舞を小屋の前で待機させ、正面に備え付けられたぞんざいな木製の扉のノブのような部分に、ゆっくりと手をかけた。



「変な輩とかじゃ....ないといいな」





激しく軋む音を立て、扉は俺の腕の動きに合わせて手前に開いていく。

...中から漂ってくる木の匂いと.....これは...人の気配か?

荒ぶる鼓動を抑えつつ、俺は覚悟を決め、...一気に扉を全開させた。

咄嗟に恐怖心に駆られ、両目を瞑ってしまったが...。どうやら、小屋の中にいたのは、紛れもない”人間”らしい。奥の方から、優しく、語りかけてくるような声が聞こえた。





「.........やっと.....来てくれたんだね....」

「?....来て...くれた?」

「そ、そんな.....!!こんな事って....!!」




妹はどうやらその人間を見たらしく、何やら衝撃を受けている様子だ。何なんだ?知っている人間だとでも言うのか?...俺は、塞いでいた瞼をゆっくり開け、その姿を視界に入れていく。



......そこにいた人間は、二度と再開などできるはずもない、....しかし、俺がずっと救いを求めていた人間だった。”彼女”は、もう一度優しく声を発した。







「”レン君”.....!ずっと....待ってたんだよ....!」

「.......”亜蓮”....!?」






そう、三年前に死んだはずの”遡上亜蓮”の姿が...そこにはあったのである。









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