Q1「ワンクリック詐欺とは」
思いつきで書いたので妄想垂れ流しです。よろしくお願いします。
俺には、幼少の頃から仲の良かった女の子がいた。名前は”遡上亜蓮”。昔から明るい性格と可愛らしい容姿で、誰からも好かれていた奴だった。それに対して俺は、地味で陰気で、周りには友達など一人もいなかった。...だが亜蓮だけは、いつも俺の事を気にかけ、いつでも俺の傍にいてくれたのだ。
『レイ君は私がいなきゃダメだもんね!...心配しないで!どんな場所にいても、必ず私がレイ君を助けてあげるから!』
いつの日だったか、彼女は小学生の頃、いじめられていた俺にそう言葉を投げかけた事があったな...。気色悪い話だが、恐らくその時から俺は....彼女の事が好きになったのだろう。
だが....俺はどこまでも不幸で、彼女はいつまでも俺の傍にいる事はなかったのである。
◇◆◇
「兄さん!!もういい加減部屋から出てきて下さいよお!!...いつまでクソニートやってるつもりですか!?」
「うるさいんだよ....お前には何も関係ないだろ!?大人しく順風満帆なリア充生活でも送ってやがれ!この薄情妹!」
”結崎怜”。俺の名前だ。
現在19歳。普通なら大学行ってキャンパスライフを嫌になるほど謳歌しているはずの年齢だが...俺は自宅でのマイルームライフを鬱になるほど謳歌していた。
毎日毎日ネットサーフィンを繰り返し、腹が減ったら飯を食って夜は寝るだけ。
両親はもはや諦めている様子だが....この妹”江舞”は、しつこいぐらいに俺を更生させようといているらしい。
「どうして私の言うことを聞いてくれないんですか兄さん!」
「何でお前の言う事なんか聞かなきゃならんのだ....そしてその敬語、ウザイからやめろ」
「......そんな事してたって......亜蓮さんは助けに来てくれないんですよ..!?」
「っ.......!その名前を出すなって....何度言えば分かるんだ...!」
「いい加減目を覚まして下さい。亜蓮さんはもう......死んでしまったじゃないですか....!」
「........」
「朝ごはん、ここに置いておきますから....。冷めないうちに食べてください」
部屋の外から足音が聞こえ、それ以上妹が俺に話しかけてくる事はなかった。
....そう、全てあいつが言った通りだ。彼女...遡上亜蓮は3年前.....
ある事故のせいで...死んでいるのだ。
それ以来俺は、部屋に引きこもり、高校にも通わずに生活している。
きっと心のどこかで俺は、また彼女が助けに来てくれるとでも思っているのだろう。
だが....助けてくれる人間が死んでしまったのだ。救いようがない。
「クソ......!こんな事してても....何の意味もないのに...!」
激しい自己嫌悪から逃れるように、俺はすぐにネットの世界へ飛び込む。
だが、何故か俺のPCのメールに着信が来ている。迷惑メールかと思い、それを開いてみると..そこにはこう書かれてあった。
『いつまでもいつまでも過去に囚われて、そんな牢獄のような部屋で人生を浪費するあなたに....私からのプレゼントを差し上げます』
件名は”開いてください”。...馬鹿かこいつは。
...本文の下には、何やら怪しげなURLが記されてる。....訳がわからない。なんだこれは?新手の宗教団体の勧誘でも装っているのか...?
「下らん....誰が開くかこんなもん」
恐らく、このURLを開いたら、勝手にどこかのサイトに登録されて、多大な金の請求通知が来るのだろう。”ワンクリック詐欺”というやつだ。...今まで何度これに騙されてきたか。請求された金だけで家一軒は建つレベルだぞ!?....とりあえず、こういう場合はメールを無視すればいい。
俺はそのメールを削除し、再びネットの世界へダイブ。
だが数秒後、またもメール通知が訪れる。
次は何だ...?と思い、それを開くと...先ほどのメールと同じ件名で、本文はこうだった。
『このアドレスを開けば、あなたは新しい世界へ踏み出すことができます。さあ、早くそれをクリックしてください。大丈夫です、架空請求など絶対にありませんから』
「.....必死にも程があるだろ!!素人詐欺師かよこいつ....」
再びメール削除。そしてまたネットへ。....だがしかし、メール通知は留まることを知らない。
すぐさま次のメールが受信された。
『開かないつもりですか?....私がこんなに懇願しているのに。あなたは私を見捨てるんですか?ふざけないでください。早く開いてください。でないと、あなたの三親等から順に殺していきますよ』
「怖すぎるわ!!もはや詐欺でも何でもねぇし....只の脅迫だろ!!」
「ちょっと兄さん!さっきから何騒いでるんですか!!?」
俺がメールに対して過剰にツッコミを入れていると、その声を聞きつけた妹が...あろうことか、部屋のドアを強引に開け、中に侵入してきた。あまりの出来事に、俺は叫び声をあげる。
「うおおおおぉおおぉおおお!!....え、江舞!!何入ってきてるんだよ!出て行け!」
「心配になって来たというのに........ん?なんですかそれは。メール?」
開かれたメール(脅迫文)を発見した江舞は、すぐさまおれのPCの元へ近寄ってくる。
そして、鎮座する俺を押しのけ、メールの文面に目を通す。
「おい見るなよ!...いいから早く出て行けって....!」
「ちょっと....これ脅迫じゃないですか!!....早くアドレスを開かないと....!」
「やめろって!それは詐欺なんだよ!!開いたらダメなんだ!」
俺の忠告を全く聞かず....江舞は、最初に送られてきたURL付きのメールを表示し...カーソルを操作しだした。
「馬鹿!開くなって言ってるだろ!?」
「このままじゃ殺されます!!早く開かないと....!」
「どんだけ騙されやすいんだお前は!!やめろ!やめろおおおおおおおおおおぉぉぉおお!!!」
”カチッ”.....乾いたクリック音が、虚しく室内に響き渡る。こいつやりやがった....!
俺は呆れ果て、大きく溜息を吐く。顔を両手で覆い、心の中で妹を死ぬほど罵倒した。
「よし...これで私たちは安全ですね!」
「これから安全じゃなくなるんだよ!!あぁもう!....面倒なことになっちまった........ん?」
異変に気付く。顔を覆っていた両手が....徐々に薄く、消えかかっている...?見えるはずのない手の向こう側の景色が、段々と、はっきり見えて行くのだ。
「お、おい!...何だよこれ....か、体が!!」
「私の体も...!?兄さん!!これは一体....!?」
江舞を見ると、彼女も体が消えかかっていた。まるで色を失っていくように....。
何が起こっているというんだ!?こんな事が現実で...起こるものなのか!?
だが思考する暇も無く......俺はいつしか意識を失い....体は完全に、消えてしまったのである。
――――気が付くと、そこは......紛れもない”異世界”であった。