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美髪な彼女  作者: 真咲静
異世界生活だよ
4/6

2-1

「あ、えぇっと、大丈夫です。ソムロスさんの説明分かりやすくて助かります」


「ミミさん、そんなに褒められるとキスしたくなります。いいですか」


「遠慮させていただきます。ソムロスさん、物好きですね。私みたいな得体の知らないのを口説くなんて」


「え、美人が居たら口説く。好みの子に会ったら運命を説くのは当然ですよ。その背、その胸、そしてその年。全てが私好みです。結婚しましょう」


「お断りさせていただきます。ソムロスさんのお好みも難儀な」


 美々がこの世界に来てから三日が過ぎていた。アビゲイルとイグノス、そしてソムロスが中心になって美々に教育をしていた。


「はいはい。ソムロスさん、その辺に致しましょう。美々さんが早い順応をしてくれたおかげで次の予定が決まりました。アビゲイルさん、美々さんの準備をお願いします」


「あ、イグノスさん。お時間ですか」


 ノートを閉じて、羽ペンを立てる。ソムロスにこの国のマナーを習っていた美々。もともと勉強が好きな美々は基本的なマナーと規則は三日で頭に入れた。


「ミミちゃん、これに着替えてもらえるかしら。ミミちゃんたら仕事が早いから、お姉さん達大変だったのよ。はい。制服」


 アビゲイルとその後ろにシュレイナとベラと言う二人の侍女がドレスと装飾品を持って現れた。

 三日前の自己紹介の後、イグノスとソムロスに連れられて案内された白百合の間で引き合わされた美々付きの侍女がシュレイナとベラだ。


 侍女は必要ないと美々は主張したのだが、こちら流の服の着方が美々には少々難しく、生活様式が違うこの世界では彼女らの手助けが必要になってしまったのだった。護衛も同様で、三日前にゼノンに引き連れられてきた三人の護衛セスタ、イオト、ファゼル。このうちの二人が毎日美々に張り付いている。


「ミミさんの覚えの早さには感嘆しますよ」


「私もそう思うけど、ソムロス? あなた、その手をお放しなさいな」


「ソムロスさん……」


 残念な人を見る目がソムロスに集中する。

 ソムロスの名前を呼びながら、イグノスが美々の肩に置かれた手を離した。


「さぁ、美々さんの準備が終わるまでソムロスさんはこの部屋から離れましょうか。休憩の時間ですから、そろそろロージオン様にお茶なんか入れるのも良いでしょうね。セスタ、ファゼル、扉の前の守りを固めてください」


 イグノスはソムロスの首根っこを掴むとロージオンの執務室へと引き摺って行く。それを見た美々は「イグノスさん、案外力持ち。絶対細マッチョだよね」と呟いた。





 人の国で女性の官吏は少なくも居る。

 その官吏達は男性同様に制服を着ている色は武官でも近衛と他で二色。文官のそれよりは動きやすい造りだが、デザインはほぼ一緒だ。文官は上級職と下級職、専門職毎で色分けされている。これは男性も一緒。

 薬師塔で働く女性官吏は濃い緑だが、アビゲイルが持ってきた制服は武官仕様で色はロージオン直属を指す青で、この色を着ているのは美々があの日紹介された、イグノス達だけだ。

 美々はロージオン付きの文官として様々なことの挑戦していく。その第一弾として薬師塔への挨拶をすることになった。


「アビゲイルさんのともちょっと違うんですね。イグノスさん達の女性版が近いかも」


「ミミ様、よく気が付かれましたね」


「ミミちゃん、よく似合っていますよ」


「ミミ様、御髪の方も結わせていただきますね」


 着付けを習いながら、美々は眉間に皺をよせながら、自分では結べない紐の形に「難しい」と呟いている。

 一日目にして美々の不器用さを知った侍女達は「髪は見事に結えるのになぜでしょうね」と笑っていた。

 美々としては、他人に髪を触られるのは嫌なのだが、この三人の髪の梳き方は美々には好ましく、彼女らに結ってもらうことを断ることはなかった。

 なんせ、元の世界では美容師の手すら気持ち悪く、美々の髪を触れるのは一族だけだったのだが、この三人は美々が気持ちよくなる梳き方をするのだ。


「はい。できましたよ」


「ベラさん、どうしてそんなに髪を梳くのが上手なんですか。元の所の誰よりも気持ち良くて」


「あらあら、ミミちゃんたら」


 美々があまりに恍惚とした表情をしているので、三人は苦笑するのだった。




「そろそろ、支度できましたか」


「イグノスさん」


「時間ぴったりね」


 ノック音に全員が反応して扉を見るとイグノスの声がした。


「どうぞ」


「失礼します。あぁ、ミミさん。お似合いですよ」


 美々が入室を促すとイグノスは入ってきた。


「ありがとうございます」


「アビーさん、シュレイナさん、ベラさん、ありがとうございました」


「ふふ。それが私達の仕事ですわ」


「でも、これだけ素敵ししていただけたんですよ。お礼を言って当然ですよ」


「アビゲイル様。ミミ様を持ち帰りたいですわ」


「本当に」


 女性が和気藹々と話しているところにイグノスが割り込む。


「ミミさんが大変可愛らしい女性なのは分かりましたが、そろそろ時間ですので、よろしいでしょうか」


「はい。イグノスさん。よろしくお願いします」


「ミミちゃん。気を付けて行ってらっしゃい」


「はい。アビーさん。いってきます」


 イグノスに連れられて部屋を出る美々を三人は見送った。




 廊下に出た二人に美々の護衛の二人の四人が薬師塔までの廊下を歩く。


「あ、こんなところに噴水があるんですね」


「こちらはまだ案内していませんでしたね。ここは離宮と研究塔を繋ぐ廊下でして、本宮へ繋がる廊下とは別になります。本宮を中心に各離宮と研究塔や訓練塔等があります。ロージオン様がいるこの離宮は第一継承権を持つ王子の為の離宮となっています。この離宮は本宮に次いで研究塔や訓練塔に行きやすい造りになっていまして、先ずはこの噴水の形を覚えてい下さい。各施設までの間に噴水や目印になる木や石等があります。先々覚えてもらうことになる第一歩がこの噴水となりますので」


 四人は足を止めて中庭を見る。


 五頭の馬がモチーフの噴水がある。その周りには美しい花々が咲き乱れていて、その場が鳥たちの憩いの場であるらしく、噴水の水を啄ばみ、中には噴水で水浴びをしている鳥もいた。


「馬五頭の噴水ですね。もし道を間違えたなら、これを目印にしたら、これから行く先からは帰ってこれるんですね」


「そうですね。さぁ、行きましょう」


「はい」


 四人はロージオンの離宮を抜けて、回廊を進み、薬師塔の入り口にたどり着く。

 整えられた道筋をイグノスが説明していく。セスタとファゼルもうんうんと頷きながら歩いている。この道を覚えることは城勤めの基本中の基本らしい。



「ミミさん、こちらが薬師塔になります。事前に予習した通り、こちらは第一位のハツハ様が頂点となり、日々研究が進められています。ハツハ様の双子の妹君リツリ様が次点の医療塔も併設されています。さて行きましょう」


 美々の前には緑と白の塔が、背後の空の色に映えて美しい。

 塔の入り口には衛兵が二人。もう職員が詰めているのか、どちらの塔の入り口に行き来する人はいない。

 美々は胸の内で気合を入れなおして、イグノスの後について塔に入ったのだった。


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