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S

作者: 黒猫レオ
掲載日:2014/04/09

いつも、眺めているだけだった。


ボールを追いかける君の姿。授業でふざける君の姿。はしゃいで帰っていく、君の姿。


「綺麗だな」


そう言われても、どうしようもなく悲しい気分になった。どれだけ言われても、悲しかった。


この思いは、届かないから。



届かないまま、この日を迎えた。


「もう卒業かー」


友達に囲まれている君。


そうだね。いつも人気者で。みんなのリーダーで。先頭に立っていくような、そんな人だったからね。


「どこ行くの?」


女の子に聞かれて君が答えたのは、有名な名門学校の名前だった。周りで歓声があがる。


頭もよかったね。サッカーでもゴールを決める度に歓声が上がってたっけ。


「写真撮ろーぜ!」


私の目の前まで来た君は、卒業前と何も変わっていない。


でも多分、中身はぐんと大きくなったんだ。


「はい、チーズ!」


前にいる君が眩しいのは、カメラのフラッシュのせいではないはずだ。



卒業証書を筒の中に入れて持っている君は、綺麗な横顔をしていた。


いつもこの顔に憧れて。いつも目だけで追いかけて。


話すことも出来ない。笑いかけることも出来ない。


そんなまま、三年が終わってしまうんだ。


もう、離れてしまう。


そんなのは、嫌だ。


「綺麗だ」


君が私を見上げて、そう言った。


一瞬だけ、目が合った。


これから先、君がどんなことでも乗り越えていけますように。


二度と会えなくなるけど、最後に。君を思ってたんだよっていう証のように。



「……あ」


君が気付いたようだ。


私を見上げた。


「……桜の……花びらが」


風の向きを見て、計算して、飛ばした。


花びらは計算通り、君の肩に落ちた。


「…………」


無言で私を見上げる君。


私はそっと、もう一枚落とした。


君が幸せに、ずっと笑っていられますように。


「……ありがとう」


君の口が、そう動いた。


私は走っていく君を見送った。


いつでも、困ったら戻っておいでよ。


泣きそうになったら思いだして。それだけでいい。



私は、ここにいるから。

ありがとうございました!

題名の「S」が何の「S」なのか分かっていただけたでしょうか……?

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