表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/14

第9話

 翌日、16歳の誕生日だ。

 国王陛下とソリーナ王妃に挨拶をせず、早朝に王城を出た。見送りは誰もいなかった。ちょっとだけ、そうほんの少しだけアシュトン様にお別れを言いたかったけれど、でもそれは私のエゴだ。

 むしろそれで良かったのだと思う。涙は出ない。


(さようなら、アシュトン様。これで《隷属契約》も消え失せる。貴方は自由ですよ)


 この後、国がどうなるのか胸を痛める必要もない。転移魔法で空中都市の門扉前に飛んだ。



 ***


「わあ」


 聳え立つ銀色の門は、レリーフや装飾が凝っていて美しい。

 手続きをすませるのに、時間がかかって気づけば門扉が閉まるギリギリの時間になった。結局、アシュトン様をお誘いすることはできなかったけれど、それで良かったのだ。自分のせいで人生をめちゃくちゃにされたのだ。視界に入るの目障りだっただろう。


(これからは心から好きな人と結ばれてほしい……)


 私以外の誰かがアシュトン様の隣にいる。その姿を見ずにすむのはとても有り難い。魔法塔での暮らしは、きっと私の後ろ向きな気持ちを変えてくれるだろう。

 

(まあ、今日一日は手続きで終わっちゃったけれど、明日から魔法塔の生活に馴染むようにしましょう)


 むせ返るようなオレンジ色の夕焼けが美しく、自分の中で心が動いたことが嬉しかった。これからは顔を上げて、楽しもう。

 あの国での全てを忘れて──。

 

 カーン、カーン。

 鐘の音と共に、巨大な門扉が閉まっていく。

 この扉が閉じれば魔法塔への入国は明日以降となるらしい。完全に寸前、誰かが私の名前を呼んだ気がした気がして振り返ったけれど、分厚い門が閉じた後だった。


『オレーリア様』


 一瞬アシュトン様の声がした。

 気のせいだろう。荷物はすでに部屋においてあるし、夜にはウォルトと食事の約束がある。そう思って街に向かって歩き出した時だった。

 ギギギギ……と閉まった門が開く。


「おい、無理に開けようとするな」

「いや、扉が閉まるギリギリで飛び込んだんだ!」

「おい大丈夫か!?」

「治癒班を呼べ! 大至急だ」

(誰か扉に挟まれ──!?)

「オレー……リア……っさま」


 なんとなく気になって振り返った瞬間、銀髪が目に入った。そこには血塗れのアシュトン様の姿があったのだ。


「え」

「オレーリア……様」

「な、なんで!?」


 アシュトン様に駆け寄ると私を抱きしめるような形で倒れ込み、膝を突いた。彼がこの都市に入るためには、魔法塔からの認可が必要だったはずだ。

 いやそれよりも傷の手当が先だと治癒魔法をかける。淡い光によって、彼の額から流れ落ちていた血が止まった。


「一体何があったの!? 契約は解除されたのでしょう!?」


 緋色の瞳がぶつかる。ホッとしたような、嬉しいという顔で私を見返した。


「……クローディア様の形見を、やっと貴女にお戻しできる。本当はもっとたくさんの遺産があったのですが、取り返せずに申し訳ありません……」

「え……」


 クローディア。私の母の名前だ。アシュトン様の手に握られていたのは、お母様の首飾りだった。もうずっと昔に諦めていた品だ。


「どうして……これは没収されて……」

「取り返すための取引材料が《隷属契約》でした……」


 お母様の形見を取り戻すために、《隷属契約》をしたと聞いて耳を疑った。罠に掛けられて契約を結んだとばかり思っていたのだ。でなければ一方的な契約など履行しようとは考えない。


「どうして……。そこまでするのは……騎士として?」

「クローディア様が病死される前、そして私の叔父にオレーリア様をお守りするように、命じられました……しかし……叔父も遠征で亡くなり……私は……。叔父の意思を継ぎましたが…………貴女に惹かれて……っ」

「アシュトン様……もう喋らないでください。傷口が……」

「…………っ」


 最後のほうは声が掠れて聞こえなかったけれど、アシュトン様の覚悟が伝わってきた。意識を失ったアシュトン様は私に覆い被さり、その時に唇が微かに触れる。微かに触れただけなのに、心臓がバクバクと音を鳴らしてうるさい。


(なっ!?)

「……っと、お慕いしておりました」

(え、え、ええええええ!?)


 それからすぐに衛兵さんたちが手伝ってくれて、彼を都市病院に運んでもらった。偶然触れただけなのに、唇の感触がいつまでも残っていて忘れられない。

 こんなことでアシュトン様への気持ちが復活するなんて、我ながら単純だと少し凹んでしまった。

楽しんでいただけたのなら幸いです。

下記にある【☆☆☆☆☆】の評価・ブクマもありがとうございます。

感想・レビューも励みになります。ありがとうございます(ノ*>∀<)ノ♡

お読みいただきありがとうございます⸜(●˙꒳˙●)⸝!


新作連載のお知らせ

深淵書庫の主人、 鵺は不遇巫女姫を溺愛する

時代は大正⸜(●˙꒳˙●)⸝

今回は異類婚姻譚、和シンデレラです。

https://ncode.syosetu.com/n0100ks/1/ #narou #narouN0100KS


同じく新連載

ノラ聖女は巡礼という名の異世界グルメ旅行を楽しみたい

https://ncode.syosetu.com/n2443ks/4/ #narou #narouN2443KS


リメイク版

最愛の聖騎士公爵が私を殺そうとした理由

https://ncode.syosetu.com/n3516ks/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

(↓書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください↓)

https://potofu.me/asagikana123

html>

平凡な令嬢ですが、旦那様は溺愛です!?~地味なんて言わせません!~アンソロジーコミック
「婚約破棄したので、もう毎日卵かけご飯は食べられませんよ?」 漫画:鈴よひ 原作:あさぎかな

(書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください)

html>

【単行本】コミカライズ決定【第一部】死に戻り聖女様は、悪役令嬢にはなりません! 〜死亡フラグを折るたびに溺愛されてます〜
エブリスタ(漫画:ハルキィ 様)

(↓書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください↓)

https://potofu.me/asagikana123

html>

訳あり令嬢でしたが、溺愛されて今では幸せです アンソロジーコミック 7巻 (ZERO-SUMコミックス) コミック – 2024/10/31
「初めまして旦那様。約束通り離縁してください ~溺愛してくる儚げイケメン将軍の妻なんて無理です~」 漫画:九十九万里 原作:あさぎかな

(書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください)

html>

コミカライズ決定【第一部】死に戻り聖女様は、悪役令嬢にはなりません! 〜死亡フラグを折るたびに溺愛されてます〜
エブリスタ(漫画:ハルキィ 様)

(書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください)

html>

攫われ姫は、拗らせ騎士の偏愛に悩む
アマゾナイトノベルズ(イラスト:孫之手ランプ様)

(書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください)

html>

『バッドエンド確定したけど悪役令嬢はオネエ系魔王に愛されながら悠々自適を満喫します』
エンジェライト文庫(イラスト:史歩先生様)

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ