第2話 徒労
…ん。なんか空明るいんですけど。今何時だろ…
「えっ?!」
時計を見ると、そこには『8:15』という文字が。私はあの後疲れ過ぎて寝てしまったらしい。ちなみに学校には9時までに行かなければならない。
「え、えっと、まず朝ご飯食べて…歯磨きして…あっ!昨日風呂入って無いじゃん!」
そして家から学校までは30分かかる。
「おっと?」
ジワジワと焦りが込み上げて来る。まて、私。今ここで立ち止まっている間にも時間は過ぎて行くんだ。
やっと状況を把握した私の遅刻回避RTAが始まった。
8時18分
ベットから急いで飛び起き、洗面所へ。
「えっとまず顔洗って…いやシャワーこのまま入った方が早い!」
焦りすぎて独り言をこぼしまくっている私はシャワーを浴びた。
8時25分
「髪乾かねぇ!」
ヤバい。髪全く乾かん。朝食は今日は抜きでも良いかもしれない。というか抜きじゃないと間に合わない。
もうそろそろ諦めた方が楽なのでは…?
いや、駄目だ。内申点が終わる。もともと無い内申点をさらに減らすわけには…!
私は右手で髪を乾かして左手で歯を磨くという超絶高等テクニックをこなしながら時間を確認する。
8時30分
これはまずい。走ればなんとかなるか…?私は自分の体力テストの結果を思い出して絶望する。しょうがない。髪なんか湿ってる気がするけど良いか…別に彼氏とか求めてないし。私は生涯一人暮らしで全然良いです。だから今間に合ってくれ。神様〜!
8時35分
とうとう神頼みを始めた私は荷物を持って家を出る。忘れ物してそうで怖いがそんな事は未来の自分がなんとかしてくれるだろう。
…この今の状況は「いっけなーい!遅刻遅刻〜!」とか言った方が良いのかな?って、こんな事考えてる場合じゃない!自分よ、もっと速く走れ!大体太陽の10倍くらい…
「あ、メルじゃん!何してるの〜?」
誰かが話しかけて来た気がするが、多分気の所為である。
「メル〜そんな急いでどこ行くの〜?」
なんか凄い速度で追ってくるんですけど。
「しかもそんな制服なんか着ちゃって…もしかして学校行ってる?」
ついに横に並んだ。走りながら顔を確認すると…
「…え?ヌイ?」
私は走るのをやめた。
彼女はヌイ。クラスメイトの獣人で多分猫科。そして素早さのステータスが多分学校1である。で、そのクラスメイトであるヌイがめちゃくちゃ私服でそこにいた。因みに、うちの学校は私服登校禁止である。
「え…メル、もしかして今日学校だと思ってた?」
そこで私は気づいてしまった…
今日、土曜日だ…
「うわ〜!学校あると思ってたの〜?恥ずかし〜!」
「う、うるさい!」
私は顔を真っ赤にして言い返す。
うわ、ミスったわ〜。もう多分1日やる気出ないわ〜。
「ねぇ、メル!」
「何?」
私は「もう話しかけないでくれ」と言うオーラをたっぷり出したはずだが、ヌイはそのまま話しかけてくる。
「魔王退治しようよ!」
「は?」
いやしたいよ?したいけども。本能的に聞き返してしまったよ。急に?
「じゃあ今日の午後2時に冒険者ギルドに集合ね!」
こちらの返事を待たずに彼女は去って行った。流石素早さ学校1。もう姿が見えない。
いや都合は良いよ?都合は良いんだけども。ちょっとそんな期待通りの始まりでは無かったな。
「あぁ…帰るのダルい…」
普通にさっきのダッシュで体力を消費してしまった。もう学校まで半分くらい進んじゃったんだけど。困るんだけど。
「はぁ…『リジェネ』。」
私は最近覚えたての回復魔法を使ってみた。せっかくの機会だし。でも、こんなところで魔力使いたく無かった…それにしてもこの魔法、速攻性は無いけど『ヒール』よりも回復するじゃん。使い倒そ。
私はある程度体力が回復してから帰り始めた。
******
家、到着。
「ただいま〜」
さっきの『リジェネ』のお陰でまだ体力の残っている私はそのまま洗面所へ行き、手を洗う。
そしてその後ベットにダイブ。疲れていようが疲れてなかろうが関係ない。ベットはもう体の一部である。
そしてベットについた私は早速スマホを…
「あっ。」
私のスマホには「0%」の文字が。
「昨日充電して無かったんだった…」
終わった…と数カ月前の私なら思っていただろう。でも大丈夫。私には他にも趣味があるのだ。私は本を手に取る。そう、読書だ。「やっぱ本読む人ってカッコいいよね」とかいう理由で読み始めたけど、ふつーに面白い。そして私が最近特にハマっているのは…
「田中まじかよ…」
異世界モノである。なんかこの世界の人が異世界に飛んで色々するやつ。私が今読んでるのは『異世界で会社経営したら社員が疲れてたので元の世界の力使って癒してあげました』ってやつ。何回見てもタイトルがそのまま過ぎてセンスが無いと思うが、内容は面白い。今はライバル企業の副社長、田中の悪事を魔法で暴いたところである。私は完全にこの小説のファンになってしまった。今度グッズ買いに行きます。絶対に。もう最近はこの小説を読み始めるとすぐに時間が溶けて行く。例えば今時計を確認してみる。
『1:45』
こんなふうに。因みに冒険者ギルドまでは20分かかる。
「おっと?」
なんかさっきも見たような流れで私の遅刻回避RTA Part2が始まった。




