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第一話 あいつ

平凡な家庭に生まれたはず・・・だった主人公アルフは、人生を変えるきっかけとなる魔女、ディアボリカと出会う。

自分が勇者と魔王の子孫だったと知り、これから修行が始まってゆく。

さあ、アルフに待ち受ける最初の試練とは―――。

小鳥の心地よい鳴き声で目が覚める。


「んーー、もう朝か」


欠伸をしながらゆっくりと起き上がる。寝間着のまま洗面所に行き顔を洗っていると玄関から父と母の話し声が聞こえてくる。お客さんかな?と思いながらも気にせず洗顔や着替えをしていると母に呼ばれる。


「アルちゃ〜ん、ちょっと来てくれるかしら!」

「はぁ〜い」


慌てて玄関に出ると、そこには黒い服に黒い帽子を被ったスタイルのいい女の人がいた。黒服に黒帽子……絵本で読んだことがある、この人はもしかして……魔女?


「随分大きくなったね、アルフ」


(名前を知ってる・・・?)だけど、この人が誰なのか思い出すことはできない。


「誰だか分からないって顔をしているね、まあ会ったのは赤子のときだったから仕方がないか」

「ええと……僕に何の用ですか……?」

「君にはこの世界を救ってもらいたい」

「世界を救うって……ええ!? 何言ってるんですか!?」

「あははは、大袈裟だな、君はね、勇者と魔王の子孫なんだよ」

「勇者と……魔王の?」

「ああそうさ、まだ聞いていなかったのかい?」


父と母の顔を見る。


「そろそろ言わないとなぁとは思ってたんだけど……。」


そう言いながら顔を下げる父。


「勇者と魔王の子孫ってどういうこと?」


と聞くと、


「家系図をもってくるから待っててね」


と言って母はスタスタと書斎に行ってしまった。ドクンドクンと胸の鼓動が高鳴るのが分かった。まだ10の、魔法の使い方もまともに分からないような僕が世界を救う・・・?そんなことを考えながら父も魔女のお姉さんも黙ったままだった。沈黙が流れる気まずい空気を過ごしている中、持ってきたわよ〜と相変わらず元気な声の母が家系図を持ってくる。母が最初のページから家系図を開いて見せる。どうやらこの家は代々勇者をしていたらしい。だが、今から千年程前。双子が産まれる。その双子は、兄が魔王で、弟は勇者になったらしい。そんな二人の代から、勇者の家系ではなくなっていき、貴族から平民になったらしい。


「わかったか?君の家はずっと勇者をしていたんだよ。もう勇者としての家系ではなくなったが、君は特別なんだ。数百年に一度と言われる半魔の子なんだよ」

「半魔の子……。」

「半魔の子は171年ぶりだ。あまり名は知られていないがな、その子も勇者になったよ。ここ最近は魔物の動きも活性化されているから、君に世界を救ってほしいんだ」

「でも……そんな急に……。」

「急だろうが何だろうが関係ない! 魔法は使ったことあるか?」

「ないです……。」


そう言うと、魔女のお姉さんは父と母の方を向いた。


「ほ、ほら!まだ10だしさ、危ないかなって・・・。」


そう言い訳をする父にお姉さんは言う


「危ないもなにもあるか! 生まれたばっかりのときに会いに来たらこいつに顔面丸焦げにされたんだぞ!!!」


そんなことをしたのか・・・?と、思いながらお姉さん達の話を聞いている。


「あぁもう! 試しに使ってみな!」

「えっ……?何をですか……?」

「魔法に決まっているだろう! 」

「つ、使い方が分かりません・・・。」

「それならこっちへ来な」


そう言われお姉さんの方に近づくと、後ろから抱きしめられるような感じで手を握られる。


「いいか、これから私の魔力を君に分けるからな。しっかりと感覚を覚えなよ」

「は、はい!!」


手を握る力が強くなり、体に何かが流れるような感覚がする。そのまま身体の隅々から、何かが発せられる感覚があった。


ドォォォン!!! バチバチバチッ!


そんな轟音と共に、一帯の野原が焼け落ちていることが分かった。


「え・・・?」


戸惑う僕と、驚き声も出なくなっている父、腰を抜かしてしまっている母、そして・・・


「これは大物になるぞ〜……。」


なんて言いながらニヤリと笑うお姉さんがいた。


「あ、アルフ! ど、どこにそんな力を・・・。」

「これはまだ導火線に火をつけたも同様だよ。魔力の流れ方なんかを理解して磨き上げたら、世界を滅ぼすなんて容易だね」

「ほ、滅ぼっ!?」


父はその言葉に驚愕し泡を吹いて気絶してしまった。


「お父さん!!」


慌てて父のところに駆け寄り、母と一緒に、父をベッドまで運んで行った。


「はぁ、まったく、この程度で倒れてもらっちゃ困るな」


なんてお姉さんは呆れたように言う。


「んー、んん」

「お父さん!?」


父が起き上がると母が心配そうに声をかける。


「あなた、大丈夫!? さっき泡吹いて倒れたのよ!?」

「ん?ああ、そうだったか。何だか凄いものを見たような気がするよ」


ヘラヘラと笑う父に、


「そうよ! アルちゃんったらここら一帯を焼け野原にしちゃったのよ・・・! 」

「アルフが……?うそ・・・だろ」


そういい父は再び気絶してしまった。お父さんー!と叫び慌てている母を笑いながら見ていたお姉さんが、僕に話しかけてきた。


「さあアルフ、これからお前は修行だ! 魔法を基礎からみっちり教えてやるからな! あと、私の名前はディアボリカ。よろしく!」


そう言われ、僕の勇者になるための修行が始まってしまった・・・。

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