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第四章「種族の壁を乗り越えて」

前章の登場人物まとめ

・「ジョバーモン」:蛇口のような姿をしていて、水を噴射する力を持つ。

・「ピダーボマーチャ」:ピザードによって解放された古代の怪物。水が弱点。

・「ドリモン」:モンタウンの尋問係。ドリル操る力を持つ。

・「スピモン」:モンタウンの警察官。スピードを操る力を持つ。

・「トイレモン」:自身の中に入れたものを下水道に流し込む力を持つ。

・「スシモン」:モンタウンのスシ職人。

・「こうじモン」:モンタウンの工場長。発明が得意。

・「メカ・リーラッシャイ」:こうじモンによって作られたスシ職人ロボット。なぜか変態。

・「おっ3」:ジェムの戦闘技術の師匠。昔、ムッシー村にやってきた探検家。


「我らにビビって逃げたのかと思ったが……。仲間を連れてきたのか⁉︎」

「……ドド、ジェム、ボー! そして……モンタウンのみんな‼︎ 信じていたジョウ!」

「ジョバーモン、よく耐えてくれたドリ!」


僕たちはジョバーモンの限界が来る前に、エレピド砂漠に辿りつくことに成功した。

あれから一時間以上たっているというのに、ジョバーモンはたった一人でピダーボマーチャの攻撃を耐え抜いていたのか。能力の相性だけでじゃこんなことはできないだろう……。

 疲弊したジョバーモンとドドはバトンを繋ぐかのようにハイタッチを交わした。


「待たせたな。あとは俺たちに任せろ!」

「……頼むジョウ!」


そんな僕らを見て、ピザードは焦りといらだちを隠しきれなかった。


「……くそったれの友情が……。これはまずいことになったな……!」


ドドはそんなピザードに対し、こう叫んだ。


「一時間でジョバーモンを仕留められなかった時点で、お前の負けだ、ピザード!」

「……なんだと⁉︎ 我らにかかればあんなライトモン一匹、すぐに仕留められたのだ! 時間は山ほどあると思い、ピダーボマーチャの試運転がてら遊んでいただけだ!」

「……言い訳はやめろ」

「くそぉ……」


まずはドドが言葉でピザードを負かした後、最後の戦いが始まった。



「作戦通りにいくよ! みんな、配置について!」


僕たちが事前にたてていた作戦、それはトイレモンの中に、水が苦手なピダーボマーチャを押し込んで下水道に封印するというものだ。そのためにまず、遠距離攻撃のできるドド&スシモン、そして僕がピダーボマーチャの上まで、こうじモンの作ったジャンプ台で飛ぶ。


「さすがこうじモンさんだね。すぐにこんなものができるなんて」

「ああ。だが俺たちがミスったら全て終わりだぞ」「そんなことにはさせないスシ!」

「よし、じゃあ飛ばすで。3、2、1……」「「ゼローーーー‼︎」」

ビヨヨーーン!


急に飛んできた僕たちを見て、ピザードはすぐに攻撃を仕掛けた。だが、それはスシモンが対応してくれた。


「ナイスシモン笑!」

「そんなこと言ってる場合か! やるぞ、ジェム!」「……うん!」


そう言って僕とドドの投げたカタツムリとシャリは、息ぴったりに発射され、さらにはスピモンの力で加速され、ピダーボマーチャを吹っ飛ばした。

トイレモンは既に落下点に移動していて、ピダーボマーチャは彼の便器に入った。作戦成功かと思われたが……。


「抵抗してる⁉︎」


それを見たジョバーモンは倒れながらも僕たちへと叫んだ。


「そういえば……。やつはボクの水をくらった時も、動きが鈍るだけで完全に止まるわけではなかったジョウ!」


苦戦する僕らを横目に、ピザードは笑った。


「さすが我の忠実なるしもべだ! はっはっはー‼︎」


悔しいが、流石としか言いようがない。今の僕らでは、あの古代の怪物を倒すことなんてできやしないのか……⁉︎

誰もが諦めかけたその最中、ジョバーモンはトイレモンの方へとよろよろと向かっていた。


「……ジョバーモン⁉︎ まだ安静にしなきゃ……」


僕はそう言いかけたが、ドドに止められた。


「いや、何か策があるはず。……仲間を信じるんだ、ジェム」


 ……………………!

トイレモンの元へたどり着いたジョバーモンは言った。


「今こそ『ライトモン族の能力』を使うときジョウ。」

「え、ライトモン族の能力? 水の力だけじゃないの?」

「百聞は一見にしかずジョウ。今からやるからそこで見てくれジョウ……」


そう言ってジョバーモンは、必死に敵を吸い込もうとしているトイレモンに手を触れた。

すると……あたりに黄色い光が放たれた⁉︎

ピカッ‼︎


その光が収まった後、僕らの目の前にはジョバーモンもトイレモンもいなかった。

そこにいたのは、必死で敵を吸い込もうとしている『何か』だった。


「これがライトモン族の能力……。『合体』か⁉︎」


すると目の前の『何か』は言った。


「…………そうジョイ。ボクはジョバーとトイレが『キズナ合体』した姿、ジョイレモン‼︎ この姿なら水力は二倍になるジョイーーーー‼︎」


そう言ってジョイレモンはフルパワーでピダーボマーチャを吸い込み始めた。

ギュオォオ……‼︎


「うおおおおおおおおおおお!」

「グオオオオオオオオオオオオ⁉︎」


そして……ついに、ピダーボマーチャは排水溝の彼方に消えていった‼︎


「や……やったーーー!」


僕たちはみんな喜んでいるが、ピザードだけは泣き崩れていた。

そりゃそうか、自分のペットが死んだようなものだ。少し同情してしまうな……。ちょっと違うけど、僕も師匠「おっ3」がいなくなったことがあるから彼の気持ちはよくわかる。



「さて……コイツをどうしようか」「悪いヤツなら気絶させとくか?」

「かわいそうだから逃してやれスシ」「……いっそ仲間にするドリ!」


聞いての通り、今はピザードの処分をみんなで考えている。ちなみに僕はスシモンの意見に賛成中だ。うーん、でも悩むなあ……

そんな中、ドドはピザードにこう尋ねた。


「お前、俺たちの仲間になる気はあるか?」


数秒が経過すると、ピザードはニコリと笑って口を開いた。

地球では「昨日の敵は今日の友」っていうし……まさか古代の種族が仲間に……?


「……なるわけねえだろ、クソ野郎ども!」

「「…………やっぱそうくるのかよ!」」


……さて、問題はここからだ。ドドはどう決断するのだろうか。

しばらくの沈黙の後、ドドはジョイレモンに言った。


「……あいつも吸い込め!」

「はぁ⁉︎ ちょ、待て……ぐあああああああああああ⁉︎」


正解は、「ピダーボマーチャと仲良く地下で暮らさせる」でした……。

なんか罪悪感も出てきたけど、これは正しい決断だと思う。だって……逃したところで、一人ぼっちは辛いと思うからね。



ジョバーモンの救出が終わった僕らは、一度ムッシー村に戻ることにした。「アリ店長のライバル」というスシ職人と会うためだ。エレピド砂漠からムッシー村への帰り道は険しかったが、仲間が増えたので行きよりも楽しかった。

でも……道中は道に迷ったりした。案内役のダクトがいないからだ……。ダクトを知る四人はそれぞれ心を曇らせていた。そんな中、僕らはなんとかムッシー村にたどりついた。

ムッシー村に来た僕らはドリあえずアリ店に行ったが店長は不在だった。留守を任されていた一人の店員に店長の居場所を聞き出し、僕らは少し休んだ後そこに向かった。


歩く途中、スシモンは僕に話しかけた。


「ボクらが向かってる『ムッシー洞窟』ってどういうとこなんだスシ?」

「ムッシー村の中でも危険な虫たちが住むところだよ」


それを聞いてボーは思い出したように言った。


「ああ、この前言ってた、ジェムが師匠と出会ったっていう洞窟か?」

「……そうだよ! あ、心配しないで? 最近の洞窟の人たちは昔と違って、毒が強いだけで自分から襲っては来ないから」

「へ〜……それはよかったドリ〜」


そう、昔は問答無用で、入った途端に襲われていたけど、アリ店長のライバルである「ヒアリ店長」が地球からやってきて洞窟のトップになってからは、襲わないよう統率が取られているのだ。まあ、僕はと「ヒアリ店長」と会ったことはないんだけどね。

洞窟に入ったところで、久々にメカ・リーラッシャイが口を動かした。


「ボクノデータニハ『マイマイカブリ』モ毒ヲモツトアリマス。シカシ『ジェムサンノ家』ハ普通ニ『ムッシー村』ニアリマスヨネ。洞窟イリノ基準ハナンデスカ?」


僕は「……流石メカ、よく知ってるな」と思いながら答えた。


「えーと……毒の強さだった気がする。『ヒアリ』や『蜂』くらいの毒だと洞窟に行かないといけないみたい。あと、日光が苦手な一族とかもいるかな」


それまでの話を聞いて、ドドは言った。


「へえ……一見差別されてるように見えて、ちゃんと考えられてんだな。そんな危険な虫たちをまとめあげたっていう『ヒアリ店長』にがぜん会いたくなってきたぜ」


そして……ついに対面の時がやってきた。


「これがヒアリ店長の店、『ヒアリ店』ジョウか!」

「やっぱり入口は小さいんだな……」

「みんな、離れてて。こういう時は……」


僕は拳に力を込めた。みんなが心の準備をしたその時、僕の拳は何者かに止められた。


「Hey you! その手を止めてplease!」


その男はアリ店長とよく似た容姿で、違うとすれば体が赤いことと喋り方だけ……。


「もしかして……あなたが『ヒアリ店長』ですか?」


僕がそう聞くとその答えは別のところから帰ってきた。

「そうだ」

その漢は僕らがよく知る人物……そう、アリ店長だ。


「久しぶりだな、ジェムとドド! そして……よろしくな、新しい仲間たち!」


店長は僕ら一人一人と握手したあと、あたりを見渡して呟いた。


「……ん? ダクトはいないのか?」


…………! 僕は今までのことを全て話した。



「そうか……。実はこっちも色々あってな、そこのヒアリ野郎を仲間に誘ったんだが……」


アリ店長がそう言うと、ヒアリ店長が突然叫び出した。


「仲間になっても……OKデス! 神秘のスシはmeも気になりマス‼︎ ただし……アリ店長がloseしたというドドさん。youがmeにスシ勝負で勝てたらの話デス!」


そういう展開になるのか……。ドドのスシは確かに絶品だ。だけど、相手は僕たちが知らないようなスシを出してくるはず。審査員次第では、食べ慣れたものより新しいものの方に投票したくなるかもしれない。これは厳しい勝負になりそうだ……。

ドドは相手にとって不足はないといった態度で言った。


「……いいぜ、受けてたとう!」



こうして始まった二人のスシ勝負の審査員に選ばれたのは、アリ店員とヒアリ店員が一人ずつ、洞窟サイドからスズメバチの「ハチ・スワロ」さん、そして村サイドから僕の父親「ムカム・カブリ」だった。


「と、父さん! 母さんはどうしたの?」

「……こんな早くに帰ったくせに急に呼び出しやがったくせにその態度はなんだ? おいジェム‼︎ 母さんはダイエット中だからこんなのに来る訳ねえだろ!」


ムカム・カブリ……、父さんはいつも苛立っている。しかし、内心ではとても優しい人だ。本当は僕が審査員やりたかったけど断られたから、わざわざ洞窟まで来てくれたしね。

十五分後、まずドドのスシが運ばれてきた。今回、ドドはいつもより長い時間をかけていたが、その理由は新しいメニューだったからのようだ。今回のドドのスシは一風変わった雰囲気で、マグロのぶつ切りをスパイスにつけて裏巻きにしている。

もしかしてヒアリ店長に対抗して異国の文化を取り入れているのか⁉︎


「これは俺がアメリカの本を読んで研究した新たなスシ、『スパイシーツナ』だ!」


続いてヒアリ店長のスシがやってきた。ヒアリ店長のスシもやはり一風変わっており、カニカマ、アボガドなどを海苔と白飯で巻いたものだった。さらにその上には紫色の液体(まさか毒⁉︎)がまぶされていた。


「これはUSAで最も有名なSushiである、『カリフォルニアロール』をアレンジしたものデス! 紫色の液体は安全な甘いソースdeath! さあ、審査please!」



数分後、店員たちと父さんとハチさんは美味しそうに食べ終え、投票をした。

その結果はなんと……‼︎


「…………三対一で、ヒアリ店長の勝利です‼︎」


「え……? あのドドが負けた……⁉︎」


スシ職人勧誘チャンスは失敗ってこと? アリ店長やドドは必死に頑張ったのに…………。

僕は必死で騒ごうとしたが、見苦しいと思ってなんとかこらえた。旅に出る前の僕ならこらえられなかっただろう。

ドドは悔しそうにヒアリ店長と握手を交わしていた。そう、一番悔しいのは彼なのだ。


「すまないけど約束は約束デス。Weは君らの仲間にはなれマセン」


ヒアリ店長に対し、ドドは残念そうな顔で言った。


「ああ、分かってる……。そうだ、勝負の証として互いのスシを食べてみないか?」


そういえば、スシ勝負では普通、審査員しか食べないんだよな……。

ヒアリ店長はニコリと笑い、言った。


「いい提案デス。YouのSushi食べてみたかったのデス」

「俺もだ。いただきます……」


二人の職人は互いのスシを食べあった。ドドは普通に美味しそうに食べていたが、ヒアリ店長は少し違った。……ハチマキの中の目を突然見開いて、叫び始めたのだ。


「こ、これは⁉︎ 現地の人物にしか分からない極上の味わいデス!」

「そうか……ありがとな」


ドドは嬉しそうに、そして寂しそうにそう答えたが、ヒアリ店長は興奮していた。


「これは、very greatすぎます! Meにはアメリカに仲間がいるんデスが、先日その仲間から『極上のスシ職人』の寿司を教えてもらったんデスけどね、その感想とそっくりデス!」

「へえ……アメリカにもそんなスシ職人がいるんだな」

「そうなんデスよ! それにしても君のスシ、every day食べたいぐらいデシタ!」


冷めた気分だったドドの声はそれを聞いた途端、変化した。


「え⁉︎ それってつまり……!」

「ええ。仲間になってもOKってことデス!」

「ま、マジかー‼︎」「「ええええええええええ⁉︎」」


これには僕たちも驚いた。勝負で負けた時点で、ヒアリ店長のことはもう諦めていたけど、こんな展開があるなんて……。

ドドの『スパイシーツナ』はムッシー村の虫たちには伝わらなかった。だけど、現地の人の心をめちゃくちゃ動かす極上のスシだったってことか‼︎



その夜はどんちゃん騒ぎだった。

村の虫たちに洞窟の虫たち、そして僕らの一行が全員集まっての宴が開かれたのだ。

アリ店長とヒアリ店長は肩を組み合ってお酒を飲んでいる。


「はぁ……またか」


僕は酒が嫌いだ。「体に悪いものを、なぜ自分から飲むんだろう」と思っている。いつもだったら飲みすぎないように注意するところだ。

しかし今日はそれをしなかった。ドドのスシが敗北をも覆し、ついにスシ職人のが七分の五となったからだ。しかもその五人目は星をも超えてやってきた虫! 僕たちは種族の壁を乗り越えて、どんどん仲良くなっていっている。こんなに素敵な日はない‼︎


みんなの腹が満たされた頃、ドドはヒアリ店長に話しかけた。


「一応聞きたいんだけどさ……昼に言ってたアメリカの職人ってどんなやつだ?」


それを聞いて、すっかり酔っ払ったアリ店長はドドに絡んだ。


「……お? ドド、次はそいつを捕まえるつもりかぁ?笑」

「酒臭っ! ……いや、流石に地球まで行くつもりはないさ。ただの興味だよ」


アリ店長と違って酔いに強いのか、ヒアリ店長は冷静に答えた。


「meも会った事ないから詳しくは知らないヨ。名前ならわかるけど」

「そうか……じゃあ名前だけでも教えてくれ」

「その職人の名前は……確か『アメ・リーラッシャイ』」


それを聞いて僕たちは驚いた。

え……? 姓が「リーラッシャイ」⁉︎

ヒアリ店長はドドの姓を、聞いてなかったようだ……。


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