第三章「二人の友情」
前章の登場人物まとめ
・「ボーン老人」:ピラミッドに向かうジェムたちに助言と道具をくれた人物。
・「ボー・ニンゲン」:世界で一番快適なトイレを決める旅をしている下ネタ野郎。ドドへの贖罪のため、仲間となった。
・「ピザード・トライアングル」:ピラミッドの一族の末裔。死体を操る力を持つ。
数分間、暗黒の世界に閉じ込められていた僕たちは目と鼻は開きたくもないし、耳からは何も聞こえない状態だった。
だが今は耳に、水の流れる音が入っている。肌では、体についていたものも、徐々にはがれ落ちていっていることも感じた。
「あれ? 僕たちボーのアレに埋まったはずじゃ……」
「そうだが……。雨かなんかで助かったのか? いや、完全にはがれたわけではないが……」
「いやいや、こんな砂漠に雨なんか降るか? もしかしたら誰かが助けてくれたのかも」
「いやいや、それこそありえないだろ。神秘のネタ以外の用事でこんなとこに来る物好きがいたら会ってみたいぜ」
ボーがそう言うと、ドドとダクトはキレ気味でツッコんだ。
「それはお前もだろ! この戦犯野郎‼︎」
僕は三人の間に入って、喧嘩になりそうな雰囲気をかき消すために話した。
「まあまあ、ボーもわざとやったわけじゃないし、神秘のネタも無事(アレが少しついたが)に手に入ったし、ドリあえず外に出ようよ。助けてくれたのが何かもわかるでしょ?」
外に出てみると、必死にピラミッドに水をかけてくれている人物がいた。
その人(?)を見てドドは言った。
「あの蛇口みたいな人が俺たちを助けてくれたのか」
するとダクトはあの人が何の種族かをすぐに解説してくれた。
「あれは『ライトモン族』だな。ライトモン族はDR星のどこかで人工的に作られたやつらのことだ。だから血縁はなく、生まれる前に組み込まれたものの力を扱えるらしい」
「じゃああの『ライトモン族』は蛇口、つまり水の力が使えるということだな」
「その力を使って僕たちを助けてくれたのか。……悪い人じゃなさそうだし、話しかけてみようよ!」
僕が大声で呼びかけると、そのライトモン族はこちらに近づいてきた。
「ボクは『ジョバーモン』っていう者だジョウ。君たちは?」
ジョバーモンさんがそう言ったので、僕たちは自己紹介と感謝をした。
彼は感謝されるたびにニコニコしていた。
「いやー……ほんとジョバーモンさんには助けられましたよ。……ところで、なんでこんなところにお一人で来たんです?」
と、ドドが言ったのでジョバーモンは答えた。
「あ、君たちの方が年上だから敬語じゃなくていいジョウ。ボクがここに来た理由は、話が少し長くなるけど……大丈夫ジョウ?」
……僕たちはうなずいて彼の話を聞いた。簡単にまとめると、こうだ。
ジョバーモンは、「モンタウン」という街に住んでいた。そこでは最近、神秘のスシを手に入れようとする運 動があった(僕たちはとても驚いた)。彼はそのチームの一員となった。で、神秘のネタを手に入れるために ここに行かされたそうだ。
「そしたらピラミッドが巨大なアレに覆われていて……洗うのは大変だったけど、君たちに感謝されてとてもやりがいがあったジョウ。じゃあ、ボクはそろそろ神秘のネタを探しに中に入るジョウ……ってドド? そんなに震えてどうしたジョウ?」
ドドは今までにないぐらい震えて、真っ青な表情になっていた。
確かにモンタウンの人たちも「神秘のスシ」を狙っているのは驚いたけど、それはそんな表情になる理由にはならない。僕とダクトの時はそうなっていなかったからだ。じゃあ一体、今の話のどこにそんな要素があったのだろうか。僕はドリあえずドドの発言を待った。
数秒後、ドドはついに口を開いた。
「『神秘のネタ』の在処は俺たちしか知らないはずだ。お前らはどうやって知ったんだ?」
「情報源なんてしたっぱのボクじゃ分からないジョウ。ところで……その情報ってボクたちが知ったら震えるほどまずいことなのかジョウ? 同じ目的を持つもの同士、協力すればいいジョウ。ボクは君たちに、仲間になってほしいと思ってるジョウ」
「…………まずいことなんだよ、俺にとっては‼︎ ……だが…………」
ボォン!
ドドが何か言おうとした時、ピラミッドの内部から爆発音がした。
「……なんだ⁉︎」
一同がそう叫ぶと、ピラミッドの一部が大きく展開され、そこから謎の化け物に乗ったピザードがこちらに向かって飛び出してきた。
「許さんぞ貴様ら……。おとなしく『神秘のネタ』と『ボーとかいうクソ野郎』を渡せ!」
「えー⁉︎ ……何でオレも⁉︎」
「そりゃ誰だってアレをぶっかけられたら復讐したくもなるだろ……」
「えー⁉︎ ……あいつに捕まったら殺されるのか、オレ⁉︎」
「また倒せばいいじゃない。今度はガイコツに囲まれてないから、僕らも一緒に戦えるよ」
僕がそう言うとピザードは反論した。
「何をのんきなことを……! 今回我が連れてきたのはあんな雑魚ガイコツとは違うぞ?」
「じゃあ、何だって言うんだよ。その黒いモンスターは?」
「ふふふ……、聞いて驚くでないぞ。こいつは三千年前から我の祖先によって封じられていた、古代の怪物‼︎ その名も『ピダーボマーチャ』‼︎」
「…………な、何だってーー⁉︎」
ピダーボマーチャ。それは以前にダクトから聞いた名だ。神秘のネタを手に入れるために、ピラミッドについて下調べしたときにコラムとして載っていたらしい。
そいつがまだ生きていたなんて…………いや違う! ピザードの「ネクロマンサー」で操られているんだ! だったらまた、それを壊せばいいんじゃないか⁉︎
僕と同じことを思ったのか、ドドはやつの背についているネクロマンサーめがけてシャリボムを投げつけた。だが……やつは爆弾の弓矢を使い、ドドの技を破壊してしまった。
「はっはっは! 我のピダーボマーチャをそう簡単に倒せると思うでないわ‼︎ しかし……貴様らはおとなしく降伏する気はないようだな? だったら……力ずくで奪ってもいいということだな⁉︎ やれ、ピダーボマーチャ‼︎」
ピザードの命令により、ピダーボマーチャは僕らに向けて弓矢をかまえた。
あのドドの能力を一瞬で破壊した爆弾がここに飛んでくるということだ!
「まずい……。このままではみんなやられちゃう!」
誰もがそう諦めたそのとき、ジョバーモンだけはひるまずに僕らの前に立っていた。
「ジョバーモン⁉︎ ……何するつもり⁉︎」
「ボクがこいつを足止めするから、君たちはその間に『モンタウン』に行ってきてジョウ! そこにいるボクの仲間を連れてきてくれジョウ‼︎」
その言葉に僕ら三人は驚いた。そんな中、ドドはジョバーモンにいち早く答えた。
「……ジョバーモン! さっきは言えなかったが、俺もお前らライトモンと仲間になりたい! これで俺たちは仲間……そして、俺は仲間に死んでほしくはない‼︎」
「ドド。仲間にしてくれて嬉しいジョウ。そして、ボクは死ぬ気はないジョウ。なぜなら、ボクの仲間の『ドリモン』の情報によれば、あいつの弱点は水だということがわかってるからジョウ。……そして、ボクの能力は水の噴射だ‼︎」
「…………そうか。分かった! 任せたぞ、ジョバーモン!」
「君がどんなことを抱え込んでるかは知らないけど、仲間がいればきっと乗り越えれるジョウ! どうか急いで、あいつらを連れてきてくれジョウ‼︎」
その言葉を最後に、ジョバーモンは必死にピダーボマーチャと戦い始めた。それと同時にドドは彼らとは逆方向に走り始めた。僕とダクトもドリあえずついていった……が、僕はドドの決断の意味がわからなかった。
しばらくして、モンタウンらしき街が見えてきた。
街に入る前に、僕は走る中であらかじめ考えてきたことをドドに話した。
「ドド! なんで簡単にジョバーモンを残していけたの⁉︎」
「…………仲間が任せろといったからだ」
「でも……いくら弱点がわかってるからといって、一人じゃ無理だよ! 今からでも遅くない。僕だけでも加勢に行かせてよ!」
「……ダメだ! 足止め役がいないと俺たちは全滅する。モンタウンに行けば足止め役は確実に助かる。だがモンタウンで何が起こるかは分からないから足止めに人数は割けない。だから弱点をつけるジョバーモン一人を残すしかなかったんだ……!」
「それで……ジョバーモンが殺されでもしたらどうするの⁉︎」
「もしもの話なんか考えるな! これが最善の策だ。……お前は甘すぎるんだよ!」
「はあ⁉︎ そんなこと…………」
僕は怒りを抑え込もうと考えた。しかし、感情なんてものは気まぐれで、サッと冷めてしまう。僕は静かな怒りを込めながら一言、つぶやいた。……言葉にしてしまった。
「……分かったよ。甘すぎる僕はドドについていけないんだね」
「おい、ジェム…………」
「しばらく別行動しよう。お互いにどちらが正しいのか……考えよう。もちろんジョバーモンの仲間をさがしながらだ」
「………………分かった。じゃあ俺は東を探す」
「なら僕は西に行く。ダクトはどうする?」
僕とドドは話に夢中になっていて、少し離れたところにいたダクトのことを考えていなかった。ダクト……これまで僕たちの喧嘩を黙って聞いて中立の立場に立っていた彼は、一体どのような選択をするのか。
僕とドドのどちらかに付くと思っていた。だが彼は意外で残酷な答えを出した。
「どちらにも行かない」
「…………え?」
「俺は、こんなところで仲間割れするやつらには『神秘のスシ』は手に入れられないと思う」
「…………じゃあどこに行くんだよ」
「一人で、別のパーツを手に入れに行く」
「そんな…………。僕たちと完全に別れるってこと⁉︎ ダクト……!」
僕がそう言っても、ダクトの返事は返ってこなかった。僕らは……無言で立ち去っていくダクトを引き止めることもできなかった…………。
「今思えば……僕がドドに意見を言わなければひとりぼっちにならずに済んだのかもしれないな。いや…………意見をこらえるなんて本当の仲間じゃないよね」
数分後、ドドと別れた僕はモンタウンを探索していた。こんな風に、自分が正しいことを自分に言い聞かせながらモンタウンの西を歩いていた。
……しかし、ジョバーモンの仲間らしき人物は見つかる気配がない。
そんなとき、警察みたいにパトロールしているライトモンを見かけた。赤色の体で、速そうなスケボーに乗っているようだ。僕はジョバーモンから聞いた名前、「ドリモン」の居場所を彼に聞いてみることにした。
「すみません。『ドリモン』って人知りませんか?」
「ああ、ドリモンなら知ってるギュン。ちなみにワタシの名は『スピモン』だギュン。ところで……君の顔、どっかで見たような気がするんギュンが……」
スピモンはそう言ってカバンから紙を取り出した。
どこかで見た? おかしいな。僕がモンタウンに来たのは初めてなのに。
しばらくして、スピモンは口を開いた。
「この手配書を見ろギュン」
僕はそう言われたのでその手配書を見た。そこにはなんと……僕とドドの姿が写っていたのだ……!
「分かったか? ワタシはお前を逮捕しなければならない。だからおとなしく署まで来い」
「いや……何でですか⁉︎ 僕、何もやってませんよ⁉︎」
「え、本当かギュン⁉︎ …………イヤ、ドウセ嘘ニ違イナイ。はいはいみんなそう言うギュン。ちなみに、実はお前が会いたいというドリモンは、警察署で尋問係をやってるんだギュン。……こんな形だが会えてよかったギュンな」
「くっ……分かりました」
僕はドリあえず警察署に着いていって、ドリモンに事情を説明して仲間になってもらおうと考え、そのままスピモンに連行された。
「……君が指名手配犯? そんな風には見えないドリが……」
「そうです、何かの間違いですよ! 僕は友達のジョバーモンに頼まれてこの街に来ただけなんです!」
僕がそう言うと、ドリルをまとったライトモンは嬉しそうな顔で話しだした。
「君、ジョバーモンの仲間なのドリ⁉︎ それで彼はボクたちに救援を頼みに君をここへ送ったと……。分かった、信じるドリ! 今からでもみんなを連れて砂漠に行くドリー!」
おお、それはありがたい! ライトモンが人を信じてくれる種族でよかった……。
僕がそう安心していると……ドリモンは目の色を変えて急に襲いかかってきた。
「…………ナンテ言ウトデモ思ッタカー‼︎ 死刑にしてやるドリー!」
キュイィィィン!
「危なっ! 急に何するんだよ⁉︎」
そう言った頃には僕の周りはドリモン含めて五人のライトモンたちに囲まれていた。どうやらこの人たちがジョバーモンの仲間達のようだ。
しかし、今の彼らとジョバーモンに聞いた彼らはまるで別人だった。
「指名手配ダ、ヤッツケル」
彼らは何かに操られているのか、僕を倒すことしか考えていなかった。
ドドもダクトもいないし、もう一人で戦うしかないのか……? いや、僕にはまだ、もう一人の仲間がいるじゃないか!
「ドリラッタッチ、『ボー・ニンゲン』‼︎」
「……出番か⁉︎ 敵の沈静化ならオレに任せろー!」
ボーが下ネタを出そうとすると、ライトモンたちの一人が立ちはだかった。
「ボクはトイレモン! 数々のアレを受けてきたトイ! お前の攻撃は無意味トイ!」
「……それはどうかな?」
ボーはアレを排泄し、トイレモンはそれを自慢の便器で受け止めた。だが……
「『巨大化』!」
「なんだとイー⁉︎」
トイレモンはボーの巨大なアレを正面で喰らってしまい、臭いで気絶した。
トイレの力をもつ彼の前でアレの構えをすることで、油断を誘ったんだ。それにしてもボーはすごいな。いつの間に『ヒト族の能力』をコントロールできるようになったんだ⁉︎
「負けてられないね! 僕も戦うよ!」
「……ジェム、お前も戦えるのか⁉︎」
「そういや、今まで道具しか使ってこなかったからボーは知らないんだね。僕も一応、『ムシ族の能力』を扱えるんだ!」
僕には『アリ店長』の他に、師匠が一人いた。その人物、ヒト族の『おっ3』はある日『ムッシー村』にやっ てきた探検家で、洞窟で凶暴なムシたちに襲われていた幼い僕を助けてくれた。そこで幼い僕はおっ3に弟子 入りしたんだ。「僕に戦闘の技術を教えてください!」「別にいいぞ。ジェムとか言ったな。まずはムシ族の 力を使えるようにならなきゃな」
そこから数ヶ月、僕はおっ3に戦闘技術を学び続けた。しかし…………ある日おっ3は「息子の元へ帰らなきゃ いけない」という手紙を残して旅立ってしまったが。
僕はそんなことを思い出しながら、ライトモンたちと戦った。
「おっ3は手紙で言ってくれた! 『ムシ族の能力』に関しては、僕は強いって!」
まずはスピモンが僕に対し、突撃してきた。
「トイレモンの仇、ワタシがとるギュン!」
スピモンの能力はどうやら、スピードを自在に変化させることらしい。僕はドリあえずカタツムリの殻を投げつけてみたが、彼の能力によって球速(?)が落ちてしまい、殻は地面に落ちてしまった。
「お前の攻撃はワタシには無意味ギュン!」
「……本当にそうかな? 僕はまだ『ムシ族の能力』を使ってないけど」
スピモンはそんなの知るか、という感じで僕に突っ込んできた。
では説明しよう。「ムシ族の能力」! それは「自分が好んで食べたものを自由に操れる」というものだ‼︎
つまり……
「僕はカタツムリの殻を自由に動かせる! くらえーー‼︎」
僕はさっき地面に落ちた殻を浮かせ、ものすごいスピードにしてスピモンの首に命中させたんだ。それを受けたスピモンは…………気絶した‼︎
「よし、これで残り三人だ!」
残った三人のライトモンは、「ドリモン」「スシモン」「こうじモン」と名乗った。
「許さんドリ……。ボクたちの仲間を二人も……」
「ドリモン、ボクたちも戦うスシ!」「ああ、防御ならワイに任せろ!」
辞書で見たことはあるけど……これで明らかになった。ライトモン族というのはどうやら「他人を信じやすくて仲間思いな特殊能力使いたち」のようだ。だが……
キュィィン!
こんな考察をしている間に、ドリモンのドリルはボーを気絶させてしまっていた……!
「そんな……! ボー…………‼︎」
僕は彼のドリルから発せられるギラギラした光沢が恐ろしくて、それを眺めることしかできなかった。
「ついに一人になったドリね……」
「くそお……!」
僕はピンチになって、やっと今までの行動の悪さを思い知った。
ドドと喧嘩して別行動にしたこと。ダクトをあきれさせて失ったこと。
全部……全部僕がいけなかったんだ。ジョバーモンを心配するあまり、彼の覚悟を無駄にしてしまった。人を信じやすく、悪人に騙されやすいライトモンたちと仲間になるためには、厳しく接して力で抑える考えの方が必要だったということなのか。
「ごめんよ……ドド。僕のせいで……」
「泣いて謝っても遅いドリ。指名手配はおとなしく牢に入るドリー!」
キラッ……!
……絶体絶命のその時、ドリガジェが光りだした……⁉︎
いや、光っているのはドリガジェにセットされた「白紙のラッシャイカード」だった。
「な、なんの光スシか⁉︎」
その光が収まると、白紙のカードにはドドのデータが書き込まれていた。
「これは……ドリガジェが、僕とドドを真の仲間と認めてくれたってこと⁉︎」
「何を一人でぶつぶつと……もういいドリ! この自慢のドリルで砕いてやるドリー!」
ドリモンのドリルが僕に迫りつつあるとも知らず、僕はドリガジェにカードをかざした。
「……『ドリラッタッチ』‼︎」
ビカッ‼︎
光が、いつもと違う⁉︎ ドリガジェは僕らを祝福するかのように、赤色の光を出していた。その光はとても美しく、まるでバラの畑のよう……いやちょっと違うかな。
何かに例えようとしていると、「ドド・リーラッシャイ」の姿が現れた。彼はすぐに戦闘態勢になり、シャリを練りだした。
「なんでライトモンがジェムを襲うか知らねえが……その手を止めろ! 『シャリボム』‼︎」
「…………ドリー⁉︎」
ドォン!
ドドのシャリボムはドリモンを吹き飛ばし、ドリモンは壁にぶつかって気絶した。
それを見た他のモンたちも戦意を失ったので、ドドはほっと一息をついて僕に話しかけた。
「ジェム、一人で反省していたようだがそれは違うぞ。ライトモンたちを仲間とするには、お前の優しさも必要だと……俺も反省するべきだった」
「ドド! なんでさっきの僕の気持ちが分かるの⁉︎」
「仲間だから……と言いたいところだが違う。呼び出されるとき、お前の気持ちが伝わってきたんだ。おそらくドリガジェのおかげだろう」
僕はそれを聞いてそっとドリガジェを撫でながら語りかけた。
「そっか……。ありがとう、ドリガジェ。君のおかげでドドと仲直りできたよ」
ドドと僕は、前よりも強くなった友情を感じて、笑いあったり、泣きあったりした。
無事に僕とドドに友情が戻っても、状況はまだまだ深刻だった。
ダクトは仲間から抜けてしまったし、ジョバーモンは今も戦っている。そして今すぐ片付けるべき問題点は……!
「ライトモンたちはなぜ僕らを襲ったんだろう」
「えっと……。ジェムがドリモンと話した時は、ジョバーモン救出のために仲間となることに協力的だったんだよな?」
「でも、突然みんな一斉に襲ってきたんだ」
「そうか。おい、スシモン&こうじモン。お前らはなんでジェムを襲ったんだ?」
戦いの後に戦意を失った二人のライトモンは、すっかり落ち着いていた。
「ごめんけどボクはよく覚えてないんだスシ! そもそもボクらがジョバーモンの仲間の君たちを襲おうと思うなんて、普段ならありえないスシ!」
「……覚えてないだと? こうじモンはどうなんだ?」
「ワイは少しやが覚えとるで……。あれは、今から三十分前ぐらいか。何者かがワイらに話しかけてきたんや。それで……そこからの記憶は曖昧や」
「そしてその何者かの容姿は覚えてない……と」
「…………すまんがその通りや」
僕たちはしばらくそれぞれの考えにふけった。
三十分前……? 僕とドドが分かれてモンタウンに入ったぐらいの時間じゃないか?
てことは僕が指名手配扱いされたのも、その何者かのせいなのか? でも一体誰が、何のために? ライトモンが操られていたのはわかっても、これだけは分からなかった。
数十秒の沈黙の中、ドドは明るく声を出した。
「でもさ、ライトモンたちは正気に戻って俺らと仲間になってくれるって言うんだ。『スシモン』というスシ職人も仲間になってくれたことだし、ドリあえずジョバーモンを助けに行こうぜ。その『何者か』の目的も、旅の途中でいつか……分かるだろうしな」
「そっか……そうだよね!」
僕もドドの意見に賛成して、街を出る準備をしようと思った時、こうじモンは言った。
「そういえば……『神秘のスシ』のためには、スシ職人がいるんやったな。実は……」
「こうじモンさんはこの前、スシ職人のロボットを完成させたんだスシ!」
「それワイのセリフやー! 勝手に言うなアホ!」
スシモンはこうじモンにゲンコツをくらい、頭を抱えることとなった。
…………え? そんなことより、今さらっとやばいこと言わなかった?
ドドは僕の気持ちを声に出して言ってくれた。
「え? スシ職人を作った⁉︎ どどどどどどういうことだよよよ⁉︎」
ドドのその慌てっぷりは、さっきまでの深刻な空気を吹き飛ばすくらいの笑いを呼んだ。
「まあ、『百聞は一見にしかず』や。見た方が早いやろ」
こうじモンはそう言って、自分の家(工場)からロボットを引き連れて戻ってきた。
ちなみにドリモンやスピモン、トイレモンやボーはすでに目を覚ましている。みんな軽傷で済んでいるみたいで、本当によかった。
そして、こうじモンは先頭に立ち、スシ職人のロボットを起動した。
プシューー……ギギギ……ウィーーン!
「さあ、あいさつせえ、ワイの傑作ロボ、『メカ・リーラッシャイ』!」
「はあ⁉︎ ……『リーラッシャイ』⁉︎」
「ああ。元々は『メカモン』って名付けようとしたんやけどな? スシ職人をイメージして作ったら偶然、お前と似た姿ができてたからそう名付けさせてもらったんや」
「はあ……まあいいか」
ドド&こうじモンによる名付け論争はさておき、メカはついに音声を発した。
「……ギギ…………ワタシノ名前ハ『メカ・リーラッシャイ』。ワカラナイコトガアレバナンデモキイテクダサイ。アト、カワイイ女ノ子ガイタラ紹介シテクダサイ。ソシタラオ礼ニ私ノ(ーー自主規制ーー)ガツイタ寿司ヲサシアゲマス」
…………一同はメカが発した最後の言葉に固まった。特にドドは顔が真っ白(元々か)になっている。こうじモンはそれを見てニヤニヤしていた。
「こんな変態の……どこが俺にそっくりなんだよー‼︎ ぶっ壊してやるー!」
「まあまあ……ドド、落ち着くドリ! きっと彼は動きたてでちょっとおかしいだけドリ! それに彼を壊したら貴重なスシ職人の数が減るドリ!」
「いや、『神秘のパーツ』はまだ一個なのに対しいて、職人はもう四人もいるんだ! ……一人ぐらいいなくなっても…………」
そんなドドの言い分に、ドリモンは納得したのか(⁉)ドドを止めるのをやめ、ドドの拳がメカに届こうとしたその時、僕のバッグの中で何かが振動した気がした。
「…………? 何だ?」
そう言って僕はバッグを探ると、すごいオーラを放つ皿が入っていた。
「これはまさか……」
僕が大きい声でそう言うものだから、ドドは拳を止めてこちらを見た。
「どうした、ジェム……? 何……⁉︎ それって……まさか……!」
「「…………『神秘の皿』⁉︎」」「え、それって『神秘のパーツ』のことギュン?」
僕たちはとても驚き、ライトモンたちも不思議そうな顔をしていた。
「神秘の皿」⁉︎ 都合良すぎないか⁉︎ というか何で僕のバッグに……⁉︎
さらなる疑問が降りかかった時、すでに僕らの前には、モンタウンの出口が見えてきた。
一人で歩いているときは長く感じたこの道も、仲間と話していると一瞬に感じたのだ。
この街では本当に色々あったな……。ドドと喧嘩して、仲直りして、ライトモンたちと戦って、仲間になって。スシ職人二人と、『神秘のパーツ』をゲットして。
でも……ダクトはいなくなったし、僕らの邪魔をしてくる人物は謎のままだ…………!