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エピローグ「冒険が突然降ってきて」

前章の登場人物まとめ

・「ドド・リーラッシャイ」:差別のない国を作ることを目指す、ジェムの親友。念願の目標であった神秘のスシを食べ、ブラックホールに対抗できるほどの力を得た…が。


……あの戦いから一週間が経った。


この星は今日も平和に回っている。

一人の犠牲のおかげで……。


あの後……無事にDR星にロケットで着陸した後のことだ。

あの時、しばらくは全員がそれぞれ、静かに泣いた。

誰もが、互いに声を掛け合うことができない時間だった。







それから一晩が過ぎ、朝になるとアリ店長、ヒアリ店長がみんなを呼び集めた。

ドドのことには一切触れず、「これからどうするか」について語ろうと言ったのだ。


さすがは店長、コミュ力が高い。

本当にあの雰囲気から話し合いに切り出せるのは羨ましい才能だ。


しかし、「これから」か……。

今までは、ドド・リーラッシャイという存在のおかげで、みんなには「神秘のスシを手に入れる」という共通の目標があった。だが、今の僕らには、そのどちらもない。


このメンバーと旅ができるのは、今日で終わりかもしれない…………。







最初に手を挙げたのはジョバーモンとトイレモン、そしてボーだった。


「オレは……お前らと出会うまでは最高のトイレを探す旅をしていた。でも、それはこの旅の中で見つけることができた! だからオレたちは次に、最高の紙を探しに行くことにしたぜ‼︎」


「ボクは正直興味ないけど……ボーと旅するのは楽しいからついていくジョウ!」


「断じて、ボーの趣味を理解したわけじゃないトイ!」


はは……わっはははは‼︎


さっきまでのしんみりした空気が嘘のように、大爆笑が起きる。


ボー……こうなることを考えて一番に手を挙げたのか? いや……まさかね。


ともかく、おかげで僕たちは笑いながら三人を送り出せた。








「あいつらの人生だドリ。他人には理解できずとも、楽しければそれでいいドリ〜」


次に手を挙げたのはドリモン、スシモン、スピモン、メカの四人だった。


「ボクらはモンタウンに戻って、セキュリティ強化をするスシ!」


「ライトモンの素直さは短所でもあるが、誇るべき長所だギュン。

だから……人を疑う教育をするのではなく、不審者が来るのを防ぐことにするギュン!」


「ワタシハ寿司屋ヲオープンシマス。ロボットノ寿司屋ナンテ女子ウケガ良サソウデ……グフフ、楽シミデス」


ライトモン族はみんな性別がないから……女子はなかなか来ないと思うが…………

あえて言わないでおこう。そうして、純粋四人組は故郷へと帰って行った。








「HAHAHA! メカに彼女ができる日は来るんデスかね?笑」


そう笑いながら手を挙げたのはヒアリ店長。そして、アメとインタプレトモンだ。


「Meはアメさんのロケットに乗せてもらって、一旦故郷に帰ろうと思いマス!」


「ジェムさん、いろいろとお世話になったヤク〜」


いやいや、お世話になったのはこっちの方だよ。

そう言おうとすると彼は僕の口を塞いだ。


「本当にお世話になったんだヤク。だって、君のおかげで……!」


インタプレトモンが笑いながらそうささやいている途中、アメが話に入り込んできた。


「Stop! インタプレトモン。……あとは私が言う」


「分かったヤク……。じゃあ先に店長さんとロケットに乗って待ってるヤクよ〜」


そう言ってインタプレトモンとヒアリ店長は僕らに手を振って別れを告げた。

ひと段落ついて、アメは僕に言う。


「ええと……虫、じゃなかった。ジェム……でいいか? 

その……宇宙ではいろいろ暴言を吐いてすまなかった。

あの時は、お前がドド兄やシャド兄を害する存在だと思ってて……でも、全然そんなことなくて良かった‼︎

それだけ……それだけ言いたかったんだ。……Good Bye! 

たまにはこっちにも遊びに来てもいいんだぞ!」


「え……う、うん! じゃあね、アメ‼︎」


アメは僕がそう言うと、すぐさま後ろを向いてロケットへと走り出していった。


なんだったんだ……? 謝りたがってたくせにすぐ帰るなんて、変なヤツだなぁ……。


ゴゴゴゴゴ……


僕たちはロケットが宇宙へと飛び立つのを、静かに見送った。








「……じゃあ、最後は俺達の番だな」


そう言いながら手を挙げたのはシャドと悪人たち。合計二十名だ。

百人はいた……はずなのに。


「ドドさんがいないから……差別のない国を期待するのはやめた」

「俺たちは自分達の手で差別を無くしに行く」

「そして、旅をしていれば道中で運よく、ブラックホールから落下できた仲間たちに会えたらいいなと思ってる」


あの戦いで一番の被害を受けたのは、間違いなく「ダーク族」だろう……。

それなのに、文句の一つも言わずに希望を持った目をしている。


名前は悪人でも、彼らはもう立派な善人だ。


「そういうわけだが……ジェム」


シャドは真剣な目で僕に語りかける。そして素早く頭を下げた。


「おっ3の件は……本当に申し訳なかった。お前が望むなら、どんな裁きでも受けよう」


故意に殺害したわけじゃない……

そんな言い訳をしないのは、改心した何よりの証拠だ。


「…………頭を上げて。シャド」


「しつこく言っているが、もう一度聞く。本当に……こんな俺を、許してくれるのか……?」


……ははっ。そんなに罪を償いたいのか?

 だったら…………。


「よし、ではシャド。君に裁きを与えよう。

その内容は『ダーク族への差別をなくすよう尽力すること』そして、『おっ3の遺族にきちんと謝ること』だ。

これを完遂できない限り、僕はお前を一生恨むことにする!…………これでどうかな?」


これでいい。これで、心を曇らせずに悪人たちと旅ができるだろう?


「ふ、了解です。……ジェム裁判長。」


かつては殺したいほどの恨みを向けた相手との別れは、双方が笑顔で終わった。








「…………………………。」


こうして僕とアリ店長以外の全員が去って行った。


ふと、寂しさが込み上げてくる。

ドドなら……彼らに対して、どんな裁きを与えたんだろうか。


アリ店長は背後から、心配そうに僕に話しかける。


「ジェム……。お前は、どうするんだ?」


「…………。僕の夢は、人にもらってばかりだった。

そんな友達が……ダクトとドド。二人ともいなくなっちゃったんだ。

……どうすることもないよ。旅立つ前の生活に戻るだけだ」


「……………………そうか。」


店長の行き先もムッシー村だった。僕たちは最低限の会話だけで、故郷に帰って行った。


何か……本当は、他にもできることがあったと思う。

ボーたちとの旅、アメリカ観光、差別をなくす活動……一人旅という選択肢もあった。


だけど今の僕は、以前までの、どんな危険でも行動に移せる僕とは違った。

精神が疲弊しているんだ。


ドリあえず……ドリあえず、一番楽で安全な選択をとってしまった。















「十四年前のある日、ラッシャイタウンという街にブラックホールが襲いました。

かの有名な『リーラッシャイ一族』は、そこで街とともに消えてしまいました……。

ブラックホールは最初に生まれたダーク族ですが、みなさんは決して今のダーク族の人々を恨まないようにしてくださいね。

では、今日の授業はこれで終わります」


ここはDR星の最ものどかな村「ムッシー村」。

しかしそんな村にも悪い噂は流れる。


「おい、聞いたか? 最近いなくなった『ダクト』って奴、ダーク族だったらしいぜ」


「マジかよ! じゃあ、アイツがいなくなったのってやっぱりダーク族だから…………」


それを聞いた僕は思わず、そう言った先輩たちに声をかけてしまった。

以前までの、旅に出る前の僕ならば、こんな噂なんて無視していただろう。


「……ダーク族だから何ですか? 僕の友達を悪く言うのは、やめてください」


先輩たちはポカンとしている。

見知らぬ後輩に急に説教なんてされたら、そうなるか。


また、やってしまった……。

そう思いながら、そそくさと学校を離れた。



……やはり、まだダーク族への差別は無くなっていない。



「ドド……! 帰ってきてよ…………!」


一人で畑に囲まれた道を歩いていると、突然空が大きな音と一緒に暗くなった……⁉︎


「え…………⁉︎」


旅立つ前と同じ状況に僕は驚いた。







僕の願いが届いた……? いや、そんなはずはない。

ドドは一週間経っても帰ってこなかったんだ。でも、突然空から降ってくるものなんて……! 


そうか、分かったぞ。

ブラックホールは消滅したのだから、過去に吸い込まれた人の誰かが落ちてきたのだろう……。


そんな風に期待を抑え込んでいると、石が目の前に降ってきて、轟音が響いた。


ドォン‼︎





土けむりがおさまると、僕の前に何かが落ちていることに気づいた。


「……? これは……筆?」


僕がそれを拾うと、石の上から声が聞こえた。


え……………………?


「ふう、危なかった……。助かりました、()()()()()さん!」


声のほうを見ると、そこには誰かが立っていた……‼︎


「まさか……!」


頭にマグロの刺身がのっていて、顔は米のように真っ白で、黄緑色の体には寿司のマークがついている。

しかも、神秘的なオーラをまとっている。それに、この筆は……⁉︎


僕は高鳴る心臓を抑えながら、()()を見つめる。


「……心配かけたな、ジェム!」

「お久しぶりフデ〜」


「ドド……本当にドドなの……? うわぁぁぁぁぁああああ‼︎」


僕は涙を流してドドに抱きついた。偽物じゃないことは、アートモンが証明している‼︎


ドドを見ると、彼の目からも、僕につられて涙がこぼれていた。


「勝手な行動をとって……本当にすまなかった」


「グスッ……。いいよ。……こうして、帰ってきてくれたから!」


ドドは一息ついた後、なぜ助かったのかを説明してくれた。




 あの時、ドドはブラックホールとの耐久戦に持ち込むことに成功した。

 しかしこのままでは、たとえ撃破できたとしても、ブラックホールの消滅の衝撃により力尽きてしまう。

 僕らが危惧していたことと同じ結果になってしまう。

 神秘の力も限界がきて、あたりが暗黒の宇宙に飲み込まれそうな瞬間。

 彼の鞄から突然、アートモンが飛び出して防御壁を作ってくれたのだという。





つまり、アートモンはドドの命の恩人……⁉︎


「本当にありがとう、アートモン!

……ところでなんでドドの鞄に?」


僕がそう尋ねるとアートモンは笑って言った。


「ある人物に頼まれて、いざという時のために潜んでいたんだフデ!」


「え…………? その人って一体……?」


「それは……その人物に秘密にしろって言われてるから教えられないフデ!」


一体誰が…………? 

僕は馬鹿だから、いくら考えても分からなかった。


そういえば……僕らの旅は、都合のいいことばかり起きていたな。


もしかして神様の御加護……? それともおっ3が……? なんて考えたりした。


僕の予想は全て勘違いで、感謝する対象を間違えているかもしれない。

しかし憎悪とは違って、感謝というのはいくら向けられてもいいもの。


だから、たとえ間違っていてもそういうことにしておこう……。

そして、本当の「ある人物」が分かったらその人に最大級の感謝を伝えればいい。


もし、伝えることができないような人物だったら…………?


「…………ねえ、ドド。一緒に旅に出ようよ」


「え……? 『神秘のスシ』はもう見つけただろ? 何を探しに行くんだ?」


「…………『ドドの夢』を実現させるための方法だよ‼︎」


ただ、()()()()()のこんな僕にも、助けてくれる人がいる。必要としてくれる人がいる。


伝えられなくてもいい。利用されたっていい。


僕は、その人が望んでいる行動を…………。





冒険は突然降ってきて、突然終わる……ことなんてない……!


その冒険で得た「つながり」を経て、次の冒険へと進んでいくんだ。


ここまで読んで頂いた方、本当に……本当に、ありがとうございました!!!!


DR星の冒険譚はまだまだ続きます。次回作『絶望Reproduction』をご期待ください!

今度は初心者要素をなくして、序盤から技術を込めて書きます!

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