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第十一章「神秘の力」

前章の登場人物まとめ

・「ブラックホール」:かつてラッシャイタウンを滅ぼした巨大なダーク族。ダクトの力によってこの場に現れ、利用されている。


ああ…………まずい状況になってしまった!


近くにいたスピモン、ジョイレモン、ボーは闇の中へと飲み込まれてしまった。


「そんな……」

「神秘のスシは間に合わなかったのか……?」


しかし、奴は休む暇を与えてくれない。

洗脳魔王は不敵に笑う。


「さあ、最終決戦を始めようか」


ただでさえ強いドリモンがあんな姿に強化されて襲ってくる……!

いくら僕と悪人たちが協力したところで、かなうはずが無い……!


……その時。

絶望的な状況の中、一筋の光が僕たちの横を通り過ぎていった。


その光はそのまま真っ直ぐに、洗脳されたドリモンめがけて向かっていく。

その光の正体は、目では捉えられなかったが、僕はにおいで理解できた。

あれは………………ドドだ!!


「……ドド‼︎

神秘の力を得られたんだね。でも……ボーたちが…………」


「……ジェム、話はあとだ。まずはドリモンを……正気に戻す!」


「そんなことが……できるの⁉︎」


その答えはドドではなくアメが話してくれた。


「『神秘のスシ』の力にとっては、あいつの洗脳を破ることなんてたやすい」


そしてシャドが僕の肩に手を置き、言った。


「状況が状況だ。神秘のスシはあいつが食べることにしたんだ。

……勝手に決めてすまない」


少し離れた場所からアリ店長とヒアリ店長の、「俺も食べてみたかったぜ」という会話が聞こえてきた。

それを聞いて僕の絶望は少し消える。

……笑って、シャドに答えた。


「いや……いいよ。

僕も食べるならドドが適任だと思ってたし。実際その素早い判断のおかげで僕たちは助かったんだ」


それを聞くとシャドも少し笑って、僕との会話を終えた。







神秘のスシの力を得たドドは何やら呪文を唱え始めていた。

その間もドリモンは攻撃し続けていたが、ドドはそれをかわし続ける。

その姿はまるで……神様みたいだ。


「よし、詠唱終了だ。還ってこいドリモン……『テッカーム』!」

パァァァ……


この光は……! ドリガジェが僕を闇から救う時のと似てる…………?


そして……ドドの発した光を浴びたドリモンは、みるみる元の姿に戻っていった!


しかし、彼は目を一度開いた後、すぐに目を閉じ……横に倒れた。


「無理もない……。本来越えてはいけない限界を、無理やり引き出されていたんだ」


ドドがそう言うと、洗脳魔王はニヤリと笑った。


「俺が憎いか? ドド・リーラッシャイ」


「そうだな……。ブラックホールの周期もお前の仕業と知った時は驚いたぜ」


ドドと洗脳魔王はじっと見つめ合い、戦闘態勢に入る……。

…………かと思いきや、()()()は突然降参のポーズをとった⁉︎


「どうやら最終決戦はこれから……そして俺は『神秘の力』に敗れるみたいだな」


「降参だと……⁉︎

ふっ、未来予知までできたのか? まあできてもおかしくないぐらい、お前は厄介な敵だったぜ……。

さあ、今までしてきた罪を償う時だ、ダクト」


ドドがそう言うと、ダクトは気の抜けた声で彼に質問をする。


「…………お前も、俺を殺すつもりがないのか……?」


「シャドは生かしといて、お前は殺す。そんなことしたらそれこそ差別だろ。

差別のない国をつくるって言う俺がそんなことできないよ。たとえお前が魔王でも、殺さない」


「………………!」


「ふふ……どうやらこれで戦いは終わりっぽいね」







アークスパイダーやボー達は吸い込まれただけで、死んだわけじゃない。

ダクトの洗脳の力があれば、簡単に救い出せるだろう。


そう、この戦いは誰も死なずに終われたんだ!


アリ店長たちが温かい目で僕たちを見て、言う。


「ジェム、ドド、そして……ダクト。俺たちは先にロケットに乗りこんどく」


「その大罪人をどうするかは、君たちに任せるスシ」


「今は大人しくなっているが、ブラックホールはいつ暴走するか分からない。

積もる話もあるだろうが、なるべく早く来ることだな」


そう言って仲間たちは去っていき、僕ら、始まりの三人組だけが残った。


「さあ、ダクト。『闇の暴走』って疲れるんでしょ? 元に戻って一緒に帰ろう?」


僕はダクトに手を差し伸べる。そして彼は僕の手を……


……取らなかった。


「……………………………………⁉︎」


「『強制強化』『ポルターガイスト』。『全てを滅ぼせ』…………ブラックホール‼︎」


「グ……グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ‼︎」


鳴り響くブックホールの轟音。

それに気を取られて気づかなかったが、僕の手はいつの間にか、血で塗れていた。


…………ダクトが吐いた血だ。


「なんでまだ……⁉︎ 馬鹿野郎……そんなことしたらお前も死ぬぞ!」


「はぁ……はぁ。そうだな、そのつもりで()()を奴に託した」


「そこまでして……やることなのかよ! お前の『目的』ってのは⁉︎」


外からから見れば馬鹿げていることでも、人の夢は馬鹿にしてはいけない。


そう分かってはいるんだけど……ダクトの夢は夢っていうより、使命感というか……

何かに取り憑かれているような気がして、僕は涙を流してそう訴えてしまった。


「別れの時間だ、カブリ。お前との学校生活、楽しかったぜ」


「は……? 今更何を…………⁉︎ ……僕は、もう騙されないぞ。

ははっ……どうせ、どうせ…………また僕を利用するために嘘をついているんだろう?」


ずるいよ、ダクト……

さんざん人を騙して、傷つけてきた悪役のくせに、最後には「友達」みたいなセリフを吐くなんて。


本当に、いろんな意味で、人を泣かせるのが上手い。


「ああ、そうだ……」


ズオオオオオオオオオオオオオオオ…………!


何かを言いかけたのか、それとも嘘だと肯定したのか……?


ダクトの言葉の真実は、轟音と共に闇の中へと消えていく。

そして……ブラックホールは僕らのすぐそばで吸引を開始した。


「こんな結末…………あんまりだよ」


ビカッ‼︎


僕が泣きながらそう言うと、突然素早い光が僕らの前に現れ、すさまじい衝撃を起こした。

その衝撃とブラックホールはぶつかり合い、僕は後ろへと突き飛ばされた。


ブラックホールから僕が離れていくたび、光はギラギラと明るさを増していった。

ダクトも……ドドも、近くにはいない。


彼らがどうなったのか……その光に遮られて見えなかった。














「……ジェム! ……おい、起きろ‼︎」


アリ店長の声だ。僕は寝てたのか……?

あれ……ここはどこだ? 服は、宇宙服のまま。


つまり、残念なことにあれは夢なんかじゃなかった。でも重力は感じる。

と、いうことは……


「ここは……ロケットの中だドリ」


「ドリモン……目を覚ましたんだね。ところで、ダクトとドドは⁉︎」


僕がみんなにそう尋ねると、全員の顔が暗くなった。

それと同時に、轟音が鳴り響く。


ズオオオオオオオ…………! ドドドドドド……


ブラックホール……。それと……何の音だ?


「今、一体何が起こっているの⁉︎」


僕がそう聞くと、シャドが覚悟を決めた表情で話した。


「今……ドドが…………あの馬鹿が、ブラックホールと戦っているんだ」


「え……………………? そんな…………」


てことは、あの時の光はドドだった……? そうだ、ドドの本来の目的は……。


『神秘のスシ』の力を得たから、一人でブラックホールを滅ぼそうとしてるのか…………⁉︎


でも、ダクトのせいでブラックホールは最大限に強化されている! 

いくら神秘の力を持っているからといって、無事に済むとは思えない‼︎


「……助けに行ってくる!」


僕は興奮状態で外に駆け出そうとした。しかしそれはシャドに止められる。


「気持ちは痛いほど分かる……だが、神秘の力を持たないお前が行っても一瞬で消え失せるだけだ! 

あの魔王……ダクトのように…………」



え……ダクトが消えた…………?



「ドドはお前たちを助けようと、こちらに向けてお前たちを投げ飛ばそうとしてた。

でもブラックホールの力が強すぎたのか、ダクトだけは吸い込まれていった……!

ドドはそんなあいつを……そして、DR星を救おうと、今戦ってる」


「じゃあ……じゃあ尚更だよ! 

 僕だけが運よく助かって、何もせずに二人が辛い目にあうのを見るだけなんて嫌だ‼︎ 

 今すぐ助けに…………」



僕が扉の前からシャドを突き飛ばそうとした時、大きな声が響いた。

……アリ店長だ。


「…………うるせぇ‼︎」


ビクッ……と思わず震えてしまった。店長は力強く話を続ける。


「お前はおっ3の件で何を学んだ……? 

 いろいろあったと思う……が、その一つに『相手が望んでない無駄死には避けること』があったはずだ……。

 今行ってもドドは喜ばない」


確かにその通りだ……と僕が落ち込んでいると、アリ店長は……今度は優しく語りかける。


「でもな。俺たちもお前と同じくらいあいつを心配しているんだ。

心配なのに駆けつけることができない…………。そんな時、役に立つ機械をお前は持っているんじゃないか?」


あ…………!


「ドリガジェ……? そうか! それがあった‼︎」


僕は希望を持ってラッシャイカードとドリガジェを取り出す。


まずはボー、スピモン、ジョバーモン、トイレモン。失った仲間たちのカードをかざしてみた。


「『ドリラッタッチ』!」

ギュルルルルル……


「……はっ」

「ここは?」

「ボクたち、吸い込まれたはずトイ……」

「ジェムーー! 信じてたジョウ!」


少ししか経ってないはずなのに数日ぶりに会ったように嬉しく感じる。


「みんな……本当によかった‼︎ さあ、次にドドを……」


僕がドドのカードを取り出そうとした時、アメが止めてきた。


……今度は何だよ。


「待て。ドド兄を今呼び出せば、ブラックホールが野放しになる」


「く……じゃあどうすればいい⁉︎ このままだとドドが……!」


僕がそう言うと、アメは突然、僕の耳に触れた。


「会った時から思ってたんだが……お前たちの耳についているのは通信機だろう?

 お前の耳についているのは壊れてるようだが……他のヤツのものを使えばいい。

 これでドド兄と連絡を取れるだろう? これなら無駄死にすることなく想いを伝えられる」


……通信機! 

そういえば宇宙に来てから、ずっと付いていた。


みんなにも付いてるってことは当然ドドにも…………ってことだよね⁉︎


「よし! 早速かけてみよう!」


プルルルルル……プルルルルル……プルルルルル……


「あれ? 番号はあってるはずなのに…………出ない……⁉︎」


「ということは、戦いが激しすぎて出る暇がないのか、それとも……」


僕たちの言葉を聞いてしまうと、覚悟が揺らいでしまうからわざと出てないのか……。


神秘のスシを食べた時点で、彼はこうすることを決めていたのかもしれない。

ドドはいつもそうだ。大事なことは何も言わずに一人で責任を負おうとする。

それほどまでに僕たちが大切なんだろうけど……


最後になるかもしれない時ぐらい、話したいよ。


「そんな……ひどいよ。行かないで‼︎」


ドドォン‼︎


僕が泣き叫んだ時、それをかき消すかのように爆音がした。


「ドドは……? 大丈夫なのかドリ⁉︎」


「…………外を見ろ!」


ブラックホールが……消えている! それに、大勢の人々の叫び声が聞こえる……!


「でも……ドドがどこにもいないよ⁉︎」


あたりは一面暗黒だ。救われた人々の喜びは感じても、光などみえない。


神秘の『ドド・リーラッシャイ』がいないことがひと目で分かる……。


……いや、そんなはずはない。

この冒険ではどんなピンチでも不思議とうまくいっていたじゃないか⁉︎


今回だってそうだ。きっと神様か何かの助けで……。



僕がそう願ったその時!



…………………………………………なにも、ない。




「そんな……ドド…………ドドぉおおぉおぉぉおぉおおおおお‼︎‼︎」


…………僕たちはおそらく、生涯で一番大きな声と、涙を出した。







今更だが、解決策はあったかもしれない。


ブラックホールには感情があるのだ。

奴にも……死にたくないという感情があって、インタプレトモンの力で苦しみを理解してあげれば、仲間にもなれたかもしれない。

一番の被害者は……奴だったのかもしれない。


あれ……? 僕らは苦しみを感じることのできる「人」を殺した……⁉︎


……それは、少年たちが抱えるには大きすぎる問題だった。


う……あ、そんなの考えたところで結果は変わらない。本当にもう手遅れだった。


だが、気持ちを切り替えたところでまた別の後悔が襲ってくる。






ドド・リーラッシャイ。彼は強くて、賢くて、仲間想いで、正義がしっかりとした人物。

そんな一見完璧な人物にも、弱いところはあって……正反対の僕は親友として、それを補う。

他にも仲間たちがいて、悪者はみんな殺さずに改心させるんだ。

そうして、この宇宙の中で最高の国が完成する……それが彼の夢だった。そのはずなのに……。


……死とはなんと苦しいものだろう。

おっ3の件で実感したはずなのに、先程までそばにいた人物だとより重く感じる。

彼とやりたかった事、全てが一瞬にして白紙に返ったのだ。


ダクトの件について一緒に考えてないし、神秘のスシの感想も聞いてない。

そして何より……僕に次の目標を与えて欲しかった。


まだ僕には、他に仲間たちは確かにいる。

だけど、誰にもドドの代わりは務まらないのだ。僕に夢や目標を示してくれるのはドドしかいない。



「突然降ってきた君が、僕にとってそこまで大きな存在になっていたんだね…………」


今まで、神秘のワサビが降ってきたり……都合のいい展開が沢山ありましたね。

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