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第九章「ドドの夢と、ダクトの目的」

前章の登場人物まとめ

・「ジェム・カブリ」:この物語の主人公。おっ3を失い、闇に堕ちてしまう。

・「アークスパイダー」:悪人が闇の暴走を使用した姿。

・「洗脳魔王」:ダクトが闇の暴走を使用した姿。

・「アメ・リーラッシャイ」:ドドの妹。アメリカのスシ職人。

・「インタプレトモン」:アメ・リーラッシャイの相棒。翻訳の力を持つ。


「ドド……みんな…………‼︎」


一ヶ月ぶりに会ったような感覚だ。

めちゃくちゃ話したいことがあるのに、話しかけることができない。そんな微妙な時間間隔。


そうして僕がうろたえているとダクトはそそのかす。


「カブリ、お前の目的はシャドを殺すことだろう? 感動の再会はその後でもできるさ」


嘘だ。シャドを殺すためにはドド達と敵対しないといけない。

そうなったらもう……


「やっぱり僕には無理だよ。ドド達に嫌われたくない……!」


僕がそう言うとダクトはため息をついた後、ニコリと笑った。


「カブリ。確かに殺すのはやりすぎかもしれない。

だがこのままだとシャドは何の痛みも背負うこともなく日々を過ごすことになる。

そんなので天国のお前の師匠は報われるのか?」


「そ、それは……」


「カブリ、俺はお前のためを思って言ってるんだ。そうでなければ俺は、今すぐお前を洗脳しているだろう? 大丈夫、傷つけるぐらいならドド達も許してくれるさ」


確かに、ダクトは洗脳を使ってない。でも、何か騙されているような気もする。

でも、確かにおっ3を殺したやつが何も罰を受けないのはおかしい! 

でも……


「でも、でも、でも……!」


「落ち着け、カブリ。そういう時はお前の本心に聞くのが一番だ。お前はどうしたい?」


僕の本心…………

友達と楽しく日々を過ごしたい……という考えがふとよぎった。

でもダーク族となった今の僕はこうつぶやく。


『仲間なんていらない』、そう決めたから……!


「…………僕は、シャドを師匠と同じ目に合わせたい」


僕がそう口にすると、ダクトは笑って悪人たちに指示を出す。


「カブリとシャドの戦いを邪魔させないようにする。お前たちはその周りのライトモンやムシを足止めしろ!」


「うおおおおおお‼︎」

「『闇の暴走』発動!」


ダクト。彼は敵に回すと厄介だが、ムカつくことに味方だととても頼もしい。


「まさかこんな簡単にお前と再戦できるとはな。シャド・リーラッシャイ!」


ムカつくやつだ。シャドは相変わらず、すました顔で言う。


「……ダーク族になった気分はどうだった? ジェム」


「ははっ、お前の言った通りだったよ。仲間に気を使わずに済んで楽だ。

でも……できることならこうはなりたくなかった! 誰のせいでこうなったと思ってんだ⁉︎」


僕はシャドに向けて怒りと共にカタツムリを投げつける。


……だがどうせ避けられる!

………………そう思っていたのだが。


「ぐはっ……」


「なんで⁉︎  なぜ、避けなかった⁉︎」


自分で言って悲しくなるが、今の一撃は感情的に投げたものなので回避はたやすいはず。

シャドは一呼吸つき、言う。


「俺のことを、師匠と同じ目に合わせたいんだろう? いいぜ、好きなだけやれよ」


「な、何……⁉︎」


こいつ……何を考えてやがる………。

もしかして、おっ3を殺したことを反省しているとでもいうのか⁉︎ 僕をダーク族に誘ったような野郎だぞ⁉︎


僕は一瞬、「反省してるなら許してやろう」と思ってしまった。

その時、背後からダクト……洗脳魔王の声がした。


「『シャド・リーラッシャイを許すな』」


その言葉をもろに聞いた僕は、再び怒りに燃え始めた。

……………………殺すしか、ない。


「うわあああああああああああああ!」


膨れ上がった憎悪から動き始める僕の身体はシャドに向けて攻撃を開始する。

今度の攻撃はさっきのように貧弱ではなく、殺意のこもったものだ。


……それでもシャドは避けようとはしなかった……けど。


ビュンッ‼︎

まただ。レーザー光が僕の攻撃を打ち砕いた。


「哀れな虫だな。利用されていることに薄々気づいているのにそれを拒めない」


「うるさい‼︎ 会ったばかりのお前に何がわかる!」


アメ・リーラッシャイ。まずはこいつから潰すべきだ! 

そう思って僕は攻撃する。


しかし、アメは簡単にはやられてくれない。


「『アルファベット・レーザー』!」

ビュンッ‼︎


さっきのレーザー攻撃はこの技だったのか!

ドドの胸には「スシ」が刻まれていたが、彼女の胸には「A」が刻まれている。

どうやらリーラッシャイ一族特有のエネルギーを「あめこみ」とやらを参考にして、レーザーに変換しているんだろう。

生まれ持った才能は兄妹でほとんど同じはずなのに、育った環境でここまで変わるのか。


「くそぉ、攻撃パターンが読みづらい!」


「それはいい事を聞いた。じゃあ私はアメリカで得た技しか出さないぞ!」


そう言ってアメは胸のアルファベットをどんどん変形させる。

AからBに、BからCへと……!


「『アルファベット・レーザー』!」


「ぐぬぬ……」


同じ技なのに、形を変えることでレーザーの範囲も変わっている。

これは避け続けるのには苦労しそうだな…………なら!


「『ぬめぬめウォール』!」


僕とアメの間に出現させた「ぬめぬめウォール」は、以前とは違ってどす黒い色をしていた。


……おぞましい。

だが強度は相当なもの。アルファベットレーザーをいとも簡単に吸収していった!


「その技は何だ……? 聞いてないぞ、ドド兄!」


「え……ドド…………?」


戦いに夢中で気づかなかった。悪人を退けて、ここまで来ていたのか!


「久しぶりだな、ジェム。その技はおっ3と作ったのか?」


そう言われて僕は歯ぎしりをする。

親友にすら怒りを覚えるとは、僕も落ちたものだ。


「うるさい! ドドに師匠の事を語られる筋合いはない‼︎」


さあどうする、ドド。

こんな僕に失望するか? それとも戻って欲しいと泣きつくか?


しかし彼がとった選択は、意外なことに怒り返すことだった。


「俺だっておっ3とは拳を交わした仲だ!

 おっ3がそう言ったわけじゃあるまいし、勝手に代弁すんじゃねえ‼︎」


「は、はあ⁉︎」


予想だにしなかった返答に、僕は戸惑う。

しかしドドは叫び続ける。


「死んだ師匠の想いを引き継ぐ。そこまでは素晴らしいよ! 

でも今のお前は、おっ3のことを自分の都合のいいように勝手に決めつけてる! 

彼は本当にシャドを同じ目に合わせて欲しいと思ってんのか? 違うだろ! 

お前の記憶の中のおっ3は、少なくともそんなことを言うような人じゃないはずだ‼︎」


親みたいな説教の数々。

はいはい……その通りだよ。ドドはいつでも正しい!


「う、う……うるせぇぇええええ‼︎」


僕の頭はオーバーヒートしたのだろうか。

涙を流しながらもドドに向けて攻撃を仕掛けた。


「『シャドー・シャリボム』!」


シャドの攻撃が僕の攻撃を打ち消した。

反撃しないんじゃなかったのかよ! クソが‼︎


「おいジェム。これは反撃じゃないぞ。俺は兄弟の手助けをしただけだ」


ドドの手助け……?


「はっ⁉︎」


気がつくとドドは僕のすぐ目の前にいた。そしてまた話し始める。


「俺は……『友達』ってのは本音をぶつけ合える存在だと思ってる。

だからさっきはずっと言いたかった思いをぶつけた。ごめんな、お前の思う『友達』とは違っただろう?」


ドドは最後、寂しそうな声でつぶやいた。


「…………っ!」


それを聞いて僕は、僕の心の奥にしまっておいた、ダーク族になる前の気持ちを話す。


「僕は……『友達』は話してて楽しい存在だと思ってた。

でもドドの言うことも分かる気がするよ。確かに、突然無視されるくらいなら何がいけなかったのか教えてくれるほうが嬉しい気がする……」


()()()()()()()がそう言うと、彼は何か吹っ切れたように笑って言った。


「そうか、じゃあお前の闇をはらうためだ。今から少しきつい事を言わせてもらう‼︎」


ドド・リーラッシャイ。

……彼は核心をついた一言を言い放つ。


「ジェム、お前はなんであんな奴らも捨てられないんだ‼︎

利用されるのが嫌なんだろ⁉︎ 俺たちと一緒に話したいんだろ⁉︎ シャドがおっ3を故意に殺したわけじゃないって分かってるんだろう⁉︎

何で周りの空気に乗せられて、やりたくないキャラ演じてるんだよ‼︎」


「うう……ぐ……ううう……!」


頭の中がまたおかしくなる。


思い返してみれば、ドドの言う通りだった。

……僕は、確かにダクトに利用されているかもしれないと気づいていた。

でも……そんな彼とすら友達でありたいと、無意識に期待していたのだろう。

そしてその心を利用され、行き場のない怒りをシャドにぶつけるしかなかった。


さすが「友達」だ。僕も気が付かなかった、僕のことをよく分かっている!


「前にも言ったことだがもう一度言うぞ。ジェム、お前は優しすぎるんだよ‼︎

 今回はそのせいで闇につけ込まれることになっちまった!

 だがな……俺には……『俺の夢』を叶えるためには、そんなお前が必要なんだ!

 だから戻って来い、ジェム‼︎」


ああ……そうか…………。


「僕は、その言葉が欲しかったんだ…………!」


……ビカッ‼︎

そう思った瞬間、カバンの中に残されていたドリガジェが光り出した。


「この光は……あの時の!」


黒い光じゃない‼︎ これは、この赤い光は……モンタウンの時の……!


ドリガジェから発せられた光は、僕を包み込んでいく。

それと同時に消え去っていく負の感情。元に戻っていく僕の身体。



…………ドリガジェは「感情を読み取って実現させる機械」だ。



パァァァ……

「できたんだ……! 元に戻ることが‼︎」


茶色の体に戻ったジェムがそう言うと、周りのリーラッシャイたちは一斉に喜ぶ。


「ジェム、やったな‼︎」

「……!」

「これで、貸しひとつだな」


見渡すと、アークスパイダーと戦っている他の仲間たちにも笑顔が浮かんでいた。


「みんな……迷惑かけてごめん! そのぶん精一杯頑張るよ……‼︎」


……しかし、この状況をよく思わない奴が一人だけいた。


「カブリ……? 師匠の仇はまだ生き残ってやがるぜ……!」


「ダクト……。もういいんだ。ドドのおかげで分かったよ。

おっ3は仇討ちなんて望んでいない。……僕はシャドを殺さない」


シャドはそれを聞いて下を向きつぶやく。


「……感謝する。ジェム」


その時、宇宙空間に液体が一粒、浮かんだ。

……それに気づかず、ダクトは言う。


「シャド……いや、村長。

お前はさも更生したかのように甘くなっているが、ダーク族なことに変わりはないぜ……。

お前はそこの虫とは違い、知っているだろう? ……あの、過酷な差別の日々を!

罪が許されたところで、お前はそこから逃れることはできない!」


ダクト……。彼にも少し同情する。

シャドにも僕にも裏切られた彼は、以前のような冷静さを持っていなかった。

仮染めとはいえ、親友だった男だ。彼も救ってあげたい……。そう思うのは甘い考えなのだろうか。


そんな時、もう一人の親友は少し脱線したことを言った。


「ダクト! 俺がいずれ作る国にはそんな差別はさせねえぞ‼︎」


「国……? 急に何を言っている……⁉︎」


珍しいこともあるもんだ。あのダクトが分からないことが僕には分かった。


「それが、さっき言っていた……『ドドの夢』なんだね!」


僕の言葉を聞くと、ダクトは笑う。


「はは、笑わせてくれる。お前が思っている以上に差別ってのは無くならねえ。

ドリガジェにも認められず、神秘のパーツも集めきれないお前にそんな国が作れるかな、ドド⁉︎」


神秘のパーツ……! そうだった、僕がさらわれたせいで……。


神秘のスシの力がなければ、数年後に再びブラックホールがやってくる。

そうなれば国なんて一瞬で消え去るだろう。

確かに、まだまだ絶望的な状況だ。しかしドドは笑っていた。


「そう、俺だけでは無理だ。だからこそ、友達……そして『仲間』の力が必要なんだ!」


その言葉が合図だったのか、遠くから叫び声が聞こえてきた。


「ダクトォォォ‼︎」

「くらえドシーーー‼︎」


この声は! スピモンとドリモン⁉︎ いや、スシモンの声も混ざってる気がする……。

……あ、ライトモン族の能力、『キズナ合体』か!


ドリモンとスシモンの融合体だから……「ドシモン」って感じか。


スピモンが速度を上げたドシモンの一撃はダクトの背中めがけて勢いよく飛んでいった。

まさかそのまま心臓を貫くんじゃ……。


おっ3のトラウマが蘇り、僕は叫ぶ。


「……やめて‼︎」


しかし僕の心配は杞憂だったようだ。

心優しいライトモンたちが人殺しなんてするはずがない。ドシモンのドリルはダクトの背負っていた鞄の紐だけを貫き、そのままUターンして、クレーンゲームのごとく鞄を取っていった! 


ドリモンの怪力とスシモンの器用さが合わさったからこそできる技か!


「ドド! 鞄の中身は……神秘のパーツだドシ‼︎」


「でかした、お前ら!」


ダクトは怒り叫ぶ……かと思いきや静かに、勢いよくドシモンたちの方向を向いた。


「ライトモンは足止めされたと思ってたが……そういうことかよ」


僕らも思わずその方向を向く。そこにはドリモンたちの他に……


「悪人たち⁉︎」


アークスパイダー……悪人たちは言う。


「俺たちは元々、差別をなくすためにダクトに手を貸していただけだ」

「だが、ドド・リーラッシャイ……色んな種族の壁を乗り越えて、さらにはダーク族となった者すら改心させたアンタが作る国ってのを聞いて、それに賭けてみようと思ったんだ!」

「俺たちはダクトより弱い……」

「それを裏切ってまでお前らに協力してやるんだ!」

「絶対に勝って、差別のない国を作ってくれよ!」


それに対して、ドドは大きくうなずいた。


「……ああ!」


ダクト……。裏切り、裏切られてついには孤独になった彼は今、どんな気持ちなのだろうか。


「『闇の暴走』発動」


「……まだ戦うつもりかよ」


「……ああ、言ってなかったな。俺の本当の『目的』は、差別をなくすことじゃないんだ」


…………⁉︎

それを聞いて悪人たちは口々に文句を叫ぶ。


「はあ⁉︎」

「俺たちは、お前が誰よりも差別に怒りを持っていると信じて、ここまでついてきたんだぞ!」

「あの時の言葉は全部嘘だって言うのかよ!」


そんな彼らの言葉を無視して、洗脳魔王は杖を振りかざす。


「俺の本当の目的は……『DR星を滅ぼすこと』」


「……は? 何を馬鹿なこと言ってるんドシ⁉︎」


「ダーク族になっていた虫みたいな厨二病発言だな」


ちょっと気にしてるから……さりげなくイジらないでよ、アメ……!

まあそんなことはさておき……だ。


「本当に、そんなことができるのか……⁉︎ ダクト!」


「できるさ。親父から継いだこの力があれば、な」


ズオオオオオオオオオオオオオオオ…………



彼がそう言うと、上空から轟音が鳴り響いた。

面白くなってきた……はず!

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