プロローグ「冒険は突然降ってくる」
「はるか昔、宇宙に浮かぶ小さな小さな星がありました。ある日、最初にこの星に生まれた、スシの力が使える『リーラッシャイ一族』が、空から降ってきた不思議な石を三つ集めました。すると、星は大きくなり、いろんな生物が増えたのです。これが私たちの住んでいるこの『DR星』の始まりです。このDR星は、不思議な力によって、地球では言葉を発することの出来ない、生物や物質にも意識が芽生え、それらの性質によって種族が分類されました。例えば、この村の多くの住民は、『ムシ族』に属しているんですよ」
ここはDR星の最ものどかな村、「ムッシー村」。その中央にある学校だ。「学校」というのは、この星が初めて貿易をした星、「地球」から教わった文化らしい。今はこの星の歴史を先生が話している。
ちなみに、僕はカタツムリが好物の昆虫、マイマイカブリの少年、「ジェム・カブリ」だ。
「おいカブリ。なにボーッとしているんだよ」
僕に声をかけたのは友達の「ダクト」。つい先月、この村に引っ越してきた転校生だ。彼はいつも白衣を身にまとい、ポケットに手を突っ込んで、帽子を深く被っている。ちなみに彼はムシ族ではなく、この村では数少ない「ヒト族」だ。
僕はダクトの呼びかけに応えた。
「ああ、ごめん。授業どうなった?」
ダクトはあきれたように言った。
「授業はもう終わったぜ。お前がボーッとしていた間は、『神秘のスシ』について少し話していたぐらいだな」
「ありがとうダクト。『神秘のスシ』についてなら、もう知っているから大丈夫だよね。」
「じゃあ帰るか」
「そうだね。『神秘のスシ』について調べないといけないし」
「神秘のスシ」というのはDR星に古くから伝わる、食べるとすごい力を得るという伝説の寿司のこと。僕はいつか二人でそれを食べるために、日々努力している。でも過去に見つけた人はいないので、その情報はほんのわずかしかない。
今日も少しでも夢に近づけるよう頑張ろう、と思いながら二人で学校を出た。そうして下校を始めた僕らが畑に囲まれた道を歩いていたその時…………。
…………突然、空が暗くなった‼︎
「な、なんだぁ⁉︎」
僕たちは驚いた。急に夜になったのかと考えたりもしたが、そうではない。空から大きな直方体の石が降ってきていたのだ。僕はダクトに話しかけようとしたが、ちょうど「石」が目の前に降ってきて、その音に声はかき消されてしまった。
ドォン‼︎
土けむりがおさまると、僕の前に何かが落ちていることに気づいた。
「何だ? これは…………機械と……紙?」
僕がそれらを拾うと、降ってきた石の上から大声が聞こえた。
「おいお前! 人のものに勝手に触るな!」
僕は怯えながらも声のほうを見ると、そこには見知らぬ人物が立っていた。
その人物は、頭にマグロの刺身がのっていて、顔は米のように真っ白で、黄緑色の体には寿司のマークがついていた。特徴から察するに、おそらく「スシ族」だろう。
「お前は一体誰なんだ?」
ダクトがそう言うと、そのスシ族は答えた。
「俺の名は『ドド・リーラッシャイ』。神秘のスシを探す旅をしている者だ」
このどこかで聞いたことのある苗字の少年、「ドド・リーラッシャイ」が降ってきた出来事。これこそが僕の冒険の始まりだった。