チュートリアル・ステータス
エラは地上では呼吸出来ない。βテストで出たこの情報は、私を震え上がらせた。
私の最大の目的は、海で思いっきり泳ぐことだ。諦めかけていた夢を掴むため。
……それはそれで!! ゲームを買ったからにはファンタジー世界で遊びたいわけで!!
こんなリアルな世界で魔法を扱ったり、ギルドに登録したり、お城のパーティに出たり。絶対楽しい。絶対楽しい!!
それだけじゃない。このゲームのジャンルはあくまでVRMMO。いくら広大な世界でスタート地点がランダムとはいえ……
他のプレイヤーとの交流に協力、イベントなんかもあるだろう。
陸上に出れない人魚は、こんな時に不利がすぎる。
よくある街襲撃レイド。それって人魚出れますか?
まぁ海中の人魚の街でもあるかもしれない。だけど、こんな条件の宜しくない海中にプレイヤーは増えるだろうか。
難しい、ように思う。
人魚を、エラ付き生物を選ぶということは一般的なゲーム進行から逸脱するということだ。
「だけど、でも……」
このゲームは、『イノセンスファンタジア』は言ってくれた。貴方は何にでもなれると。
きっと大丈夫。私の選択はこれだ。
私はそれでも、自由に海を泳ぎたい。
リアルではできないことでも、ここでは……
「大丈夫です! エラ、使いこなしてみせます!」
キドナさんに胸を張って宣言する。これは同時に私自身への誓いだ。海中で生きていくという。
「ふふ、分かったわ。だからそんなに胸を突き出さなくていいわよ。取れちゃいそう」
「えっ!?!?」
……貝殻、ヤバい。ゲームだから取れたりはしないだろうけど。いやリアルを追求しすぎているこのゲームなら取れる可能性もある。
慌てて手で押さえつけてみるものの、意識すると恥ずかしすぎる。
Tシャツとか、ブラトップとかないのだろうか。
「……無事人魚の街へ辿り着けたら、普通の服も買えると思うわ。だから次、説明するわね」
「おなしゃす!!」
すごい。思考が読まれてる。
「次に戦闘ね。これも意識の力が大事。この世界では、スキルや魔法が当たり前に存在しているわ」
「ふむふむ」
「何をしたいか意識して、声に出す。すると世界に貴女の力が染み込んで、能力が発動するわ」
世界に力が染み込むって面白い表現かも。でも、問題がある。私は私が何をできるのかを知らない。
「……私が今使えるスキルとかってありますか?」
「そう! いい質問ね! そこで使える最初のスキルがあるの。【ステータス】よ。これを唱えると、自分の今の状態を見ることが出来るの。これは現在の身体の強さにスキル、称号なんかを見れる便利スキルなのよ! 私も週9で使ってるわ」
おぉ、お約束だ!! 私は今、VRMMOをやっている!!!
いくぜ!!
「【ステータス】オープン!!」
「オープンまではいらないわよ」
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《海龍のオヤツ》
名前:リプソン 種族:人魚 Lv:1
職業:Choice
器用値 2
敏捷値 3
知力値 3
筋力値 2
生命力 2
精神力 2
スキル:
【エラ呼吸】【水泳】【デスアビリティ】【いい匂い】【歯茎耐性】【Choice】【Choice】
称号:
【ファーストブラッダー】【海龍のオヤツ】
装備:
ホタテ貝
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へーこれ胸のこれ、ホタテなんだ……
じゃないわ!!!
「……なんかツッコミどころ、多すぎるんですけど!!!!」