最終話:奇跡は、起こすもの。
リオの身体が粉々に崩れた瞬間、私は絶望の淵にいた。
泣き叫んでいた。
身体の中で魔力が溢れ、膨れ上がり、体外に出ていっていることには気付いたものの、それを止める術はなかった。
――――こんなの、嫌だ。
魔法は創造の力で、想像の力でもある。
思い出せ。
もっともっと思い出せ。
創り出せ。
世界を変えてでも創り出せ。
奇跡を起こせ。
奇跡は自分で起こすものだ。
治癒魔法が使えないのは、魔力が足りないのかもしれない。
竜が使えていたのは、膨大な魔力量のおかげなのかな?
それなら、全てを捧げればいけるのでは?
今生の魔力を全てを。
一生魔法が使えなくなって良い。
もともと使えない世界にいたんだもの。
――――だから。
私とリオの周りの氷が溶けていく。
地面に草が生え、小花が咲き乱れる。
リオの身体が徐々に再生していく。
リオに生気が戻りだしていく。
そこで私の意識はブッツリと途切れた。
「…………マキ……マキ」
聞き慣れた優しい声。
愛しい人の声。
重たい目蓋を押し上げると、そこにはシルバーブロンドを柔らかな風に靡かせた真紅の瞳のリオが、こちらを覗き込んでいた。
辺りを見渡せば、ボロ泣きしているディーノさん、ホッとしたような表情の騎士団の面々、竜の亡骸とディバルダ聖山。
「リオ?」
「ん」
泣きそうな顔で微笑まれた。
リオが、生き返っている。
――――奇跡、起きた?
「マキ、無理はするなと言っただろう?」
「はい。無理は、してません」
「マキは嘘つきだな」
涙目で苦笑いしたリオに、柔らかな口づけをされた。
「こんな奇跡を無理せずに起こせるわけがないだろう」
「奇跡は、起こすものですから」
「馬鹿な娘だ。さぁ、私たちの家に帰ろう」
「はい」
全身が重たくて立ち上がれなかった私は、リオにお姫様のように抱きあげられ、運ばれた。
予想通りというか、計画通り、私の魔力は尽きていた。
でも、それでいい。
リオと子供が無事なら、それでいい。
「おいで、フォルティス」
リオの呪いは綺麗さっぱり消えていた。
それでもリオはディバルダ聖山に残ることを希望した。
リオそっくりの白銀の髪と、私と似ている焦げ茶色の瞳を持った息子であるフォルティス。最近、やっと歩き出した。
フォルティスがぷりぷりとお尻を揺らしながらリオに向かって歩いていく。
リオが嬉しそうに微笑みながら抱き上げる。
――――あぁ、なんて幸せな光景だろう。
私は、ここで生きていく。
リオとフォルティスと、ディバルダ聖山で。
―― fin ――
最終話ハピエンver.までお付き合いありがとうございます!
次話はメリバver!(*ノω・*)テヘ




