5:ここは異世界。
まさか、こうなるとは思わなかった――――。
「済んだら呼びなさい」
「ひゃい」
そりゃあ、良く考えれば、この手しかないけども。
抱き上げられて、気が付いた。私……下着しか着てないじゃん!
キャッとかギャアとか、待ってとか言ったけど、「漏らすぞ?」とピシャリと言われてしまった。
そして、お姫様抱っこでトイレまで運ばれ、便座に降ろされた。
便座が洋式で良かった。
良くわからないけれど、流すシステムとかトイレットペーパーもあって良かった。
アニメとかコミックで見ていた異世界。
そこに自分がいる。
そこで気付く。
どのパターンの異世界!?
上下水道がない世界。
魔法のみが物を言う世界。
魔獣が蔓延る世界。
戦争ばかりの世界。
――――確認しないと!
その前に、トイレ終わりましたって言わないと……なにこれ…………どういうプレイ!?
リオにベッドの上に戻してもらって一息。
「配慮が足りなかったな」
配慮というか、見えなかったから服を着ていないことに気付いてなかったらしい。
ダボッとしたシャツと、腰に巻くシーツをもらった。巻きスカートだと思うことにした。
「見えないのにどうしたらそんなに動けるんですか?」
「あぁ、魔力の動きはわかるから」
「魔力、動き……」
「ん? マキは魔法はあまり使わないのか?」
使わないというか、使えない。
「それだけ魔力を持っているのにか? 親に禁止されている? もしくは、何か宗教上の理由でも?」
「…………」
「……マキ?」
親に禁止されているというワードに、地味な攻撃力を感じたのは置いておいて。私に魔力があるの?
「……ファイア!」
「マキ?」
「…………」
手を前に出して、定番の詠唱をしてみた。何も出なかった……いや、私の顔からは間違いなく火が出たけど、比喩的なヤツが。
リオが物凄くきょとんととしている。銀色の髪の毛をさらりと揺らして首を傾げられた。
その反応、なんか凹む。
「マキの世界では、そういう魔法詠唱なのかな? それは……攻撃魔法じゃないのか?」
困惑し続けているリオを見て自分のアホさにやっとこさ気付いた。
「あっ! ちがっ、ごめんなさい! 私の世界には魔法とか魔力とかなくて――――あ、でも物語の中にはあって、それで……その、聞き覚えのある言葉をつい…………ごめんなさい」
シーンとなった。
「ぷ……」
――――ぷ?
「はははは! あはははは!」
リオがお腹を抱えて笑いだしてしまった。
なにが面白かったんだろう、と今度は私が首をひねることになった。