49:崩壊。
「なんで…………なんでっ!!」
リオの崩壊が止まらない。
指先がポロポロサラサラと崩れ落ち、風に飛ばされていく。
「私の中で呪いが反発し合っているようだ」
竜の呪い? いつ? さっき?
私に向けられていた竜の怨嗟を含むような視線。
それが、リオに? 私を庇ったせい?
「治療薬! 上級治療薬、飲んでください!」
「もう、飲んだ。無理のようだ」
リオと私で一本ずつ持っていた。私の分はまだある。
リオの口に無理矢理流し込んだけど、一瞬だけ顔色が戻るだけだった。
「マキちゃん! リオ!」
異変を察知したディーノさんがこちらに向かって走って来てくれた。
「っ、ディーノさん…………リオが……リオがぁ」
「…………ディーノ……竜は死んだ。少しの間、マキと二人きりにしてくれ。目隠しを取りたい」
「っくそが! ………………地獄で待ってろよ!」
「ん」
リオの口元は微笑んでいた。
「マキ、済まないが目隠しを」
「はい……」
そっと、そっと、リオの目隠しを解いた。
「ん……良かった。大きな怪我はないな」
「はい。ありませんよ」
リオが嬉しそうに微笑んだ。
「最後に、マキの顔を見られて良かった」
「っ…………リオ、本当に無理なんですか?」
「ああ、無理だ。魔力は失われつつある。崩壊は止まらない」
「でも――――」
「マキ、聞いてくれ」
なにか方法があるんじゃないかって、元の世界の魔法の知識を思い出そうとしていた。
今までも何度か治癒魔法を試したことはあった。でも何も発動しなかったけど、それでも。
「君に出逢えて、私の世界は彩り豊かになった。君に恋をした。君を愛した」
「っ……はい」
「マキ、愛してる」
「あ……ぅ、っ、あぅ……やだ…………」
「マキ、抱きしめてやれなくてすまない」
「リオ……やだ」
「ん。すまない」
リオはただただ優しく微笑むばかりだった。
伝えたいことがあるのに、上手く言葉が紡げない。
「やだ……」
「ん」
「終わったら…………リオに言わなきゃって………………」
「ん。いま、教えて」
「やだ……」
「マキ」
「やだ!」
子供みたいに、嫌だしか言えなくて、リオを困らせてばっかりで。
「マキ、もう時間がないよ?」
「だって……」
「マキ」
「……赤ちゃん、出来たの。リオと私の赤ちゃん」
「っ! そうか、そうか!」
涙でぼやけていたけれど、リオが驚いた顔をしたあと、満面の笑みになったのが見えた。
ぐしぐしと目を擦り、涙を拭う。
「だから、死んじゃヤダ」
「ん」
「リオがいない世界は嫌なの」
「ん」
「っ! 『ん』ばっかり言わないでよ!」
私は怒ってるのに、リオは嬉しそうに微笑むだけだった。
「ん。幸せだなぁ。マキ、ありがとう」
「馬鹿ぁ」
崩壊がどんどんと進んでしまい足までも崩れ始め、リオの身体がグラリと揺らいだ。
慌てて抱きとめると、ほとんど重さを感じなかった。
「あぁ……温かいな」
リオがゆっくりと目を閉じた。
「最後にマキの元気な姿を見れて良かった。子どもの顔も見たかったが、それは高望みだろうな。一緒に育ててやれなくてすまない。どうか健やかに――――」
「っ、いやぁぁぁぁぁぁ!」
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
シリアスなところで作者が出てきてすみません(*ノω・*)テヘ
さて。
エンディングは2パターン用意してますが……(まだ脳内)
ハピエンか、笛路大好きメリバか。
どっちをメインに据えようかしら←
 




