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瀕死の私を助けてくれたのは、真紅の目隠しをした魔眼の騎士様でした。  作者: 笛路 @書籍・コミカライズ進行中


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48/51

48:抵抗魔法と反発と。

 



 世界が純白に染まった。

 肺まで凍るんじゃないかと思うほどに、空気が凍てついている。

 竜――アイスドラゴンの極大魔法は、辺り一帯を氷点下にしたうえに、空から溶けることのない氷の針を隙間なく降らせるという、恐ろしいほどに殺傷能力の高いものだった。

 

 ――――よかった。


 抵抗魔法はしっかりと働いてくれた。そして反発も、しっかりと。


 竜が一際大きく吼えた。全身に溶けることのない氷の針を大量に刺して。

 五十数人分が受けるはずだったもの。それが全て竜に跳ね返っていた。


 ゆっくりとしたモーションで竜が地面に倒れた。

 だけど竜は、生気が残っている瞳でこちらを睨んでいた。

 生気というよりは、強い怒りや恨みのようなもののようにも見えた。


「マキ――――」


 地面に座ったまま、竜と視線が合っているな、なんてボーッと考えていた。

 魔力が底をつきかけていて、頭が回らない。

 リオが何かを叫びながらこちらに向かって走ってきていた。


「――――マキッ!」


 リオが私に背を向け仁王立ちになっている姿を見て、ハッとなった。戦場なのに何をボーッとしているのかと。竜は地面に伏しているけれど、まだ生きているのに、と。 

 

「……マキ、何か異常はないか?」

「まりょく、ぎれ、おこしてます」

「これを飲みなさい」


 後ろ手で渡されたのは魔法薬。


「リオは?」

「私は、大丈夫だから。……マキに飲んでほしい」

「ありがとうございます」


 コクリと飲み下すと、お腹の中が熱くなった。

 魔法薬が効き初めたおかげで、ぼんやりとしていた思考がクリアになりつつあった。


「リオ?」


 何かがおかしい。

 リオの存在がとても薄く感じる。

 

「リオ? 竜は?」

「ん……もう死んでいる」

「っ、良かったぁ」

「ん。よく頑張ったな。恐ろしかっただろうに。マキのおかげで皆が助かった。本当にありがとう」


 リオが私に背を向けたままでそう言う。

 それがなんだかとても異様に思えた。

 立ち上がってリオの正面に回り込んだ。


「…………っ、リオ?」


 リオの顔は生色を失っていた。

 真っ白で、ひんやりとしていた。

 そして、指先からポロポロと崩れ始めていた。

 まるで朽ちた瓦礫のように。




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