47:援護部隊の到着。
魔力切れを起こさないように気を付けていたものの、広範囲のブレス攻撃を防ぐには、抵抗魔法を使うしかなくて。
「マキ、無理はするな」
「……はい」
もしものときのために、抵抗魔法を使える魔力は残しておくようにと言われた。
少しずつ回復はするものの、使用量と釣り合わない。
魔法の訓練をするようになって、魔力量は更に増えた。でも、魔獣の中でも最高位であろう竜には敵わない。
――――思い上がってた。
戦い方も、采配も、リオが格段に上手くて、『リオは私が守る』なんて、本当に思い上がりもいいとこだ。
「ごめんなさい」
「大型の魔獣との戦闘はこれが初めてだろう? 気にするな」
リオがトントンと背中を叩いてくれた。それだけで心がぽかぽかとしてくる。
早く終わらせて、日常を取り戻したい。
リオに伝えたいことがあるから――――。
竜と戦闘を開始して何時間か経ったころ、ディバルダ聖山の中腹でいくつもの魔力が膨れ上がるのを感じた。
「もうちょっとで着くな」
リオがホッとしている様子でそう呟いたのを聞いて、騎士団の援護部隊なのだとやっと気付いた。
戦いに集中しすぎていて、近くに来るまで全然気付けなかった。
リオが真紅の目隠しを巻き付け後頭部で固く結ぶ。
これからリオは魔力感知を駆使しながら戦うことになる。せめてリオの邪魔にだけはならないようにしないと。
「マキちゃん! 怪我はないかい!?」
ディーノさんが小走りで私たちに近付いてきた。
騎士団の援護部隊は五十人ほどいた。その面々は、散開して各方面から竜に攻撃を開始してくれている。
「はい、大丈夫です。ただ、魔力が…………」
「少ししかないけど……ほら。魔法薬」
魔力を回復させる薬。上級の治療薬と同じかそれ以上に高価で希少な薬。それを渡された。
「私よりリオに」
「あと三本はある。攻撃魔法をメインで使えるリオ、俺、マキちゃんとあそこにいる隊長の分だよ」
「っ、ありがとうございます」
激マズ魔法薬をグイッと飲み干すと、お腹の底が燃えるように熱くなった。魔力がグングンと回復している。
半分ほど回復し、熱が落ち着いたところで二回戦目を開始した。
それは、本当に一瞬の出来事だった。
攻撃を食らい続けていたアイスドラゴンが急に空に向けて咆哮した。
空に見たこともない巨大な魔法陣が、青いネオンのような色で浮き上がっていた。
「広範囲極大魔法が来るぞ!」
リオが叫んだ。
「マキちゃん! リオの側に走って!」
ディーノさんにそう言われて、理解した。
このままだと、みんな死ぬ。
攻撃の要であるリオと二人だけでも助かれと言いたいのだと。
空に手を掲げた。
散開している五十数人の騎士たちの魔力を感知し、その周りに抵抗魔法を展開する。
ごっそりと魔力が持っていかれるのが分かった。
目眩がする。頭痛もする。だけど、ここが踏ん張り時。
「全員動かないで! 抵抗魔法を掛けてます!」
「マキちゃん⁉」
膝が折れる。
だけど、大丈夫。全員に反発魔法まで掛けられた。私も含め。
だから、誰も死なない。
だれも、殺させない。




