45:竜と治療薬。
竜と対峙してわかったこと。
やはり魔眼は効かなかった。
リオはずっと竜を見つめ続けている。でも、竜に変化は起きていない。
「炎の雨」
無詠唱できるけど、どんな攻撃をするかを簡単にリオに伝えつつ魔法を発動させる。
竜がちょうど両翼を広げていたので、頭上から全体に向かって拳大の火の玉を何十個か降らせてみた。
命中した瞬間、竜が咆哮を轟かせた。
それは、大地を空気を揺らすほどの轟音で、鼓膜がビリビリと震えた。
「わっ! 耳痛っ」
「マキ、可能なら抵抗魔法を常時発動させておけ」
「あー」
「無理か?」
無理ではない。
ただ、発動させるのは可能だけれど、攻撃を反発させた瞬間にごっそりと魔力が持っていかれるから、結構に後がなくなる戦い方でもある。
「便利だが、不便でもあるな」
「はい。いざという時には使います」
「ん」
発動は一瞬で出来るので、本当にいざという時にだけ使いたい。
反発させる時にリオまで巻き込みたくないというのが一番の理由だけど、リオはそれを気にしないきらいがあるから、絶対に言わない。
何度か炎の雨を降らせてみた。
竜に当ってはいるし、当たった瞬間に怪我も負っているようだけど、すぐに治っている。
「あら? この竜も治癒魔法が使えるんですね」
「稀だと思うが…………またか」
前回リオが退治した竜も治癒魔法が使えた。そのせいで戦いが長引いたとも聞いていた。
「治療薬の補充が出来るのはありがたいが……」
リオが私の怪我を治してくれたときに使った治療薬。その原料は竜の血と胆汁なのだそう。
学院でそれを知った時『そりゃ、不味いはずだ!』と心底思った。そして、またもやあのときの味が口の中で蘇ってしまい、なんとも言えない顔になってしまった。
「ゔぉえぇぇ」
「ブフッ…………マキ、それはどんな感情なんだ」
リオが私の顔を見て笑ってくれた。
張り詰めた戦いの中だけど、まだ余裕はある。
援軍が来るまで気力を切らさないためにも、こうやって話しながら戦おうと道中に決めた。
「ファイアスラッシュで切り落とせるか試してみますか?」
「ん」
炎のブーメランというべきか、飛ぶ斬撃というべきか、そんな感じのを十個くらい竜の羽めがけて飛ばす。
右はリオ、左は私。
両方同時に斬り落とせればいいけれど――――。
「あ……弾かれますか」
「少しは効くが、直前で風魔法で相殺されているな」
前回は十数人掛かりで、とにかく魔法攻撃を切らさずに攻撃しまくり、竜がそっちに集中している間にリオが羽を剣で斬り落としたのだそう。
なにその超絶な身体能力。
「足元を泥状にして、沈ませてみます? その直後に頭部を炎の雨。そうしたら羽をもぎやすいですかね?」
「マキ、君は本当に攻撃方法がエグいな」
「褒めてます?」
「ん? 褒めている」
リオがニコリと笑って格好良かったけど、どうにも褒められている気はしなかった。




