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瀕死の私を助けてくれたのは、真紅の目隠しをした魔眼の騎士様でした。  作者: 笛路 @書籍・コミカライズ進行中


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35/51

35:ただいま。

 



 リオの小屋までは馬車で行けるところまで行き、そこからは歩きで向かう。

 ディーノさんは、この二年半の間に何度かは来たらしい。

 騎士団長になったこともあり、食料などは部下に運ばせることが増えたのだとか。


「俺は半年ぶりかなぁ。まぁ、俺はリオよりマキちゃんを優先したいから」

「もお。そんな軽口をたたくから、恋人に振られるんですよ?」

「んはは。言うようになったなぁ」


 ディーノさんはこの二年半の間に、四回くらい新恋人の噂が出た。そして、毎回振られているという噂も。

 たぶん、本当。


「いいんだよ。彼女たちはそれを楽しんでいるから。俺の本命はいつでもマキちゃんなんだけど?」

「嫌です」

「相変わらず、つれないねぇ」


 そんな会話をしながらリオの小屋を目指して歩いた。




 小屋の扉の前に立ち、ノックをする。

 

「…………いない」

「ん? リオの魔力探索してなかったの?」


 探さないようにしていた。

 リオは、私が山に入ったら直ぐに分かるだろうから。私が一直線に小屋に向かうって、きっと分かるだろうから。


 ――――待っていて、くれなかった。


 賭けだった。

 少しだけ、期待していた。

 扉を開けたら、弧を描いた唇のリオが迎えてくれるんじゃないかって。

 だけど、小屋の中は空っぽ。

 二年半前の出ていった日と何も変わらない。

 誰もいない小屋。


「どうする?」

「しばらく待ちます。リオと話したいから」

「わかった。俺は下山するけど……まぁ、マキちゃんの実力なら一人でも来れるし、戻れるか。何かあったら騎士団においで。いつでも雇ってあげるから」

「はい。ありがとうございます」


 ディーノさんとお別れして、小屋の中に入った。

 小屋の中は、リオの残り香で溢れていた。

 

「ただいま」


 そう呟くけれど、返事をしてくれる人はいない。

 荷物を置き、食料は貯蔵庫に入れた。

 窓際のソファに座り、魔力を抑え込み気配を消す。

 

 十分も経たない内に小屋の扉が勢い良く開いた。

 

「――――っ!」

「ただいま」


 リオの気配が、リアルなものになった。だって、本人が目の前にいるから。

 リオは、相変わらず真紅に金の刺繍が入った目隠しをしていた。二年半前と何も変わっていないリオを見て、ホッとするとともに心臓が甘く締め付けられる。


 魔力を感知できるようになったからなんだろう。肩で息をするリオから、怒りを感じる。

 リオの魔力は、刺すような痛さがあるらしい。でも、私には甘い匂いと柔らかさしか感じない。

 だけど今は、指すような痛みが増し続けているけれど。


「なぜ気配を消した。なぜ魔力操作が出来るようになっている。なぜ…………戻ってきた」


 久しぶり聞いたリオの声は、拒否するような固さしかなかった。




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