30:リオとの別れ。
――――やだ。
リオの言葉を聞きたくない。
ベッドの上で小さな三角座りになり、両耳をギュッと押さえ付けた。
リオは私の両手首をガッシリと掴むと、横に引っ張って声が聞こえるようにしようとしてくる。
「マキ――――」
「やだ! 聞きたくない!」
「っ…………それでも、聞いてくれ」
「……や…………だ」
迷惑なのは分かってる。
出ていく約束も忘れてない。
だけど、私はここにいたい。
リオの側にいたい。
依存しているって思われるかもしれない。でも、リオの側にいたかった。好き、だから。
こんな形で離れ離れになりたくない。
自分勝手だと分かっていても、止められない想いが生まれてしまった。
「マキ、君はここにいない方がいい。町で安全に暮らしなさい」
「っ、やだぁ」
「ここにいたらいつか後悔する」
「やだ……」
「私は耐えられない」
「っ! …………ごめんなさい」
リオに迷惑をかけるのは間違ってる。想いを押し付けるのも間違っている。リオの負担になってどうするの!って思った。
リオが安らかに暮らせることが大切なのに。
自分の想いばっかりで、リオのことが頭から抜け落ちていた。
「来週、ディーノさんが来たら、出ていきます」
「…………ん」
本当は、今から急いで追いかければ、ディーノさんに追い付くんだろうけど。少しでも一緒にいたかったから、気付かない振りをした。
あの日からよそよそしくなってしまった。
リオはリビングのソファに寝るようになった。
もう五日も経ってしまったのに、何も話せていない。あと二日でディーノさんが来る。リオとお別れしなきゃいけない。
――――やだ。
納得した振りをしている。
本当は納得なんてしてない。
夜中、こっそり寝室を抜け出して、リビングの床に座り込み、ソファで眠るリオを見つめる。
昨日も、一昨日も、こっそり見つめて、部屋に戻っていた。
気付かれていないと思っていた。
「…………マキ、一昨日からずっとそうしているが、何か言いたいのか?」
「っ……あ、え……起きてた、んですか?」
「あぁ」
どうしよう。
なんて言い訳しよう。
頭の中をそんな言葉がぐるぐると回るだけで、何にも言えずただ俯くしか出来なかった。
「マキ?」
「っ……」
「言いたいことがあるなら、言ってくれ。マキ」
リオがソファから起き上がり、床に座るとあぐらをかいた。私と同じ目線の高さになってくれる、優しい人。
「リオ、助けてくれてありがとう。私ね、もっと魔法の勉強します。いっぱい勉強して強くなります。だから……………………だから……だから、強くなったら、またここに来ても良いですか? またリオに会いに来ていいですか?」
「私に恩義は感じなくていい。私のことは忘れていい」
よしよしと頭を撫でられた。
忘れられるわけがない。
「……うん」
でも、『うん』としか言えなかった。
リオと二人で居られる最後の夜。
どうしてもとお願いして、二人でベッドに寝た。
全然眠れなくて、リオの胸にしがみついて眠っている振りをした。きっとリオは気付いていたと思う。
だって、ずっと背中を撫でてくれていたから。
「マキ、そろそろ起きようか?」
「……はい」
いつの間にか朝日が登っていた。
一睡も出来なかった。
私は今日、リオとお別れする――――。
お久しぶりです!
ちょこちょこ書いていこうと思いますm(_ _)m




