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瀕死の私を助けてくれたのは、真紅の目隠しをした魔眼の騎士様でした。  作者: 笛路 @書籍・コミカライズ進行中


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29/51

29:出て行け。

 



 血みどろで帰ってきたリオの機嫌が、とてつもなく悪いのはわかった。でも、親友のディーノさんに「二度と来るな」なんて言葉を投げ付けるなんて思いもよらなかった。


「お前さ、何を勘違いしてんの? 精神まで闇に落すなよ。討伐対象にするぞ」

「…………煩い」

「ああ?」


 ディーノさんが大股でリオに近づき、胸ぐらを掴んだ。今にもケンカが始まりそうで、足が竦んで動けない。


「今まで数ヶ月来ないこともあったくせに。魂胆が丸見えで気持ち悪い」

「俺が来なくなっても、お前は困らないかもな? だが、マキちゃんは困るぞ。お前のわがままでマキちゃんまで巻き添えにするなよ」

「…………マキも連れて出て行けばいいだろう」


 ――――え? 私を、連れて? 


「お前! 言っている意味、分かってるのか? っ――――マキちゃん!?」


 心臓が何かに刺されているみたいに痛い。喉が締め付けられいるみたいで息が苦しい。

 目の前がぼやけてよく見えないことで、自分が泣いているんだと気付いた。


「マキちゃん、深呼吸して! ゆっくり! 魔力が乱れてる。暴走するから……」

「っ……むりです…………」


 ディーノさんが慌てて駆け寄ってきて、背中を擦ってくれたけど、悲しさと寂しさと悔しさがお腹の中で膨れ上がるばかりだった。

 

 リオが私の方にゆっくりと近付いて来るのが見えた。

 何を言われる?

 何をされる?

 何かが変化する?


 ――――そんなの、いや。


 寝室に走って逃げた。

 全体重でドアを中から押さえた。だって、ドアには鍵なんてないから。

 リオやディーノさんの力なら、簡単に開けられてしまうけど。

 

「…………マキちゃん。マキちゃんが下山したいって言うなら、俺が責任持って連れてくよ。でも、違うんだよね? リオとちゃんと話し合いなね? また、来週会いに来るよ」


 ディーノさんの柔らかい声に、また涙が出てきた。

 こんなに優しくて色んなことに気を遣ってくれる人に、リオは何であんなこと言ったんだろう。

 

 ドアの向こうで、リオとディーノさんがまた言い合いをしていた。男の人が大きな声で言い争うのは怖い。

 ベッドに行き、目を瞑り、両手で耳を押さえ、何も聞こえないようにした。


 ――――何でこんなことになったんだっけ?


 自分で作り上げた無音に近い暗闇の中、ぐるぐると考える。

 リオは私に出て行って欲しいみたいだった。

 ここを出てどうするの?

 そういえば、初めの頃は下山して、町で一人で生きていけるようにって話してた。

 ずっと考えないようにしていたけれど、それをしなきゃいけない時期になったのかも。


 ふと、人の気配がして目蓋を押し上げると、目の前にリオが立っていた。


 ――――やだ。




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