28:帰らないリオを待って。
リオが帰ってこないことをディーノさんに伝えると、少し難しそうな顔をされた。
ここに来る途中、リオの魔法の残滓を所々で感じたのだとか。
「誰が魔法を使ったとか、判るんですか?」
「あー、リオのは特殊なんだよ…………呪われてるから、ね?」
そう言われても、私にはいまいち分からない。
そもそも魔法や魔力を一切感知できないから、何にも気付けない。
「あ、それで思い出した。ハイこれ」
ディーノさんからもらったのは、子供向けの魔法書を数冊。絵本のような図解で解りやすく、これなら少しは出来るかも、と思えた。
ペラペラとページを捲っていると、ディーノさんが使い方や考え方を教えてくれた。
隣り合って座り、図解を指さして教えてもらっていると、ふと高校の時に通っていた個別式の塾を思い出して、クスリと笑ってしまった。
「なに? どうしたの?」
「学生時代に塾……家庭教師?に習っていた事を思い出しました」
「へぇ、いいとこの子だったんだ」
どうやらこの世界では家庭教師などは貴族しか雇わないらしい。色んなところでこうも感覚が違うんだね。
家庭教師や塾に行く子はわりと多かった。
そして、私は講師に幼い子に伝えるような感じで教えられていた。いま、ディーノさんが教えてくれているのと同じように。
そして、それは私にとても向いていたという悲しい事実。成績は物凄く伸びた。
「ちょっとやってみます」
右手のひらを上に向け、念じる。
すると、二センチほどの水球がふわりと浮かんで現れた。
「わ! 出た!」
「おお!? めちゃくちゃ凄い! 凄いんだけど……なぜ水球?」
手のひらにべしゃっと水が出たらテーブルとか床に零すから。ディーノさんにはそんな理由でと笑われたけれど、お掃除面倒なんだもん。
今度は、その水球を動かしたり消したりする練習。コツを掴むとスイスイと出来るようになった。
リオとやっていたときは全く出来なくて、元の世界にも魔法なんてないから、適性がないのかと思ったけど、ただ単に理解力が子供並なだけだったらしい。めちゃくちゃ悲しい。
お昼の時間になってもリオは帰ってこなくて、ディーノさんと二人で具材たっぷりのオムレツを食べていた。
バン、とドアが強めに開き、そこには血みどろのリオが立っていた。
「え、リオ!? 大丈夫ですか! 怪我――――」
「怪我はしていない。すべて返り血だ。二人とも何をしていた?」
「へ? お昼ごはん食べてました」
「ディーノ…………お前はここに二度と来るな」
「あ?」
リオの言うことが、理解できなかった。
リオが怒っているのが、理解できなかった。
そして、とても怖かった。今から起こることが――――。




