27:毎日のんびりと過ごしていたのに。
夕食を終え、お風呂に入り、二人でベッドの中。といっても、ベッドの真ん中に境界線はちゃんと敷いているけども。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
こうやって私たちの一日は更けていった。
それからは、結構毎日をのんびりと過ごした。
週一くらいでディーノさんが来て、必要物資などをくれる。
冷蔵庫にあったお肉は、いつまでも新鮮だけど賞味期限はいつなんだろうと思っていたら、冷蔵庫に入れておけば『ずっと新鮮なまま』らしい。
魔法って、凄いね。
その魔法も、リオに教えてもらいながら特訓したけれど、全くと言っていいほどに発動しなかった。
もし発動できたら、魔獣退治に行くリオについていけるかも、と期待していたのに、しょんぼり。
ただ、魔獣退治も週一行くか行かないかくらいなので、結局は毎日をのんびりと過ごしている。
この世界に来て約二ヶ月、倉庫の中の荷物はすでに見終わった。
かなり役に立てていたらしく、ディーノさん経由でこの国の王様から、十年は余裕で暮らせそうな金額の謝礼をもらった。
それはリオに内密に保管してもらっている。
なんとなく、この小屋を離れたくないから。
「ふぁぁ。おはようございます」
「ん。おはよう、マキ」
ベッドで顔を見合わせて、挨拶。
恋人でもないのに、未だに同じベッドで寝ている。しかも、最近は境界線を端っから取り払っている。
理由は、どうやっても私が寝相の悪さで乗り越えるから。
申し訳なすぎるんだけど、なんでかリオに吸い寄せられる。人肌って暖かくって、良く眠れるからかな?
リオはニコッと口元に笑みを乗せて、抱きついている私の頭を撫でるだけ。
この二ヶ月ほど、リオは目隠しを一切取らない。
寝室を分けることもしない。
目隠しを外せるプライベートな時間を作ろうと言うけれど、リオは首を縦に振ってくれなかった。
ただ「このままでいい」と言うだけ。
「今日はディーノさんが来る日ですよね?」
ベッドから起き上がりつつ、朝食は彼の分も用意したほうが良いかななんて話しかけると、リオがムッとした雰囲気になった。
「どうしたんですか?」
「最近、マキはディーノが来る日を心待ちにしている気がする」
「え…………っと?」
心待ちかと聞かれれば、割と心待ちにしているかもしれない。
だって今日は頼んでいた魔法の本を持ってきてもらえるから。
小さい子が学ぶ魔法の本で、もしかしたらそこらへんをしっかり学べば、使えるようになるかもと聞いたからだ。
「っ……今のは気にしないでくれ。少し、外の空気を吸ってくる」
リオが手早く着替えて、軽装のまま外に出て行ってしまった。
そして、ディーノさんが来る時間になっても、小屋に帰ってきてくれなかった。
しばらく不定期更新になります。




