24:困惑する二人。
私はスープとオムレツを作って、リオはパンを焼いてくれた。
二人で準備するのって、なんかドキドキする。
「今日は、昨日魔獣が湧いた場所の確認をしてくる」
「はい。気をつけてくださいね」
「ん…………マキ」
「はい?」
リオがなんとなくモジッとしている。
「その、さっきみたいに、だな…………」
「さっき?」
「ん、敬語を止めないか?」
「え――――」
敬語を止めてどういう風に話せば良いのか、急に言われて一瞬思考の渦に飲まれた。
そうしたら、リオがガタリと立ってバタバタと出かける準備を始めてしまった。
「え……リオ?」
「いや、気にしないでくれ。皿洗い手伝えなくてすまないが、もう出るよ。倉庫に行ってもいいが、なるべくなら小屋の中にいてくれ」
「え、うん。そうじゃなくて――――」
「じゃあ、行ってくるよ」
「え、あ、いってらっしゃい………………いってらっしゃいだけど、話、聞いてよ……」
リオが小走りで出て行ってしまって、私はバタンと閉まったドアにそう話しかけるしか出来なかった。
お昼ごはんの準備を終え、あとはリオが帰ってきてから仕上げの予定。
リビングのソファに座って外を眺めながら、うっつらうっつら。船を漕いでいたら、小屋のドアが開いた。
「……んっ…………あ、おかえりなさい」
「ただいま……」
リオがソファに近付いてきたので、少しだけ端に寄ってリオの座る場所を作ったつもりだった。
つもりというか、私はそう思って端に避けた。なのに、リオは違う風に受け取ったらしい。
「そんなに嫌?」
「はい?」
「私は、マキとの距離を計りかねている」
近付く許可が出たのだと思って一歩前進しようとしたら、三歩くらい引かれた気分になっていると言われた。
どうやら敬語の話らしい。
――――私、嫌そうな顔とかしてたの? あれ? でも顔とか見えてないんだよね?
「漏れ出る魔力が物凄く困っていた」
「あ、うん。確かに。凄く困りましたもん」
だって、男の人とタメ口で話したこと、なかったから。あと、なんで急にそんなことを言われたのかって困惑もあったから。
「困惑?」
「はい。だってなんのために敬語を止めるんです? 敬語を止めたら何があるんです?」
「なんのために?」
「うん」
リオが口元に手を当て俯いて考える仕草をしていた。
少し待っていると、パッと顔を上げてゆっくりと話し始めた。
「敬語は……距離を感じるだろう?」
「うーん。たぶん?」
「マキは敬語で距離を取ってないのか?」
「はい。強いて言うなら癖ですかね? たぶん」
「たぶん?」
「たぶん」
うん、と頷きあって、じゃあこのままの話し方でいいのかも? という結論に達してしまった。
なんか、この着地点って変じゃないかな?




