22:リオの動揺。
♦♦♦♦♦
温かい………………と思ったら、またマキが抱きついて来ていた。
「……………………は?」
黒い髪。
健康そうなクリーム色の肌。
小さくてかわいい鼻。
ぷっくりとした唇。
寝顔がとても幼く、本当に二六歳なのかと思ったところで、停止しかけていた脳が動き出す。
目が、見えている。
マキの顔がわかる。
「っ!?」
慌ててあたりを見回す。
目隠しはマキの腕というか胸の中。なぜか抱きしめて眠っている。
目蓋をしっかりと閉じて、魔力の感知を発動させた。そしてマキの腕から目隠しを取り返す。
いったいどれだけ見つめていた?
目隠しを外したのはマキ?
なぜ?
気持ちよさそうに寝ているが、起こさざるを得ない。
「マキ…………マキ!」
「んー。もちょっと……」
マキの肩をゆらしつつ起こそうとしたが、なかなか起きてくれない。
胸に縋り付いてきて、顔を埋めて左右に振られた瞬間、理性が危うく飛びそうにはなったが、ぐっと我慢。
「マキ、すまないが起きてくれないか?」
「んー…………リオ……?」
何度目かの呼びかけでマキが目を覚ましてくれた。
そして少し残念そうな声を出された。
「あ、目隠しはめちゃったんですね」
「……マキ、なんで目隠しを外したんだ?」
「へ? リオが自分で外して眠ってましたよ?」
――――自分で、外した?
記憶がない。
だが、マキがくる前までは、眠るときは目隠しを外してから寝ていた。流石に、夜の私室なら間違いや事故は起きないだろと思って。
寝ぼけて……いたのかもしれない。
「っ、すまなかった! 体調は悪くないか!?」
「いえ? 全然。なんでです?」
「魔眼のことを忘れたのか!?」
きょとんとした声を上げるマキに少しだけモヤッとした。
なんで覚えていてくれないんだ、と。
「忘れてませんよ。でも、炎のような綺麗な瞳だなぁとしか思いませんでした」
「目が……合ったのか?」
「え、はい」
なのに、体調不良も起こしていない?
疲れ果ててもいない?
…………いや、そんな事があるはずが。
でも、もしかして?
少しの期待と疑惑が綯い交ぜになる。
実験など出来るはずもない。
既に何度、人の生命を奪ったことか――――。
二人の部下は、事故だった。
魔眼になった瞬間に、居合わせてしまった二人。だが、家族にとってはそんなことはどうでもいいだろう。私はただの殺人犯だ。
重犯罪者の数人は、国王による命令での実験で。
部下が死んだことにより、事実確認の為に行われたもの。そしてその日に、私を隔離することがほぼ決まった。
――――私は、殺人犯と大差ない。
 




