21:――――あれ?
ネズミの魔獣は臆病かつそんなに強くないらしい。
ただ、斬ると血が出る。その血が誘引剤となり、他のネズミの魔獣が酩酊状態でかなりの数が集まり暴走してしまうのだそう。
だからリオは、他の魔獣がネズミを殺して出血させてしまう前に、討伐しに出たんだとか。
「凍結魔法で対応していたが、ある一匹が死にかけの一匹に噛み付いて、盛大に血を撒き散らし仲間を呼んだんだ」
「ネズミの魔獣は、そんなに頭が良いんですか!?」
「いや、頭はそこまで良くない。とにかく出てきたものはすべて討伐したが……たぶん、特異体が生まれている」
特異体とは、通常よりも強く頭もいい個体なのだそう。それが今回なにかしら指示のようなものを出した可能性があるらしい。
ネズミが、指示や命令を? とは思ったものの、そもそもネズミの魔物というものを見たことがない。見てみたい気もするけれど、戦えそうにもないので、そんな場所に行ったところで、ただの足手まといだし。
――――そもそも魔獣って何なんだろうなぁ?
聞きたいことは色々とあるけれど、リオがゆらゆらと揺れて凄く眠そうに見えるので、聞くのは明日にしよう。
「私、眠たくなりました。そろそろ寝ませんか?」
「んー……うん」
リオがあふあふと欠伸をしながら立ち上がると、なぜが私の手を握って歩き出した。
寝ぼけているのかな?
「ふあぁぁ…………ん」
「へ?」
寝室に到着すると、リオが私をお姫様抱っこにした。そして、ベッドに私をぽすりと優しく置くと、自分も横に寝そべってきた。
本気で意味が分からなくてぽかーんとしていると、リオが真紅の目隠しをグイッと掴んで外してしまった。
「ん…………おやすみ」
真紅の目隠しの下に隠れていたのは、燃えるような色をした真紅の瞳。そして、予想通りと言うべきか、理解不可能なほどに整った顔立ちをしていた。
なんというか、煌々しい。雰囲気が。顔面が。
――――眩しくて目が潰れる。
そんな煌々リオは、にこりと笑って目を瞑った瞬間、すうすうと柔らかな寝息を立て始めてしまった。
「――――あれ?」
確か、見た相手の生命力を奪うんじゃなかったっけ?
いまガッツリ目があってたたけど、特に何も感じなかったなぁ。
なんで?と聞きたい相手は、夢の中。
リオがポイと置いた目隠しを手に取る。
金糸で刺繍されている文字は読めない。ただ、妙な禍々しさと美しさが共存しているような布だった。
とりあえず悩んでも仕方ないし、疲れ果てて寝ているリオを起こしたくないし、明日の朝にでも確認しようと思い、私も寝ることにした。
今日からしばらく1日1話投稿になります。




