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2:奇妙な真紅の目隠し。




 何分経ったか覚えていないけれど、男の人に担がれたままで到着したのは、山奥にあるこぢんまりとしたログハウスのような建物だった。

 ベッドにそっと寝かされて、やっと男の人の顔を見ることが出来た。


 一番に目に飛び込んできたのは、異様な色合いの目隠し布。

 真紅の細い布のようなものに、見たこともない文字が金糸でびっしりと刺繍されているようだった。

 奇妙なその布で目元をぐるぐると巻いている。


 そして、真っ白なサラサラとした長い髪。シルクなんじゃないかと思うくらいに艶々としていて、ハネや枝毛なんて一切なさそう。

 

 よくわからない格好で怖いけど、助けてくれた優しい人。

 この人、一体何なんだろう。


「すまないが、服を破くぞ」

「へ……」


 体を覆うようにバサリと毛布を掛けられた次の瞬間、着ていたパンツスーツがビリビリに破られた。


「少し触る」

「痛っ!」

「すまない」


 男の人が無惨に折れ曲がった私の右腕に触れながら、さっき飲まされたものと同じ小瓶の液体をとろりと掛けた。

 じわりと痛みが引いていくような気がした。

 歪に曲がっていた腕が、なんの痛みもなくまっすぐに戻っていく。

 なんに例えたらいいのかわからないけど、一番近いのは割れた卵の逆再生みたいな感じ?


「え?」

「よし、効いてるな。指は動くか? 右腕で痛いところはないか?」

「ない…………です」

「ん。治癒薬(ポーション)があと一本しかない。私は手を優先すべきだと思うが、君はどうしたい?」


 激痛が走り続けている左手と両足を見る。

 右手だけは何の痛みもなくなった。

 体の中も。あのときの痛みが嘘のよう。


 歩けないのは嫌だ。

 でも、今まで五体満足で生きてきた自分では、片手が使えないと何もできなくなるだろうという予想は簡単につく……。


「…………っ、手。手でお願いします」

「ん、分かった」


 痛む左腕をさっきと同じように取られ、治療薬を掛けてもらった瞬間、またもや痛みが和らいでいく。


 ――――この液体、凄すぎない?


 両足は添え木をしてもらい、包帯でぐるぐる巻きにされた。

 痛かったら叫べと言われたけど、治療してもらってるのにそんなこと言えなくて、歯を食いしばって耐えた。涙は堪えられなかったけれど。


「……あ……ありがと…………っ、ござい、ました」


 これからどうなるのか、どうしたらいいのか、ここがどこなのか、なんでこんなことになってるのか。

 全てが解らない。


 ――――怖い。


 頭の中がその言葉に占拠され、喉が閉まる。

 苦くて、苦しい。

 

「さっきも言ったが、泣いていい。叫んでいい。怖がっていい。ちゃんと助けてやれなくてすまない」


 目隠しをした男性が、ベッドに寝ている私の頭をそっと撫でてくれた。

 その手は優しく温かく、目と眉が隠れているのに、とても悲しそうに見えた。


「疲れただろう。眠りなさい」

「……はい。あの、ありがとうございます」

「ん」


 この人は目隠ししてるのに、なんで見えているかのような動作ができているんだろうかとか、治療薬って何なんだろうとか、何円するんだろうとか……。たくさん気になることがあるのに、頭に感じる温かさのせいか目蓋が落ちてしまった。




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