15:ありがとう。
朝食を済ませたら、先ずは私が落ちていた場所に向かうことになった。
リオの小屋から歩いて十分の場所らしい。
歩きやすい靴はディーノさんが持ってきてくれていたので、それを履いたけれど、持ってきてくれていた服は完全に子供用だったので、シャツはリオのを借りた。
スカートは、なぜか……そう、なぜかちょうどよかったので、ピンクのフリフリだけど、穿いた。
リオは腰に剣を下げていた。念のためらしい。
勾配が緩やかな山道を二人並んで歩く。
「結構遠かったんですね。私が落ちてるって良くわかりましたね」
「空が歪む瞬間は、大気も酷く揺れるからね。それから、空に開いた穴から大きな魔力の塊が落ちてくるのがわかってね」
たぶん人か魔獣だろうと踏んで急いで駆けつけてくれたのだそう。
リオが来てくれなかったら、本当に危なかったんだよね。
「ありがとう、リオ」
「どうした?」
あの時、私は諦めていた。
このまま一人で寂しく死んでいくんだなって。
リオの足音が聞こえて、消えかけていた希望が再び光りだした。あとちょっと遅かったら、きっと心が壊れてた気がする。
のんびりと歩いていると、リオが頭を撫でてきた。
リオ、いつも頭撫でてくるけど、なんでだろうなぁ?
ちょうどいい高さにあるとかなだけだろうけど。
「諦めないでくれて、ありがとう」
「へ?」
「私は、マキと出会えて良かったよ。生きていてくれて、ありがとう」
「っ……わ、わたしも…………会えて、良かった……です」
「ん」
柔らかく微笑んだリオに更に頭を撫でられた。
「ん。マキ、着いたよ」
到着したのは木々が立ち並んではいるものの、森というよりは林程度の場所。
空中に放り出される場所がもう少しズレていたら、確実に地面に直接落ちていたと思う。
「あ!」
見覚えのある黒いカバン。私の通勤用の何の変哲もないカバン。愛着とかない三千円くらいの安いカバン。
だけど、今となってはとても貴重なものに思える。
バタバタと駆け寄って拾い上げた。
「なにか見つけたのか?」
「はい。私の荷物です」
「ん、良かったな」
リオがゆったりと歩きながらこちらに近づいてくる。
そこで気付いた。
見えていないのに、ちゃんと外も歩けている。本当に魔力だけを頼りに動けるんだ? 魔力って凄いな。
あ、でも魔力がないものはあまり気づけないみたいだった。私の荷物がそうらしい。
「大きいものは魔力の跳ね返りでなんとなくわかるが、小さいものになるとあまり気付けないんだ」
そこで、私に頼みたいことがあるのだとか。
ある程度は拾い集めて物置きに置いているらしいけれど、拾い損ねもある気がするとのことだった。
拾う目的としては、異世界の文明や知識を取り入れるため。そしてそれが価値のあるものだと判断された場合、リオの収入に上乗せされるらしい。
「へえぇぇぇ! じゃあ、頑張って探さなきゃ!」
「走らなくていい。転けて怪我するなよ?」
「はぁい」
なんでだろう、なんとなく子供扱いされている気がする。
よし! 私は大人で有能な社会人なんだってとこ、見せつけてやるぞ!
では明日!
 




