14:一緒に食べる。
◇◇◇◇◇
温かいなぁと思いながら目蓋を開くと、目の前にはなんとなく見覚えのある黒っぽいシャツ。
チラッと視線を上げると、真紅の目隠し。
「ぎょわっ!?」
「…………言っておくが、ここは私の陣地だからな?」
私、リオを抱き枕にして寝ていたもよう。
足はゴリゴリに絡めて、リオの身体に抱きついていた。
慌ててリオを解放してベッドの下で土下座。
「それは…………いったいどういう格好なんだ?」
「私の国に古来より伝わっている、最上位の謝罪方法です」
「ふっ……はははっ! その格好が!? 腹が痛いのかと思った!」
リオがベッドから起き上がりつつ髪をかき上げ、楽しそうに笑っている。なんかエロい。
「おはよう、マキ」
「……おはようございます」
「最上位の謝罪より、朝食を作ってくれた方が私は嬉しいが、どうだろう?」
「すぐさま作ります! 謝罪の気持ちをたっぷりと込めて!」
「いや、そういう意味じゃ――――」
リオが何かボソリと呟いたけれど、寝室から勢いよく飛び出したせいでちゃんと聞き取れなかった。
なにか言ったか聞いたけど、リオは何でもないと顔を背けてしまった。ちょっと怒ってるような? え? なんで?
首をひねりつつも朝食の準備を始めた。
ピーマンと玉ねぎと焼きナスのマリネと、目玉焼きと、カリカリ焼きベーコン。
貯蔵庫に食パンがあったのでそれをスライスして、バターを塗ってから、トースターのようなもので焼く。私もリオもバターは先塗り派だった。
「普通の朝食だけど」
「これはピクルスだろうか?」
「野菜のマリネですよ」
どうやらマリネがわからないらしい。マリネ液が簡単だから覚えているだけで、マリネが何なのかとか発祥とか何も知らない。
「ん、ピクルスよりも甘めで美味しいな」
「良かったぁ」
バター先塗りのパンを齧ると、ジュワリとバターが滲み出て来て、脳内で幸福感を生む物質が作り上げられている気がする。
そんな話をリオにすると、クスクスと笑いながらも「わかるよ」と言ってもらえた。
「ちょっと食べづらいですけど、パンの上に半熟の目玉焼き乗せてガブッてするのも、すごく美味しいですよね」
「フフッ。マキは食事が好きなんだな」
「ええ? 普通ですよ」
食事が好きというよりは、誰かと食べるのが好きなのかもしれない。同じものを美味しいと思えるのも嬉しいし、相手が美味しいと思えるものを知るのも嬉しい。
そんな話をすると、リオがうんうんと頷いていた。
「ん、確かに。私もマキと一緒に食事するのは楽しい」
きっとこれは、一緒に私がいたから『マキと』と言っただけ。勘違いしたら駄目。
リオの甘言に変な感情が芽生えそうで、必死で自我を抑え込んだ。




