13:警戒心を。
名案だと思ったんだけど、どうなのこれ?
ベッドの真ん中に棒状に丸めた毛布。
右手側に私、左手側にリオ。
ベッドはかなり大きいから、二人で寝ても平気なサイズだからこそ、この提案をした。んだけど、よくよく考えたら、男の人と同じベッドで寝るのって初めてだ。
女友達とは旅行のときとか、泊りの時に一緒に寝てたりしたけど。
「……自分で言っておきながらですけど、なんか緊張しますね?」
「っ…………マキ、君は…………」
リオが仰向けの状態で、またもや目隠しの上から目元を押さえて、ハァァァァと大きな溜息を吐いた。
どうしたんだろう? リオの顔をじっと見ていて、ふと気になった。
「眠るとき、目隠しは外さないんですか?」
「ん、何があるかわからないからね」
「そう、ですよね……」
なんでかわからないけれど、少しだけ残念な気がした。
それからはリオと向かい合って寝転び、他愛のない話をした。
リオはシチューが気に入ったらしく、他にはどんな料理があるのかなど聞かれて、オムライスやドリアの洋食や和食、中華などで作れるものの説明。
「食材は豊富にあるから、色々と作ってくれると嬉しい」
「はい!」
私からの質問にもリオは色々と答えてくれた。
騎士団のこと、魔獣のこと、竜のこと、呪いのこと。
「呪いを使えるのは竜だけじゃないんですね」
「ああ。強い魔力を持った魔獣ならね……」
「解除する方法は……ない?」
「なくはない、が……少しね………………伝承しかないのと、その伝承も現実的ではないから」
リオから苦笑いのような雰囲気が伝わってきた。
もしかしたら聞かれたくなかったことだったのかも?
「無理に聞いてごめんなさい」
「マキ、そんな風に気にしなくていい。気になったことはいつでも聞いていい」
ベッドの真ん中の境界毛布を少しだけ飛び出して、リオが頭を撫できた。
「むぅ。子供じゃないですよ?」
「ふふっ。大人は『むぅ』とかいう声を出していじけないだろう?」
「むぅぅぅ」
「ふっ、あはははは!」
リオが楽しそうに笑っている、それだけで心が暖かくなる気がした。この感情は何なんだろう。
♦♦♦♦♦
ベッドの隣でスヨスヨと変な寝息を立てているマキ。
まさかの、二六歳。
十四歳くらいだと思っていた、とか口が裂けても言えないな、と実年齢を聞いたときに焦ったのを思い出す。
しかし、二六歳にもなって異性との同衾が――この場合は同じベッドを使うという意味だが――初めてだとは予想外過ぎた。
ベッドの境界線を棒状に丸めた毛布にしようという提案に、納得する。この娘は本当に誰かと付き合ったことがいないんだろうなと。
「もう少し、警戒心を持ちなさい」
その気になれば、簡単に乗り越えられる境界線。
境界線と言えど、お互いの善意のみで効果があるもの。
マキが起きている時に、わざと乗り越えて見せたが、普通に頭を撫でられてイジけていただけだった。
この娘は危ない。
ディーノに街に連れて行って貰う前に、しっかりと自衛を教え込まねばな――――。
そう考えた時にキリリと鳩尾あたりが痛んだのは、気のせいだと思いたい。




