10:恩返ししたい。
上級治療薬は、やっぱり凄かった。
ずっと疼き続けていた脚の痛みがスッと消えていく。
包帯でぐるぐるに巻かれていたから、はっきりとは気付いていなかったけれど、少しだけ見えていた足の指は曲がらないだろうなと思うほどに浮腫んでいた。
それらがシュルリと元に戻っていく。
「――――凄い」
本当に凄い。
飲んで良し、掛けて良しの治療薬。
いったい何からできてるんだろう?
どうやってリオに返したらいいんだろう?
でも、先ずは――――。
「リオ、それからディーノさん、本当にありがとうございました」
お礼をしたいけど、まだまだこの世界がわからないから、きっと時間が掛かる。でも、絶対にお礼をしたい。だから、待っていて欲しいとお願いした。
何故か二人がぽかんとしている。
「リオ? ディーノさん?」
「あ、いや……なんというか…………なあ?」
「ん……本当にちゃんとした大人だったんだな。マキは」
「あと、元いた世界、本当に平和だったんだろうな。こっちでは騎士に助けられるのは当たり前って感覚が、なあ?」
……その感想ってどうなの?
なんで、ちょっとだけ子供の可能性を考えていたの?
元の世界……平和かぁ。
平和、だったのかなぁ?
こっちがわからないから、比べようがないか。
でも、警察とかお医者さんには助けてもらうのが当たり前!みたいな感覚は誰しも大なり小なりあるだろうから、騎士はそういった立ち位置なのかも。
「でも、リオは騎士っていう組織の一人としての行動というよりは、リオ個人が助けようとしてくれたから」
思ったことをただ伝えただけだったのに、リオは何故か右手の甲で口を押えると、そっぽを向いてしまった。
「っ! ふひょぇ」
ディーノさんが良くわからない笑い声を漏らした。どこから出てきた音なの、それ。しかも肩まで揺らしながら笑ってる。声が出ないくらいに笑ってる。
「リオ?」
「っ――――その、久しぶりに、人に好意を向けられた、から」
リオの耳がなんとなく赤いように見える。
耳の直ぐ上に真紅の目隠しの布があるから、分かりづらいけど。
リオとディーノさんとしばらくリビングのような場所で話した。
「んじゃ、俺は帰るな。来週、マキちゃんの服とか必要そうな物を持ってきてやるよ」
「ん。助かった」
小屋の入り口で見送っていたら、立ち去りながらそう言ったディーノさんに慌てて駆け寄った。
「ディーノさんっ、ありがとうございます」
「おう」
ディーノさんがニカッと笑って頭を撫でてきた。そして、リオのことをよろしくなと言われた。リオにお世話してもらうのは私のような気がするんだけど。
「……そのうちわかるよ。マキちゃんなら」
ディーノさんは良くわからないセリフを残して帰って行った。




