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コンクリートジャングルオブハザード ~ゾンビ世界で遊びましょう  作者: バッド
8章 コミュニティを街にしよう

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92話 ゲーム少女は都内観光を続ける

 多数の鉄サソリが砂漠にて走り迫ってくる姿は、大型トラックが並んで突撃してくる様子と似ていると遥は思う。映画でそんなようなシーンを見たときもなかなか凄い迫力であった。


 それが現実で、しかも気持ち悪い高速でシャカシャカと多脚を動かして接近してくるサソリたちはそれ以上に凄い迫力だ。10メートルはあるだろう体躯が走ることにより砂煙を巻き上げてくる。砂煙が凄すぎて牛のスタンピードかと思うほどだ。


 今の自分の周りには崩れ落ちているビルがある。レキの高速移動であれば問題ないレベルで逃げ切れるはずである。でも、逃げないんだろうなぁとも思う遥である。


 レキという人格が生まれたときからゲーム少女のコマンドから、逃げるというコマンドは無くなった模様だからして。


 身体を半身に構えてやる気満々なレキである。眠そうな目で一番倒しやすい敵を見渡して確認する。


 トンッと砂を蹴り、レキの身体がぶれる。そして、瞬間移動でもしたかと思うほど先に移動をする。それは5体いる鉄サソリの一番左にいるやつに近かった。


 鉄サソリは獲物が消えたことに反応してすぐにどこにいるか確認してくる。レキの姿を見つけて方向転換を開始する。その反応速度は今までの敵とは全く違う速さである。もはや、グールが何万体いてもこの鉄サソリには敵わないだろう力の格差がある。


「では、倒していきますね」


 ぎゅっと紅葉みたいなおててを握り、足に力を籠める。鉄サソリがそれぞれ尻尾を持ち上げてレーザーを発射する準備を取り始める。


 今度は力を込めて、足元の砂を蹴り接近を開始するレキ。ドンッと力を込められた踏み足で砂が消し飛びクレーターが発生し、砂埃が舞い始める。その砂埃はすでにその量から砂の滝と言っていいレベルである。


 ざぁぁと舞い始めた砂の滝がレキの後ろに落ち始める。そしてその踏み足で鉄サソリに近づいたレキは敵の弱点を探す。凶悪な金属の装甲をもつサソリではあるが、生物であろう。どこかに柔らかい場所があるはずだ。


 鉄サソリの真正面に接近して、顔がくっつくほどの距離となる。鋏で掴むより、噛みついた方が良いと鉄サソリは自分にとっては小さな、レキにとっては一口で食われる大きさの口を開いて食べようと襲い掛かってきた。


「その反応速度に対する愚かな行動があなたの限界ですね」


 すぐに右腕をひき、構えをとるレキ。


「獅子の手甲展開」


 カチャカチャと獅子の手甲が展開される。だが、いつものように超技は使用しない。この先どれぐらい敵が出てくるかわからないし、弱い敵に無駄にSPを使いたくないのだ。


 フッと右拳を音速に上げて繰り出す。精妙なその攻撃は多少の風を右腕に巻き込んで鉄サソリの口の中に向かった。

 

 口に当たると同時に衝撃が発生し、波紋のようにその肉体に広がっていく。その波紋は肉を砕き、体内の内臓を潰し鉄サソリを死に誘うのであった。


「ふっ、我が波紋の一撃を受けてみたか」


「まだ戦闘中なので、後でお願いします」


 遥の調子に乗った言葉に冷静にツッコミを入れて次の鉄サソリに向かうレキ。


 一撃で内部からの崩壊をみた鉄サソリであるが、所詮はサソリである。自分の口の目の前にレキが移動すると生物の本能で噛み殺そうと口を開いていく。悲しい知能の無い虫の弱点であった。


 だが、レキだからこその弱点を狙うことができる技である。超技も使わずに倒す攻撃は、その小柄な可愛らしい身体から生み出されるとは到底見えない。


 レーザーは射線を見切られ、鋏の攻撃は回避され、口元に接近されると噛みつこうとする鉄サソリは数分後、あっさりと全滅したのだった。


 鉄サソリが全滅し、戦闘終了となったので遥に主導権が戻り、ようやく言葉を発する。


「ごごごごご、太陽のなんちゃらアタック。もう忘れたよ。かなり昔の漫画だから」


 何がしたかったのだろうと突っ込みたい語りであった。擬音まで口に出して恥ずかしいこと、この上ない。黒歴史をじゃんじゃん増やしていき、次の日記帳が必要になるほどだ。しかしゲーム少女なのだ、見た目は美少女なのだ。おっさんなら失笑で終わるが、愛らしい少女がやるとなると見る価値はある。カメラドローンはフル活動していた。


 遥はかなりテンションが上がっていたのである。まぁ、やばいレベルの敵が複数であったのに、超能力も超技も使わずに倒したのだ。レキの凄さを感じてテンションが上がっても仕方ない。


 遥ならもっと楽勝に倒せた。念動を使えば楽勝であったろう。しかしESPはかなり消費していたはずである。まだエリアに入って序盤で使ったら、あっという間に空になりそうである。そして念動を問わず、超能力の高レベルは範囲攻撃が多く、しかも消費がでかい。即ち、大量の数の敵と戦う場合を除いて効率が凄い悪いのだ。洋ゲー風味な仕様なのである。


 ESPが空になると魔法使いは粗大ごみになってしまうのである。おっさんの場合はゴロゴロしていると家族から粗大ゴミと言われるので、同じ存在に落ちると思われる。


 継続して、ここのエリアを探索するためにもエネルギーは温存しておきたいのだ。高レベルエリア帯なので節約志向でいく気満々なゲーム少女である。そのため、レキの体術のみで倒せる戦闘内容は助かるのであった。


「ここはやばそうだな。ちょっと待ってね」


 これからの敵の種類を想定して、ステータスボードを弄る遥。スキルコアまで全て使用し、物理看破lv3、超術看破lv3までレベルを上げていく。


「でもレベル3なんだよね。ちょっとこれで通じるのかなぁ。なんかやばそうだなぁ」


 不安がよぎるが仕方ない。もうスキルポイントは残り2である。そしてステータスも10ずつ振った。ステータスポイントの残りは25になった。これで強化は終了である。かなり不安な内容であるがこのまま探索を続けることにする。


 テクテクと歩いて、目指していた高層ビルに向かう。そうして、その先にある砂の中に違和感を感じる地面を察知する。


 おぉ、これが看破の力かと感心する遥。もしかして看破が働いたのはこれが初めてかもしれない。


 察知した場所にいる敵もなんとなくわかる。どうやら鉄サソリのステルス系のスキルレベルはそこまで高くないようで助かったゲーム少女。


 でも、察知した場所にやっぱり数体はいると思われる。ソロで狩るタイプではないらしい。さっきと同じなら6体はいるはずだ。


 まぁ、問題ないかと鉄サソリ退治をレキに任せるのであった。


             ◇


 高層ビルに到着した遥は崩壊して半分削れているビルを見やる。なんか戦争で崩壊した世界っぽい概念が働いているのだろう。とエリアの概念は何かサクヤに聞くのを忘れていたので、聞いてみる。


「ご主人様、ここの概念は砂漠。砂漠にすむ生物の力を底上げします」


 当然ですよという表情で伝えてくるサクヤ。聞くまでもなかった内容である。まぁ、意外な概念や効果でなくて喜ぶところかもしれない。


 遥がこの高層ビルを目指した理由は一番高いからである。どこのビルかなぁと見てみたら、ビルに六本木とだけ書いてあるのが見えた。なるほど六本木か、どうやら東京駅を過ぎたかと遥が思ったらサクヤが教えてくれた。


「ご主人様、ここのエリアはダンジョンの効果も僅かながらあるようです。地域の場所がバラバラに存在している可能性が高いです」


 え~と言って、うんざりする遥。サクヤの言うとおりだとすると南下しても東京駅は見えない可能性が高い。バラバラの地域に分かれてしまったのだろう。ある意味報酬にふさわしい難易度のエリアである。


 まぁ仕方ないかと六本木と書いてあるビルに入っていく。ここは入ったら金持ちが不幸になるという噂のビルなのかと確認ついでだ。


 キュッキュッと砂を踏みしめて六本木としか読めないビルに入っていく。まだまだ日は落ちないので帰還しなくても大丈夫だろうと考えながら、確認していく。


 もう砂に埋もれている廃墟となっているビルである。何もないかもしれない。1階も全て砂に覆われており、高そうな机とかがボロボロになっており、窓ガラスは全て割れていて、悲惨な風景である。


「ここも崩壊前は億ションだったんだろうね~、しかもただの金持ちではないレベルの人が住む場所と予想できるよ」


 遥の呟きにサクヤもウィンドウからそうですねと同意してくる。


 1階を見ても何もない。砂だけである。これだけ砂ばかりだと、口の中がじゃりじゃりしそうだし、もう探索もこの砂漠エリアも嫌いになってきた遥。


 ゲームでは感じなかったが砂だと歩くのも足を取られて疲れるし、口に砂埃が入ってきてじゃりじゃりするし、目にも砂が入るので痛いし、服の中にも砂が入ってきそうで気持ち悪いというゲームをやっていただけだとわからない内容である。表現されないだけで、ゲームキャラも砂漠をうろつく際にはこんなことを思っていたのだろうかと、またくだらないことに思考を飛ばすゲーム少女であった。


「しょうがない。目的地がどこにあるかも、目的地があるかもわからないし、とりあえずこの高層ビルを登りますか」


 そう言ってひょいと外壁に足をかけて、スタッスタッと僅かな外壁の窪みを足場に移動を始める遥。


 レキには劣るが遥もスキルを使いこなせるので、これぐらい楽勝である。あっという間に高層ビルを登っていく。


 10分もたたないうちに高所恐怖症なら絶対に登らない錆びて今にも崩れそうな頂上のコンクリートから突き出ている鉄筋にのり、周囲を確認していく。


 因みにおっさんなら、安全な展望台でも怖くて登らないので比較はできない。全てはレキの精神力の賜物である。


 さすがに頂上までくるとビュゥビュゥと風が強く、レキの髪を巻き上げていく。それを手で押さえて確認すると、かなり離れたところに山が見えた。


 オアシスという感じの山である。砂と岩でできており森が多少あり水が川を作り流れていた。そして、その山の周りにはサボテンらしきものも大量に生えている。


 あのサボテン攻撃してこないだろうなぁと嫌な感じがする遥。ゲームではあいつは大嫌いな敵のベスト10に入る敵であった。千本針は卑怯だと思うのだ。


 そしてあの岩山周辺って、空間が捻じれていなければたしか皇居がある場所じゃないかなぁとあたりをつける。


 あそこを目的地にしようか迷う遥。あそこがオアシスならば多分敵のボスがいるのではなかろうか?それ即ち強敵との戦いが待っているということである。30000の報酬を渡せる敵である。サボテンの強化バージョンかもしれない。パワーアップした野菜の人しか倒せないのではなかろうか。いや、あれはサボテンがネーミングじゃなかったっけかなといまいち記憶に自信がないいつもの遥である。


 そんな風に考えているとサボテンの間を砂煙を上げて移動する船を見つけた。映画とかで見る砂いかだとかいうやつだろうか?そりに近く、風をうける帆が開いている。そして後ろからトカゲのでっかいのが追いかけている。


 かなり遠い場所である。そして見ている間に砂いかだから乗っている人が何か荷物を落としていく。その荷物にトカゲが食らいつく。そうして時間稼ぎができたのであろう。砂煙を上げながらオアシスらしきほうに砂いかだは逃げていくのだった。


「どうやら生存者がいそうだなぁ」


 目的地は決まったねと、ゲーム少女はオアシスに向かうのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 筏に乗ったクラフト系押せ押せな少女発見ですね!
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